28 / 67
ノースポール公爵家の事情編
リタの秘密
しおりを挟む
リタと並んで紅茶を真剣に淹れる。なかなか難しい。それでもなんとか様になってきた頃だった。リタが話しかけてきた。
「ねえ、ヒナ?その、奥様って本当に毒だったの?」
「え?そうです。間違いないと思います。」
「・・・そう、よね。」
暗い表情で思案顔をするリタ。心配になり話しかける。
「・・・何か気になる事が?」
「・・・貴女にこんな事を言っても理解できるかその、分からないのだけど。わたしは・・・前世の記憶を持っているの。」
「・・・前世。」
「そう、お嬢様にはちょっとだけ言った事があるのだけと、虚構のお話だと思っているみたいで・・・ちょっと信じてもらえてないんだけど。」
「なぜ、そんな話をわたしに?」
「うーん、貴女がスライムだからかしら?お嬢様の味方なのは変わらないし、何よりわたしが今、状況を飲み込めないから吐き出したかったというか・・・まあ、そんなところよ。」
分かったような分からないような。だが、今リタは1人では処理できない問題に直面しているということなのだろう。
「わたしでよければ、聞きますよ。」
そのヒナタのセリフに、リタはハッと顔を上げヒナタを見つめるとフッと笑った。
「ありがとう・・・ヒナ。」
それからのリタの話はとても興味深いものだった。
「この世界は乙女ゲーム『イケメンプリンス革命~愛は王国を救う~』略してイケプリの世界なの。わたしも最初は分からなかったのだけど、この屋敷に洗濯下女として雇われお嬢様の名前を聞いた時に気づいたの。それからは国の名前や王族の名前とかを色々調べて確信したわ。」
「あの、リタさんは侍女ではないのですか?」
「不思議に思うかもしれないけど、今はお嬢様の専属侍女よ。でも元々は平民で孤児だったの。12歳の時に洗濯下女として運良く雇われる事ができたのだけど、そんなわたしが侍女になれたのは、ある意味エライザ様のおかげなの。」
「エライザ様の・・・?」
「そう、お嬢様への嫌がらせでわたしが侍女に選ばれたの。お嬢様には洗濯下女で充分だとね。でも!お嬢様はわたしが出来なくても叱ったりしなかった。少しずつ覚えればいいのだと文字も書けなかったわたしに教えてくださったの。勉強も自分の後ろに居れば一緒に学べるだろうと一緒に連れて行ってくださり、復習にもなるからとわたしに学んだ事を教えてくださったの。」
「だから今のリタさんになる為に努力されたんですね。」
ヒナタの言葉にリタは力強く頷く。
「あんなに努力家でお優しいお嬢様の恩に報いる為にもわたしはお嬢様をお守りしたいの。それで、最初の話に戻るのだけど、実はお嬢様が『イケプリ』における悪役令嬢になるのよ。」
「悪役令嬢?お嬢様が?」
「信じられないのもよく分かるわ。だって、お嬢様の性格はゲームでの性格とだいぶ違うんだもの。ゲームでは、無表情でとてもツンツンしていたのよね。そして婚約者のコナー第二王子殿下を盲目的に愛していらっしゃったと思うんだけど・・・。」
「全く違うじゃないですか!本当に悪役令嬢なんですか?」
「それは間違いないのよ。そのゲームの悪役令嬢フローレンスがとてもカッコよくて好きだったから、よく覚えているの。容姿が。」
「え?容姿だけ?」
「あ、今は性格込みで大好きよ!そこは間違わないでね!」
「・・・はぁ。」
「ゴホン。それで、お嬢様のお母様、グレース奥様なんだけど、ゲームの中では病死だったのよ。だから、お嬢様にも医者の診断はおかしいんじゃないかって進言して、一緒に薬を作ろうとしてたんだけど・・・まさか毒だったなんて。もしかしたら、ゲームでも本当はそうだったのかしら。」
「そこは分からないんですか?」
「うーん、全ルートを攻略したわけではないから確信は持てないけど、病死の記述があったのは確かね。あとエライザ様って実は名前も出てなくて・・・悪役令嬢は継母に小さい頃から虐待されていたという記述はあったから、この継母がエライザ様だと思うのよね。
旦那様が再婚されるのがお嬢様が10歳の頃だったはずだから、グレース奥様に関しては本当に焦っていたのよね。でもまさか、お世話もされていないなんて・・・最近は特に近づけないようにされていたから、もっと無理矢理にでも見にいけばよかった!」
悔しそうに拳を握るリタの手の上にヒナタも手を重ねる。
「大丈夫。リタさんが頑張ってくれたお陰で、お嬢様は救われていると思います。お嬢様が悪役令嬢みたいな性格になっていないのもリタさんの愛情が伝わっているからだと思いますよ。それに奥様はまだ手遅れじゃありません!これから助けるんです!!」
「ねえ、ヒナ?その、奥様って本当に毒だったの?」
「え?そうです。間違いないと思います。」
「・・・そう、よね。」
暗い表情で思案顔をするリタ。心配になり話しかける。
「・・・何か気になる事が?」
「・・・貴女にこんな事を言っても理解できるかその、分からないのだけど。わたしは・・・前世の記憶を持っているの。」
「・・・前世。」
「そう、お嬢様にはちょっとだけ言った事があるのだけと、虚構のお話だと思っているみたいで・・・ちょっと信じてもらえてないんだけど。」
「なぜ、そんな話をわたしに?」
「うーん、貴女がスライムだからかしら?お嬢様の味方なのは変わらないし、何よりわたしが今、状況を飲み込めないから吐き出したかったというか・・・まあ、そんなところよ。」
分かったような分からないような。だが、今リタは1人では処理できない問題に直面しているということなのだろう。
「わたしでよければ、聞きますよ。」
そのヒナタのセリフに、リタはハッと顔を上げヒナタを見つめるとフッと笑った。
「ありがとう・・・ヒナ。」
それからのリタの話はとても興味深いものだった。
「この世界は乙女ゲーム『イケメンプリンス革命~愛は王国を救う~』略してイケプリの世界なの。わたしも最初は分からなかったのだけど、この屋敷に洗濯下女として雇われお嬢様の名前を聞いた時に気づいたの。それからは国の名前や王族の名前とかを色々調べて確信したわ。」
「あの、リタさんは侍女ではないのですか?」
「不思議に思うかもしれないけど、今はお嬢様の専属侍女よ。でも元々は平民で孤児だったの。12歳の時に洗濯下女として運良く雇われる事ができたのだけど、そんなわたしが侍女になれたのは、ある意味エライザ様のおかげなの。」
「エライザ様の・・・?」
「そう、お嬢様への嫌がらせでわたしが侍女に選ばれたの。お嬢様には洗濯下女で充分だとね。でも!お嬢様はわたしが出来なくても叱ったりしなかった。少しずつ覚えればいいのだと文字も書けなかったわたしに教えてくださったの。勉強も自分の後ろに居れば一緒に学べるだろうと一緒に連れて行ってくださり、復習にもなるからとわたしに学んだ事を教えてくださったの。」
「だから今のリタさんになる為に努力されたんですね。」
ヒナタの言葉にリタは力強く頷く。
「あんなに努力家でお優しいお嬢様の恩に報いる為にもわたしはお嬢様をお守りしたいの。それで、最初の話に戻るのだけど、実はお嬢様が『イケプリ』における悪役令嬢になるのよ。」
「悪役令嬢?お嬢様が?」
「信じられないのもよく分かるわ。だって、お嬢様の性格はゲームでの性格とだいぶ違うんだもの。ゲームでは、無表情でとてもツンツンしていたのよね。そして婚約者のコナー第二王子殿下を盲目的に愛していらっしゃったと思うんだけど・・・。」
「全く違うじゃないですか!本当に悪役令嬢なんですか?」
「それは間違いないのよ。そのゲームの悪役令嬢フローレンスがとてもカッコよくて好きだったから、よく覚えているの。容姿が。」
「え?容姿だけ?」
「あ、今は性格込みで大好きよ!そこは間違わないでね!」
「・・・はぁ。」
「ゴホン。それで、お嬢様のお母様、グレース奥様なんだけど、ゲームの中では病死だったのよ。だから、お嬢様にも医者の診断はおかしいんじゃないかって進言して、一緒に薬を作ろうとしてたんだけど・・・まさか毒だったなんて。もしかしたら、ゲームでも本当はそうだったのかしら。」
「そこは分からないんですか?」
「うーん、全ルートを攻略したわけではないから確信は持てないけど、病死の記述があったのは確かね。あとエライザ様って実は名前も出てなくて・・・悪役令嬢は継母に小さい頃から虐待されていたという記述はあったから、この継母がエライザ様だと思うのよね。
旦那様が再婚されるのがお嬢様が10歳の頃だったはずだから、グレース奥様に関しては本当に焦っていたのよね。でもまさか、お世話もされていないなんて・・・最近は特に近づけないようにされていたから、もっと無理矢理にでも見にいけばよかった!」
悔しそうに拳を握るリタの手の上にヒナタも手を重ねる。
「大丈夫。リタさんが頑張ってくれたお陰で、お嬢様は救われていると思います。お嬢様が悪役令嬢みたいな性格になっていないのもリタさんの愛情が伝わっているからだと思いますよ。それに奥様はまだ手遅れじゃありません!これから助けるんです!!」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
結婚式をやり直したい辺境伯
C t R
恋愛
若き辺境伯カークは新妻に言い放った。
「――お前を愛する事は無いぞ」
帝国北西の辺境地、通称「世界の果て」に隣国の貴族家から花嫁がやって来た。
誰からも期待されていなかった花嫁ラルカは、美貌と知性を兼ね備える活発で明るい女性だった。
予想を裏切るハイスペックな花嫁を得た事を辺境の人々は歓び、彼女を歓迎する。
ラルカを放置し続けていたカークもまた、彼女を知るようになる。
彼女への仕打ちを後悔したカークは、やり直しに努める――――のだが。
※シリアスなラブコメ
■作品転載、盗作、明らかな設定の類似・盗用、オマージュ、全て禁止致します。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる