63 / 64
63 聖域 アルブレヒト
しおりを挟む
昼間でも薄暗い森を走る。
手負いの魔獣は執拗に追いかけてくる。
それはかつて遭遇した事の無いほど大きな魔獣だった。
「殿下・・・っ!」
多少拓けた場所に出たところで部下が私を庇って魔獣の前に出るが、構える間もなく強靭な腕で薙ぎ払われ吹っ飛んで行く。
すでに二人このデカブツによって負傷しているが、今は部下を介抱している余裕は無い。とっとと倒して彼等の傷口を浄化してやらなければ。
握った剣に力が入る。
こいつは絶対に森の外に出してはいけない。ここで倒す!!
「お前たちはその場で水魔法を放て!私が凍て付かせる!!私が魔法を放ったら直ぐさま退避!」
「ハッ!」
間髪入れず適性のある数名が水魔法を放ち、数舜おいて氷結魔法で魔獣を凍らせ、更に風魔法を纏わせた剣の腕を叩き切る。
魔法耐性があるのか一撃では倒せず、多少鈍くはなったが十分に鋭く襲ってくる牙や腕を避けながら二度三度と切り付けてやっと霧散した。
その場に残ったのは赤黒く輝く大きな魔石。私の拳二つ分くらいはある。初めて見る大きさだった。
それだけ強い魔獣だったという事だ。
抑え込めてよかった。
負傷した部下の傷を聖水で浄化し、一応回復薬も飲ませたが、薬では多少傷が塞がるくらいで全快には程遠い。
比較的元気な部下に背負わせ移動を開始する。
速やかに彼らを連れて森を出る算段をしなければ。
さすがに3人もの重傷者を抱えて何日も野営は出来ない。
「出来るだけ急いで森を出る!しかし今日中には無理だろう。適当な場所で野営をし明朝出発する。
トマスとルイス、お前達は二人一組で斥候し野営場所を探してくれ」
「ハッ」
これまでも斥候として優秀な働きをしてきた二人に命じる。
さて、少しでも休める場所があればいいが・・・。
この辺りでは先程の魔獣が最大だったのか、進む道に大きなものは出なくなった。恐らくあれが取り込んでいたのだろう。今のうちに少しでも進まなければ。
途中で出てくる小さな魔獣を切り捨てながら進むこと1時間程か。
斥候に出ていた二人が戻ってきた。
「団長、この先30分程の場所で野営が出来そうです」
「そうか。よく見つけてくれた。案内を」
「こちらです」
二人の案内に従い森を進むと、
「ここは・・・」
その場所は、闇の気配で空気が澱んでいるのが常の東の森にあって、まるで聖域のように空気の澄んだ場所だった。
広くはないが多少拓けた場所で、幾つかであれば天幕を張れるだろう。
この森の中でこんな場所が見つかったのは僥倖でしかない。
「天幕を張り、まずは負傷者を休ませろ。1班3時間交代で見張り、その他は休憩を取れ」
何故森の中にこんな場所があるのかは分からないが、きっとこの場所にいる限り魔獣は襲ってこないだろう。一応交代で見張りは残すが、少しは隊員を休ませてやれそうだと安堵した。
手負いの魔獣は執拗に追いかけてくる。
それはかつて遭遇した事の無いほど大きな魔獣だった。
「殿下・・・っ!」
多少拓けた場所に出たところで部下が私を庇って魔獣の前に出るが、構える間もなく強靭な腕で薙ぎ払われ吹っ飛んで行く。
すでに二人このデカブツによって負傷しているが、今は部下を介抱している余裕は無い。とっとと倒して彼等の傷口を浄化してやらなければ。
握った剣に力が入る。
こいつは絶対に森の外に出してはいけない。ここで倒す!!
「お前たちはその場で水魔法を放て!私が凍て付かせる!!私が魔法を放ったら直ぐさま退避!」
「ハッ!」
間髪入れず適性のある数名が水魔法を放ち、数舜おいて氷結魔法で魔獣を凍らせ、更に風魔法を纏わせた剣の腕を叩き切る。
魔法耐性があるのか一撃では倒せず、多少鈍くはなったが十分に鋭く襲ってくる牙や腕を避けながら二度三度と切り付けてやっと霧散した。
その場に残ったのは赤黒く輝く大きな魔石。私の拳二つ分くらいはある。初めて見る大きさだった。
それだけ強い魔獣だったという事だ。
抑え込めてよかった。
負傷した部下の傷を聖水で浄化し、一応回復薬も飲ませたが、薬では多少傷が塞がるくらいで全快には程遠い。
比較的元気な部下に背負わせ移動を開始する。
速やかに彼らを連れて森を出る算段をしなければ。
さすがに3人もの重傷者を抱えて何日も野営は出来ない。
「出来るだけ急いで森を出る!しかし今日中には無理だろう。適当な場所で野営をし明朝出発する。
トマスとルイス、お前達は二人一組で斥候し野営場所を探してくれ」
「ハッ」
これまでも斥候として優秀な働きをしてきた二人に命じる。
さて、少しでも休める場所があればいいが・・・。
この辺りでは先程の魔獣が最大だったのか、進む道に大きなものは出なくなった。恐らくあれが取り込んでいたのだろう。今のうちに少しでも進まなければ。
途中で出てくる小さな魔獣を切り捨てながら進むこと1時間程か。
斥候に出ていた二人が戻ってきた。
「団長、この先30分程の場所で野営が出来そうです」
「そうか。よく見つけてくれた。案内を」
「こちらです」
二人の案内に従い森を進むと、
「ここは・・・」
その場所は、闇の気配で空気が澱んでいるのが常の東の森にあって、まるで聖域のように空気の澄んだ場所だった。
広くはないが多少拓けた場所で、幾つかであれば天幕を張れるだろう。
この森の中でこんな場所が見つかったのは僥倖でしかない。
「天幕を張り、まずは負傷者を休ませろ。1班3時間交代で見張り、その他は休憩を取れ」
何故森の中にこんな場所があるのかは分からないが、きっとこの場所にいる限り魔獣は襲ってこないだろう。一応交代で見張りは残すが、少しは隊員を休ませてやれそうだと安堵した。
449
お気に入りに追加
2,230
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
愛され奴隷の幸福論
東雲
BL
両親の死により、伯父一家に当主の座を奪われ、妹と共に屋敷を追い出されてしまったダニエル。
伯爵家の跡継ぎとして、懸命に勉学に励み、やがて貴族学園を卒業する日を間近に迎えるも、妹を守る為にダニエルは借金を背負い、奴隷となってしまう──……
◇◇◇◇◇
*本編完結済みです*
筋肉男前が美形元同級生に性奴隷として買われて溺愛されるお話です(ざっくり)
無表情でツンツンしているけれど、内心は受けちゃん大好きで過保護溺愛する美形攻め×純粋培養された健気素直故に苦労もするけれど、皆から愛される筋肉男前受け。
体が大っきくて優しくて素直で真面目で健気で妹想いで男前だけど可愛いという受けちゃんを、不器用ながらもひたすらに愛して甘やかして溺愛する攻めくんという作者が大好きな作風となっております!
転生皇子の新生活
𝐍 𝐢 𝐚🐾
BL
日本に住む青年九条 翠 (くじょう すい)はナサニエル帝国第3皇子 ルーカスとして、第2の生を受ける。
前世は家族とも疎遠で、あまり良い思い出もない。そんな翠がルーカスとして生き、様々な人に愛され恋をして新しい人生を歩んでいく話。
恋愛はルーカスが学園に入ってから主に進めていこうと思います。
初めて書いたので語彙も少なく、拙いですが、暖かい目で見ていただけると嬉しいです。誤字脱字があれば教えて頂けると嬉しいです!定期的に投稿出来るように頑張ります。
※強姦表現や虐待表現があります。
⚠️注意⚠️ この世界の赤子が話し出すのは1歳程ですごく早く、現実とは異なります。
人物紹介の瞳の色の後ろにある( )は、宝石✨️の名前で️す。良ければ調べてみてください!色のイメージがつきやすくなるかも?しれないです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる