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呪いと祝福の境界
008 逃走
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ナガトはボロボロの40代位の男を抱えたまま走り続けた。
後ろを振り返っても追ってくる様子はないが、そう思わせておいてーーーなんて考えるとダラダラ逃げる訳にはいかない。
ボロボロの男に目を向けると、男と目が合った。男は辛そうに、こう口を開いた。
「助けてくれてありがとう。
俺はトウ。君は…?」
「俺はナガト。あいつとは、なんで?」
あいつと何で乱闘になっていたのか、と意図した疑問に、トウは口を閉ざした。ナガトは
「まあ後でいいよ。」
と、逃げる足を止めずに言った。
元賊のアジト、そして今のナガトとミナミの住処に着いた。その大きさにはまだ慣れない。流石にここまでは追われてないだろう。ナガトはトウを担いだまま住処に入った。入ると否や
「連れ込み禁止って言ったろ!!」
と女の怒号が聞こえた。声の方を向くと、黒い部屋着のミナミと目が合う。そして
「しかも連れ込むのはおっさんじゃねぇか!」
と今度はハハハと高笑いをした。
「うるせぇババァ!」
ナガトはババァと罵倒すると、ミナミは
「ガキにはわかんねぇだろなぁ~このミナミ様の魅力は。」
と返した。ナガトは下らないと、ようやく切り上げ担いでいたトウを下ろし、あの女は大丈夫、と伝える。そうか、とトウがいったが、ミナミは
「おっさんには伝わるよなぁ!?私の魅力!」と未だに先程の話を引きずっていた。ここで初めてトウはミナミの顔をしっかりと認識した。その瞬間、トウの目が少し大きく見開いた。
急に話を振られたトウであったが、その瞬間にはゆっくりと目の前に倒れた。目を瞑っている。ナガトは慌てふためいたが、ミナミは先程までのふざけた様子はなく冷静に
「一気に緊張が解けて安心したんだろ。張り詰めていたものが解けて、眠ってしまったとかそんなとこだろう。」
と言い放った。
ナガトが担いでいたことや、トウのボロボロになっていたのを見ての発言であろうか。ミナミの洞察力や推測力に、ナガトは、ミナミにはわからないように一人で感心した。
「とりあえずそのおっさんはどっかで寝かせておけ。起きてからゆっくり話を聞けばいい。」
「あぁ。わかった。」
ナガトはまたトウを担いで自分の寝室まで行き、自身の布団にトウを寝かせた。しかし、本当に2人にはこの住処は広すぎるな、と改めて思った。
ミナミのいた井間ーーーというには些か広すぎる気もするがーーーに戻るとミナミは再び冷静な口調で言った。
「で、何があった?」
ナガトは自身の見た一連の事柄を伝えた。ミナミはゆっくりと目を閉じ、なるほど…と呟いた。
「とりあえずさっきのおっさんが起きたら詳しい話を聞く。取り敢えずナガトはおっさんを見張れ。」
「はぁ?なんで見張る必要が」
「見張れ。」
と、有無を言わさず見張る事になった。
後ろを振り返っても追ってくる様子はないが、そう思わせておいてーーーなんて考えるとダラダラ逃げる訳にはいかない。
ボロボロの男に目を向けると、男と目が合った。男は辛そうに、こう口を開いた。
「助けてくれてありがとう。
俺はトウ。君は…?」
「俺はナガト。あいつとは、なんで?」
あいつと何で乱闘になっていたのか、と意図した疑問に、トウは口を閉ざした。ナガトは
「まあ後でいいよ。」
と、逃げる足を止めずに言った。
元賊のアジト、そして今のナガトとミナミの住処に着いた。その大きさにはまだ慣れない。流石にここまでは追われてないだろう。ナガトはトウを担いだまま住処に入った。入ると否や
「連れ込み禁止って言ったろ!!」
と女の怒号が聞こえた。声の方を向くと、黒い部屋着のミナミと目が合う。そして
「しかも連れ込むのはおっさんじゃねぇか!」
と今度はハハハと高笑いをした。
「うるせぇババァ!」
ナガトはババァと罵倒すると、ミナミは
「ガキにはわかんねぇだろなぁ~このミナミ様の魅力は。」
と返した。ナガトは下らないと、ようやく切り上げ担いでいたトウを下ろし、あの女は大丈夫、と伝える。そうか、とトウがいったが、ミナミは
「おっさんには伝わるよなぁ!?私の魅力!」と未だに先程の話を引きずっていた。ここで初めてトウはミナミの顔をしっかりと認識した。その瞬間、トウの目が少し大きく見開いた。
急に話を振られたトウであったが、その瞬間にはゆっくりと目の前に倒れた。目を瞑っている。ナガトは慌てふためいたが、ミナミは先程までのふざけた様子はなく冷静に
「一気に緊張が解けて安心したんだろ。張り詰めていたものが解けて、眠ってしまったとかそんなとこだろう。」
と言い放った。
ナガトが担いでいたことや、トウのボロボロになっていたのを見ての発言であろうか。ミナミの洞察力や推測力に、ナガトは、ミナミにはわからないように一人で感心した。
「とりあえずそのおっさんはどっかで寝かせておけ。起きてからゆっくり話を聞けばいい。」
「あぁ。わかった。」
ナガトはまたトウを担いで自分の寝室まで行き、自身の布団にトウを寝かせた。しかし、本当に2人にはこの住処は広すぎるな、と改めて思った。
ミナミのいた井間ーーーというには些か広すぎる気もするがーーーに戻るとミナミは再び冷静な口調で言った。
「で、何があった?」
ナガトは自身の見た一連の事柄を伝えた。ミナミはゆっくりと目を閉じ、なるほど…と呟いた。
「とりあえずさっきのおっさんが起きたら詳しい話を聞く。取り敢えずナガトはおっさんを見張れ。」
「はぁ?なんで見張る必要が」
「見張れ。」
と、有無を言わさず見張る事になった。
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