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10.畑を作ろう

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 思わず絶望してしまったけれど、無いものねだりしても仕方ない。

「……今日は小麦を植えた後、森に行きましょう。そこで食べれそうな作物を探して畑に植えれば良いでしょう」
「森か。獣が出るから近衛についていかせよう。すまないが、私は執務があるのでな」
「構いません」

 別にコンラッドはこの作業に必要ないので軽く頷く。

「では、私は畑の場所を準備させましょう。自慢じゃないですが、作物が育たなくて放棄した畑は多いのですよ。そこを利用すれば簡単です」

 確かに自慢することじゃない。自嘲するホルトへのコメントは差し控えた。

「んじゃ、俺は護衛役について行くっす」
「……それが良いだろうな。くれぐれもユウマ殿の邪魔だけはするなよ」
「分かってるっすよ~」

 グノシスがついてくるらしい。この能天気さ。そこはかとなく不安だ。

「ユウマ殿、このグノシスは、剣の腕は脳筋らしくとても優れているのだ。脳筋だけどな」
「分かりました。ありがとうございます」

 とりあえず礼を伝えたが、脳筋って2度も言われたらむしろ不安になるのだが。ホルトもコンラッドの言葉に頷いているし、実力はあるのだろうと信頼することにする。もしもの場合は魔法でなんとかなるだろうし。

「では、畑の場所に案内します」

 ホルトに頷いてついて行った。






 案内されたのは城の傍、森との間にある場所だった。最近耕したのか雑草も少ない。

「ここは今季は利用するか揉めていたぐらい微妙な収量だった畑です。とりあえず、耕すのはしておいたので、今回は良かったです」
「なるほど」

 微妙な収量というのが納得できるくらい、土に栄養がないのが目に見えて分かる。鑑定を使ってみると、土の性質も作物に適さないようだ。

「魔法を使ってみましょう」
「私が見ていても構いませんか」
「もちろん」

 ホルトに頷いて、中空に指を伸ばす。そこに空気中の魔力を動かして魔法式を描くのだ。設定が必要な要素は、魔法の効果範囲と増やす栄養素の量。それを素早く空に描く。中空に持続的に魔力をとどまらせるのは難しいので時間勝負だ。仕上げはユウマ自身の魔力を込めて唱えること。

「 土壌改良ソイルインプルーブメント

 ザワッとユウマの周囲の空気が蠢いた。ホルトがハッと息を飲む音が聞こえた。だが、ユウマは魔法の行使が終了するまで魔力を注ぐことに集中しなければならない。

 目の前に広がる畑の土が次第に黒々としてくる。
 それが全体に行き渡ったところで、ユウマは大きく肩で息をした。思った以上に疲れた。初めての魔法行使だからだろうか。

「す、素晴らしい!こんな土、この国で見たことありません!」
「いずれはこの国全土がこんな土になると良いですね」

 それをするためには、ユウマが全土を巡る必要がある。……いや、才能がありそうな人に教えるのが一番良いかもしれない。



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