上 下
42 / 67
王都での出会い

奥様参戦!

しおりを挟む
「なんだか、楽しそうな話をしているわね。わたくしだけ仲間外れかしら?」


フローレンスとリタとヒナタの3人で作戦会議をしていた洋室に女性の声が響いた。

声がした方へ3人揃って顔を向けると、そこにはにっこりと満面の笑みを浮かべたグレースが立っていた。
微笑んでいるハズなのに、背後に黒いものが見えるのは気のせいではないかもしれない。


「ねえ、フローレンス?楽しそうなお話なのに、わたくしを仲間外れは酷いんじゃないかしら?」

「いえ、その、あの、お母様は長い間体調が優れなかったものですから、その、ゆつくり休んで貰いたくて・・・ねえ!そうよね?リタ!」

「えっ!?お嬢様??こっちに振るんですか?!」

「ほら、リタも何か言ってよ!」

「いえいえいえいえいえ、無理ですって!!」


ヒナタはすぅと、自分の影を薄くするようにだけ努めた。


「・・・・フローレンス?」


優しげな声なのに何故か、圧を感じるグレースの声にフローレンスはビクッと肩をすくめてしまう。


「・・・仲間外れにしたつもりはなかったのよ。お母様の体調を心配してたのも本当なのよ。心配かけないように、その、言わなかっただけで・・・。」

「うん、分かってるわ。」


グレースは、ぎゅっとフローレンスを抱きしめた。


「フローレンスがお母様の事を心配してくれたのは、とっても嬉しいし、貴女のお陰で元気になれたのもちゃんと分かってるわ。でもね、旦那様の事は私にも言って欲しかったわ。だって、わたくしの旦那様なんだもの。」

「お母様・・・。」

「わたくしの旦那様を女狐に盗られてたまるかっ!目にモノ見せてやるわっ!」


ちょっと感動していたのに、なんだか背中がヒヤッとし始めた。


「それで、ヒナ?旦那様の魅了を解除はできるのよね?」


存在感を薄くする事に集中していたヒナタは、突然話しかけられておどろいてしまったが、慌てた返事をした。


「は、はいっ!できましゅ!」


慌てすぎて舌を噛んだが、誰も突っ込まない。


「そう、では、これが1番大事よ。ヒナは、に勝てる?」


グレースはすでにエライザを様付けで呼ばない。相当、怒りを感じているようだ。
その怒るグレースに答えるのには、勇気がいった。

なぜなら・・・、


「・・・その答えは、『いいえ』です。」

「そう、あわよくばとは思ったけれど。大丈夫よ。貴女にそこまで責任を押し付けたりしないわ。これは、我がノースポール公爵家の問題ですからね。」

「そうですわね、お母様。でも、これからどう動けばいいの?」


フローレンスの問いかけにグレースは、パチンとウィンクを返す。


「あら!フローレンス。貴女の作戦のままいきましょう!」

「え、お母様、作戦の事を知ってるの?」

「もちろん!だって、貴女達は特に周りを気にせず作戦について話してるじゃない!わたくしの耳にも自然に入ってくるわ。」


そういえば、この邸は4人しかいないからそこまで警戒していなかった。

そして、グレースはイタズラが見つかったような顔でペロッ小さく舌を出す。


「さあ、ひとつ死にましょうか!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

もう彼女でいいじゃないですか

キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。 常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。 幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。 だからわたしは行動する。 わたしから婚約者を自由にするために。 わたしが自由を手にするために。 残酷な表現はありませんが、 性的なワードが幾つが出てきます。 苦手な方は回れ右をお願いします。 小説家になろうさんの方では ifストーリーを投稿しております。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

砕けた愛は、戻らない。

豆狸
恋愛
「殿下からお前に伝言がある。もう殿下のことを見るな、とのことだ」 なろう様でも公開中です。

【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?

曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」 エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。 最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。 (王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様) しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……? 小説家になろう様でも更新中

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

処理中です...