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王都での出会い
謎の商人
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「その商人についてきた助手が、・・・エライザだった。初めはただ、商品の説明や注文を受けていただけだったのだが、段々と間合いを詰められていて、いつの間にか隣に座っていたんだ。咎めようとエライザを見たのは覚えているんだが、それからはなんだか曖昧になってしまった。・・・あの黒色の瞳がじっと見ていた事しか覚えていない。」
じっと目の前にある白い棺を見ながら、ポツリポツリと話す。
「おそらくそこで、フローレンスの言う魅了の魔法にかかってしまったのだろうと思う。・・・よく気づいてくれた。出来る事なら、もっと前に・・・・・・いや、わたしが悪いのだ。わたしが魅了なんぞにかからなければ・・・。」
「・・・・・・・・お父様。」
「それに、わたしは別に黒髪を忌避してなどはしていない。確かに産まれた時は驚いたけど、先祖に黒髪がいたのは調べたから、知っていた。それに、その、言いにくいが黒髪を忌避していたのは乳母の方だと思う。感情だけは思うようにならなかったが、記憶はちゃんと・・・とは、怪しいが乳母の事は覚えている。」
「え・・・乳母が・・・?」
「ああ、あの乳母は確かエライザが選んだ筈だ。」
「エライザ様が・・・あ、ワザと?」
「おそらく・・・幼いお前を精神的に追い詰め、自分の都合の良い事を教え、いいように操ろうとしたのだろうな。魅了を使えば早いものを、こんな酷い真似をしおって・・・。」
後悔の念が父の頭の中を駆け巡る。頭を両手で抱え込み、また、涙が止まらなくなる。
「・・・グス・・。はぁ・・・、すまない。どうしても悲しくて・・・悔しくて涙が止まらない。本当に泣きたいのは、フローレンスに・・・グレースの方だろうに・・・。」
いつも蔑むような眼差しでしか見られた事がなかったフローレンスだったが、父がこれほどまでに涙を流す姿を見て凍りついていた心が痛むのを感じた。
ふと、父が涙を袖で乱暴に拭い深呼吸をした。そしてフローレンスへと向き合う。
「それにしてもフローレンス。お前はどうやって魅了の魔法に気づいたんだい?そして、解除まで。」
フローレンスはじっと父を見つめ、慎重に口を開いた。
「それは・・・ある人のおかげなのよ。でも、それが誰かは言えないわ。だって、まだわたくしはお父様を信用したわけではないもの。」
と、フローレンスが言い放った瞬間だった。突然、フローレンスの横から手が現れたかと思うとフローレンスの体をぎゅっと抱きしめたのだった。
「・・・フローレンス、長い間辛い思いをさせたわね。本当にごめんなさい。わたくしも貴女のことをあまり気にかけてあげられなかったわね。それが魅了の影響だったとしても、許される事ではないわ。寂しくて辛い思いをしたのは、フローレンスだもの。」
抱きしめてきた腕をフローレンスは、ぎゅっと抱きしめ返す。
「お母様・・・!わたくしはお母様がいてくれたから、寂しくはなかったわ!お母様が、たくさんわたくしの為に動いてくれていたのも知ってるわ。よくお父様と喧嘩なさってたのも見ていたわ。だから、、、だから!お母様が謝る事など・・・!」
「そう・・・ありがとう、フローレンス。貴女は強くて優しい子ね。・・・お父様の事もわたくしの事も無理して許せなくてもいいの。でも、今は少しだけ信じてあげて?旦那様がこんなに泣くの・・・わたくしも初めて見たのよ?」
そう言って公爵の方をグレースとフローレンスが揃って見ると、真っ赤に充血した目が驚きに見開き固まっていたのだった。
じっと目の前にある白い棺を見ながら、ポツリポツリと話す。
「おそらくそこで、フローレンスの言う魅了の魔法にかかってしまったのだろうと思う。・・・よく気づいてくれた。出来る事なら、もっと前に・・・・・・いや、わたしが悪いのだ。わたしが魅了なんぞにかからなければ・・・。」
「・・・・・・・・お父様。」
「それに、わたしは別に黒髪を忌避してなどはしていない。確かに産まれた時は驚いたけど、先祖に黒髪がいたのは調べたから、知っていた。それに、その、言いにくいが黒髪を忌避していたのは乳母の方だと思う。感情だけは思うようにならなかったが、記憶はちゃんと・・・とは、怪しいが乳母の事は覚えている。」
「え・・・乳母が・・・?」
「ああ、あの乳母は確かエライザが選んだ筈だ。」
「エライザ様が・・・あ、ワザと?」
「おそらく・・・幼いお前を精神的に追い詰め、自分の都合の良い事を教え、いいように操ろうとしたのだろうな。魅了を使えば早いものを、こんな酷い真似をしおって・・・。」
後悔の念が父の頭の中を駆け巡る。頭を両手で抱え込み、また、涙が止まらなくなる。
「・・・グス・・。はぁ・・・、すまない。どうしても悲しくて・・・悔しくて涙が止まらない。本当に泣きたいのは、フローレンスに・・・グレースの方だろうに・・・。」
いつも蔑むような眼差しでしか見られた事がなかったフローレンスだったが、父がこれほどまでに涙を流す姿を見て凍りついていた心が痛むのを感じた。
ふと、父が涙を袖で乱暴に拭い深呼吸をした。そしてフローレンスへと向き合う。
「それにしてもフローレンス。お前はどうやって魅了の魔法に気づいたんだい?そして、解除まで。」
フローレンスはじっと父を見つめ、慎重に口を開いた。
「それは・・・ある人のおかげなのよ。でも、それが誰かは言えないわ。だって、まだわたくしはお父様を信用したわけではないもの。」
と、フローレンスが言い放った瞬間だった。突然、フローレンスの横から手が現れたかと思うとフローレンスの体をぎゅっと抱きしめたのだった。
「・・・フローレンス、長い間辛い思いをさせたわね。本当にごめんなさい。わたくしも貴女のことをあまり気にかけてあげられなかったわね。それが魅了の影響だったとしても、許される事ではないわ。寂しくて辛い思いをしたのは、フローレンスだもの。」
抱きしめてきた腕をフローレンスは、ぎゅっと抱きしめ返す。
「お母様・・・!わたくしはお母様がいてくれたから、寂しくはなかったわ!お母様が、たくさんわたくしの為に動いてくれていたのも知ってるわ。よくお父様と喧嘩なさってたのも見ていたわ。だから、、、だから!お母様が謝る事など・・・!」
「そう・・・ありがとう、フローレンス。貴女は強くて優しい子ね。・・・お父様の事もわたくしの事も無理して許せなくてもいいの。でも、今は少しだけ信じてあげて?旦那様がこんなに泣くの・・・わたくしも初めて見たのよ?」
そう言って公爵の方をグレースとフローレンスが揃って見ると、真っ赤に充血した目が驚きに見開き固まっていたのだった。
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