上 下
83 / 89

82話

しおりを挟む
一瞬で長谷部の理性の糸が切れた気がした。

目の前の身体を貪るように掻き抱いていた。
何度も繋げては押し込んだ。

悲鳴じみた声がかすかに聞こえたが、止める気に
もならなかった。
ただ、欲しいという衝動だけが長谷部を突き動か
していた。

抱きしめるように抱くと、逃げるようにベッド
から降りようとするのをバックから突き入れて
いた。
細い腰を掴むと引きずるように引き戻す。

力尽きるようにうつ伏せになれば、そのまま上
から入れた。
布団に埋まるようにくぐもった声が何度も耳に
入る。

もう、衝動だけに動かされているようで止まら
なかった。
一気に疲れが来ると、ハッと下で痙攣するよう
に眠っている優を見下ろす事になった。

「ゆ…う……優っ……」
「んっ………っ……」

無我夢中でしていた行為にサッと正気になった。

身体のあちらこちらにつけられている鬱血した
痕。
あきらかに記憶が曖昧だったが、さっきまでは
なかったのだから、長谷部がつけたのだと分か
った。

長谷部は頭を抱えると蹲った。

「なんて事をしたんだ……まさか、私が……」

女性とのセックスでもこんな事はなかった。
冷めた感情がいつもどこかで冷静に自分を見つ
めているようだった。

ただの性処理…そう割り切っていた事もある。

身体の奥から欲しいなどと思ったのは初めてだっ
たから、余計に戸惑っていた。

性液でべっとりと濡れている身体を見下ろすと
抱き上げて運ぶ。
ゴムは途中からしていなかったのか、ポタポタッ
と溢れてくるのを眺めながら自笑した。

誰よりも気持ちよかった。
優のナカは常に内壁が吸い付くように畝り、絡み
ついてきた。
まるでナカも生きているかのように搾り取ろうと
してきて、何度出してもすぐに復活してしまって
いた。

「優…私は他の誰かに君を渡したくないようだ…」

普通の生活を望んでいたはずなのに。
それすら、自分でいっぱいにしてしまいたくなる。

こんな事を優に言ったら嫌われないだろうか?
今は気を失っているが、起きたらどう思うだろう?

怒るだろうか?
何度も静止を求めたのに、聞く耳も持たなかった。

いっそ、完全に逃げてしまうだろうか?
いや…そんな事はさせない。

「度し難いな…私は……」

綺麗に洗うとタオルで包んで部屋へと運んだ。
まだ荷物もそのままになっている。

ベッドに寝かせるとそのまま出て行くのが怖くな
った。
長谷部は明日も仕事がある。

いっそ休んでしまおうか?
いや、それはダメだ。

温かいぬくもりを抱きしめながらそのまま目を閉
じたのだった。



朝になって身動きが取れない事にハッと驚く優の
真横には長谷部の寝顔があった。

「っ…!!」

驚いたが、咄嗟に声を押し込めた。

一体何があったのだろう?
昨日の夜の事を思い出すと、顔が熱くなった。

初めて長谷部に抱かれたのだ。
それもかなり激しく……始めは優だけ快楽を何度
も与えられたが、その後は………//////

「俺……抱かれたんだよな………誠さんに……」

尻にピリピリとした違和感が今でも残っている。
何度も出し入れされて、少し腫れているかもしれ
ない。
腰も動くとピシッと痛みが走る。

あんな抱かれ方は初めてだった。
好きな人にあんなに情熱的に感情をぶつけられて
は諦めが付かなくなる。

「誠さんも…俺の事、好きになればいいのに……」
「とっくに好きだが?」

起きていたのか、独り言だった優は飛び起きよう
として、痛みに身悶えたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。 しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。 しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生───しかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく……? 少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。 (後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。 文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。 また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...