白と黒の呪い戦線

界 あさひ

文字の大きさ
上 下
17 / 21
呪いと祝福の境界

017 祈りを。

しおりを挟む
 勝てる!殴れ!殺せ!
 無我夢中で体を動かした。ここしかないんだ、と。
 ラッシュをかけるが、既にボロボロのナガトの攻撃がカルタに与えるダメージは、たかが知れていた。
 ナガトの猛攻の中で、カルタの蹴りがナガトの腹に突き刺さる。ナガトは目を見開き、痛みを堪えた。ボロボロで、既に息も上がりきっている、再び膝をついたナガトと、幾らか弱くなっただけのカルタ。ダメージレースでは、圧倒的に不利なのは目に見える程だ。
 ナガトはまた自分を奮い立たせて、カルタへ向かっていく。殴り、殴られる。
  
 永遠とも思われるような時間が過ぎた。ボロボロのナガトは、カルタに最後の力を振り絞ってパンチを叩き込んだ。
 そのまま、ナガトは止まった。なんとか保った意識の中で、カルタが勝ち誇ったように笑みを浮かべたのが見えた。カルタはナガトの顔へ、重いパンチを入れようと、腕をひいた。そして、勢いをつけて、ナガト目掛けてパンチを繰り出した。
 既に途切れかけている意識の中、ナガトはミナミに謝った。ナガトの目に、カルタの腕が迫ったその瞬間、重い扉が開いた音がした。
 カルタの腕がナガトの目の前でぴたりと止まる。カツンカツンと歩く音が聞こえた。カルタが振り返り、顔を歪ませた。
 黒装束で身を包んだ女はため息を吐きながら口を開いた。
「雑魚の数が多すぎるんだよクソが。そんな居てどうすんだよ。」
 ナガトが目を伸ばすと、ミナミと目があった。
 「くそ、あいつら…!…っクソ!!」
カルタはナガトを捨て置き、ミナミと距離をとった。
 緊張が途切れたか、ただの限界か、ナガトの体はその場で、前に倒れようとしていた。そのナガトの体を、スッとミナミが支えた。ミナミに倒れかかった形になったナガトは、気力のない声で、敢えて笑って悪態をついた。
「遅えよ…」
「悪かった。
 んで、よく頑張った。そこで寝てろ。」
 ミナミは微笑み、今までにないほど優しい声で言った。
「安心して寝てろ。次にお前が目を覚ました時には、もう全部終わってる。」
 改めてミナミにそう言われて、ナガトはゆっくりと目を閉じ、意識を手放した。ミナミは、それを確認してゆっくりとナガトをその場で横に寝かせた。
「さて…」
ミナミが口を開く。
「さぁ教祖様。
 お縄に着く時間だ。観念して大人しく祈ってろ。」
 ミナミの目はもはや笑ってなかった。
 カルタは、苛立ちを含んだ口調で言った。
「お前の相手をしていた奴らはどうした!?」
 ミナミはゆっくり口を開いた。
「なら、種明かしの時間にしようか。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...