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王都での出会い
ケーキは美味いしかったです
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「ん?どうした?」
笑顔で誤魔化せたと思ったが、不審な態度だったかもしれない。
「学生さんなんですね!もしかして、貴族の方・・・ですか?」
「いや、俺は特待生だから貴族ではないよ」
「そう、なんですね。」
(なんか含みがあったような・・・?)
そこへちょうど店員がケーキを持ってやってきた。
「お待たせしました。こちら当店のおすすめでございます。紅茶はカーパン地方のファイン茶でございます。」
少し大きめの花柄のお皿に一口サイズのケーキが6種類程、載っていた。色とりどりで金粉やカラフルなシュガーでとても美しかった。
ヒナタはケーキに釘付けになりながらも、店員に「ありがとうございます。」と、声をかけると店員は頭をニコッと笑みを浮かべ軽く下げて「何かあればベルでお呼びください」と、下がっていく。
「さあ、ヒナ。好きなのを食べてくれ。足りなかったら、また頼むから遠慮はいらないよ。」
「いえ、さすがにおかわりはいいです。」
きっぱりとおかわりは断り、ヒナタは最初に目についた赤いソースがかかっているケーキに手をつける。
(うわっ!ベリーソースだ。チーズケーキみたい。はぁ~、こんなに美味しいケーキが食べられるなんて・・・幸せ・・・。)
ニコニコとケーキを食べるヒナタをライは、じっと見つめる。
その表情はとても穏やかな笑みを浮かべていた。
「ライさんは、食べないんですか?」
「ヒナがあーんって、してくれたら食べようかな?」
「はえ?や・・やりませんよ!ライさんが食べないならわたしが全部食べちゃいますからっ!」
「ははっ!冗談だよ。俺はこれとこれをもらおうかな。」
ライは、笑いながらさっさとケーキを確保する。それを横目にヒナタは紅茶を飲んで、ちょっと動揺してしまった気持ちを落ち着けた。
「うまいな、このケーキ。でも1人じゃ、やっぱり入りづらかったよ。付き合ってくれてありがとう。」
「え?あ、いえ!わたしも美味しいケーキが食べれて嬉しいです。」
「そう?それなら、良かった。・・・そんなヒナにお願いがあるんだが。」
「お願い?ですか?」
「実は他にも気になってるお店があるんだが、1人じゃ入りづらいから・・・その、付き合ってくれると嬉しいんだが。どうかな?」
「そうなんですか。わたしでよければ・・・あ!いえ、ちょっと・・・その・・・」
(まずい!うっかりOKするところだったけど、あんまり顔を合わせるのはお嬢様の迷惑になるかも?・・・申し訳ないけど、お断りしないと!)
慌ててヒナタは、首を横に振る。
「その、あんまりわたしも時間が取れないと思うのでー、えーっと、その、他の方をお誘いください。」
「・・・・・そうか、残念だ。じゃあ、また会った時は付き合ってくれると嬉しい。」
「・・・・・その時に時間があれば・・・はい。」
ヒナタのその曖昧な返事にライは、にっこりと笑う。なぜかヒナタは背中がヒヤッした。
「約束だからな!」
そう言って、その後はたわいない世間話をして2人は別れたのだった。
「なんだか、不思議な人だったな。ケーキも奢ってもらって、美味しいし嬉しいけど・・・。ま、いっか。もう会う事もないだろうしね。」
ヒナタは、残りの買い物をしに手芸店へと足を向けるのだった。
その背中をじっと見つめる紫の瞳には気づかなかった。
笑顔で誤魔化せたと思ったが、不審な態度だったかもしれない。
「学生さんなんですね!もしかして、貴族の方・・・ですか?」
「いや、俺は特待生だから貴族ではないよ」
「そう、なんですね。」
(なんか含みがあったような・・・?)
そこへちょうど店員がケーキを持ってやってきた。
「お待たせしました。こちら当店のおすすめでございます。紅茶はカーパン地方のファイン茶でございます。」
少し大きめの花柄のお皿に一口サイズのケーキが6種類程、載っていた。色とりどりで金粉やカラフルなシュガーでとても美しかった。
ヒナタはケーキに釘付けになりながらも、店員に「ありがとうございます。」と、声をかけると店員は頭をニコッと笑みを浮かべ軽く下げて「何かあればベルでお呼びください」と、下がっていく。
「さあ、ヒナ。好きなのを食べてくれ。足りなかったら、また頼むから遠慮はいらないよ。」
「いえ、さすがにおかわりはいいです。」
きっぱりとおかわりは断り、ヒナタは最初に目についた赤いソースがかかっているケーキに手をつける。
(うわっ!ベリーソースだ。チーズケーキみたい。はぁ~、こんなに美味しいケーキが食べられるなんて・・・幸せ・・・。)
ニコニコとケーキを食べるヒナタをライは、じっと見つめる。
その表情はとても穏やかな笑みを浮かべていた。
「ライさんは、食べないんですか?」
「ヒナがあーんって、してくれたら食べようかな?」
「はえ?や・・やりませんよ!ライさんが食べないならわたしが全部食べちゃいますからっ!」
「ははっ!冗談だよ。俺はこれとこれをもらおうかな。」
ライは、笑いながらさっさとケーキを確保する。それを横目にヒナタは紅茶を飲んで、ちょっと動揺してしまった気持ちを落ち着けた。
「うまいな、このケーキ。でも1人じゃ、やっぱり入りづらかったよ。付き合ってくれてありがとう。」
「え?あ、いえ!わたしも美味しいケーキが食べれて嬉しいです。」
「そう?それなら、良かった。・・・そんなヒナにお願いがあるんだが。」
「お願い?ですか?」
「実は他にも気になってるお店があるんだが、1人じゃ入りづらいから・・・その、付き合ってくれると嬉しいんだが。どうかな?」
「そうなんですか。わたしでよければ・・・あ!いえ、ちょっと・・・その・・・」
(まずい!うっかりOKするところだったけど、あんまり顔を合わせるのはお嬢様の迷惑になるかも?・・・申し訳ないけど、お断りしないと!)
慌ててヒナタは、首を横に振る。
「その、あんまりわたしも時間が取れないと思うのでー、えーっと、その、他の方をお誘いください。」
「・・・・・そうか、残念だ。じゃあ、また会った時は付き合ってくれると嬉しい。」
「・・・・・その時に時間があれば・・・はい。」
ヒナタのその曖昧な返事にライは、にっこりと笑う。なぜかヒナタは背中がヒヤッした。
「約束だからな!」
そう言って、その後はたわいない世間話をして2人は別れたのだった。
「なんだか、不思議な人だったな。ケーキも奢ってもらって、美味しいし嬉しいけど・・・。ま、いっか。もう会う事もないだろうしね。」
ヒナタは、残りの買い物をしに手芸店へと足を向けるのだった。
その背中をじっと見つめる紫の瞳には気づかなかった。
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