朝が来るまでキスをして。

月湖

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80 誰も side hikaru

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・・・だから、ころころ相手が変わってたの?

期待して、諦めて・・・。

・・・・・・そんな事を繰り返すくらいに、誰かを愛してみたいと思ってたの?




「・・・俺、でも・・・?」




思わず、口に出してしまっていた。

彼の瞼がゆっくり開き、俺達の視線がまた交わった。

俺は誤魔化すのを諦めさっき言ったことを繰り返す。



「誰にも恋愛感情を抱いた事のないあなたが初めて好きになるのは。
・・・俺でも、いいの?」



むしろ俺であってほしいと思うけれど、カンケイを持って半年以上経った俺にそんな事を言うのは、また諦め始めたから?


――――・・・そしたら、俺は?


まだ来てもいないその瞬間を思うと胸がぎゅうっと締めつけられるように痛む。

俺は耐えられなくなって視線を逸らした。



「・・・また先走って変なコト考えてんだろ」



目の奥が痛くなり始めた頃、ナガレくんの手が優しく俺の頬を撫でた。



「・・・・・」



視線を戻すと、しょうがねえな、みたいな表情をした彼と目が合った。



「結構酷い事されてきてんのに、まだそんな事言えちゃうんだ」



・・・だって。



「・・・好き、だから」



「ふふ・・・」



「あなただけ・・・。誰より、とかじゃなくて。
ナガレくんだけ、好きなんだ・・・」



勝手に湧き上がってくる想いは、もう胸の内だけでは収まりきれない。



「わかったって・・・(笑)」



「分かってない・・・。
俺がどんなにあなたが好きか全然分かってないよ。あなたが笑顔を向ける全ての人に醜いほど嫉妬して・・・」



『殺すよ?』

そんな言葉がするりと出てきてしまうほどに。

『信じられない』とでも言いそうな眼を向けられたけど、あれは半分以上は本気を込めた言葉だった。

もしもこの人が俺以外の誰かを想う日が来たとしたら、俺は・・・。



―――――・・・そんな日が来るくらいなら。



「誰も好きになれないっていうなら、そのままでいてよ・・・。
好きじゃなくても、俺があななたのもんだって思うなら、ずっとこのままでいて。
誰も心に入れないで。
それ以外なら、もう何をされても受け入れるから」



黒い瞳を覗き込み、目を開けたまま触れるだけのキスをし、・・・そして。

その首に、手を掛けた。



「それでももし、俺以外の誰かを好きになったなら・・・、全力で隠して。
じゃないと、・・・・・俺はあなたを殺してしまうかもしれない」



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