朝が来るまでキスをして。

月湖

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130 忘れて side hikaru

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この人は昔からモテていて、特にデビューしてからは表には出ない小さなトラブルがたくさんあったのは知ってる。

てっきりそんなことの積み重ねがこの人から愛を奪ったのだと思っていたけれど。

17歳といえばこの人実力が認められ始めて、デビューの声掛かりが出てた頃だ・・・。

そんな時にそんなことがあったなんて。

何があっても動じない所為でボーッとしてると思われがちだけれど、実は状況判断の速いこの人だ。



「あなた、その時もそうやって笑って終わらせたんでしょ?
怒ったりとかしないですぐ諦めて別れちゃったんでしょ?
愛する気持ちも忘れるくらい傷ついたくせに。
・・・バカだよ」



こんなにいいオトコなのに。

あなたが本気になったら堕ちない女なんていないのにさ。

・・・そのつもりのなかった俺が堕ちたくらいなのに。



「ホントに、バカだわ」



「そんな何回もバカバカ言わなくったってわかってるっつの(笑)」



俺の言葉を分かってないんだか、分かって笑ってるんだか知らないけど。



「そんな女、忘れていい女だよ。覚えてる価値なんて無い」



つかさ、忘れろ。

全部、塗り替えてあげる。

あなたがもし偽りでもまた俺に好きって言ってくれたなら今度は泣かずに、嫌って言わずに『俺も』って返してあげるから。



「ねえ、セックス、しよう?
俺、ちゃんと準備してきたよ?
絶対あなたの家に無いと思ったから、すっげ恥ずかしかったけど買って来た。
俺に、お仕置きすんだろ?」



薬局で買ってきたものをポケットから出し握らせると、いつもの『ふふ』って笑う声が聞こえてきた。



「ヒカルちゃんが忘れさせてくれんの?」



きつく抱きしめていた腕を緩めて顔を見たら、いつもの、少し意地悪な微笑みが戻ってきていた。

いつも、俺を抱くときにしてる顔。

それが最後には余裕を無くして、眉間にシワを寄せて俺の中で果てる。

その瞬間がとてつもなく好きだ。

あなたが俺のものだって思える瞬間が。



「俺の事、好きにしていいから、全部忘れてよ」



利用していいよ俺の事。

その代わり、その女を忘れたらちゃんと俺を見て。


シャツのボタンを自分で外して、ゆっくりと彼に口付ける。



「ベッド、どこ?」



そして、ゆっくりと目を開け唇をつけたまま言うと彼も同じように目を開けもう一度小さくキスをし、俺の手を引いて歩き出した。



「ヒカルちゃんて、頭いいくせにホント、バカだよな」



暗い寝室のベッドの上、キスの直前に彼が囁いた。


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