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貴方のお陰で断罪の意思を固めましたの

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「一体誰が彼女を苛めたの?」
「まず言っておくと、学園内で苛めが起きることは珍しくありません。身分差がありますからね」
「それもどうかと思うのだけれど」
「彼女を苛めたのはエドワードの側近の婚約者のようですよ」
「あら、私の役目を勝手に代わってくれたのね」

 アリシエラは肩を竦める。アンジェの訴えは真実だった。その犯人がアリシエラではなかったことを除けば。

「既にアグノアティスの力は解かれた。婚約破棄の場面を見てみたかっただけのようだな」
「私たちは喜劇の登場人物じゃないんですけどね」
「勝手に扱われるのは気に入らないけれど、お陰でエドワードとの婚約を相手の過失で破棄できたのだから、喜ぶべきかしら」

 聖女といえど、1度結ばれた婚約を破棄するのは容易ではなかった。如何に権力を持っていても、無視してはならない法があるのだ。
 諦めて王妃になろうとしていたアリシエラだが、エドワードや王妃達はアリシエラにきつくあたった。存在を無視したり、悪態をついて蔑んだりすることは日常茶飯事だった。
 我慢が限界になりつつあったとき、フランベルツからアグノアティスの企みについて聞かされた。

「エドワード殿下は昔から私を嫌って蔑んでいたけれど、それは彼自身の意思なのよね」
「そうだな。何故これほどに美しいアリシエラをそのように思うのかは分からないが」
「あら、ありがとう。……でも良かったと思うのよ」
「何がだ」
「エドワード殿下達が昔から私を嫌ってキツく当たらなかったら、私は彼らを断罪する決意を持てなかったもの」
「そうか」

 エドワード達に対抗するために、人の身に変化へんげしてまでアリシエラを守ってくれたその神に身を抱き寄せられる。
 これ程にフランベルツを愛するようになったのはいつからだろうか。

「ごほんっ、……そういうのは自室に帰ってからしてくれますか」
「あら、ごめんなさいね」
「心が狭い奴だな」

 ラグノニオスが咳払いして苦言を申し立てると、フランベルツは更にアリシエラを抱きしめた。

「……はあ、今日はここまでにしますか?私は別に構いませんよ。どうせルコット嬢は教会に呼び出して事情を聞いて、相応しい罰を与えるだけですから」
「その程度しかしないのか」
「その程度と言われましても、なかなか酷いものになると思いますよ?彼女はこの世界をゲーム世界だと思い込んで、アリシエラを断罪しようとしたのですから」
「ふん。きちんと罰をくだすならそれでいい。足りなければ俺が罰をくだすしな」
「……フランベルツ様は何故そこまでルコット男爵令嬢を嫌いなの?」
「あれは、俺のアリシエラを殺そうとしたのだ。如何にアグノアティスが力をかけたとは言え、全ての判断力を奪ったわけではない。よく考えれば、アリシエラに罪を被せようなんてしなかった筈だ。俺は、アリシエラを傷つける愚か者は全て嫌いだ。死すべきだとも思っている」

 過激な神の発言に、人の2人は沈黙を選んだ。アリシエラはそこまで愛されていることに歓喜し、ラグノニオスはアンジェの罰は生半可なものでは更に酷い神の罰がくだされかねないと危惧した。


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