聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

５６ クロウの不在

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神の森に戻って約２週間。
俺は以前にここにいた頃と同じような生活に戻っていた。
朝にひとつ木の実を食べ、森に入って今日食べる分の木の実を探し、魔法の練習をして。
疲れたらその辺の木の根元やクロウのお腹に凭れ掛からせてもらって休憩をしてまた練習。
夜は読書。本棚の中身がいつの間にか少しずつ変わっているのは爺さん神さんが俺が飽きないようにと気遣ってくれたのか、俺が知識として身に着けると消えて新たな情報が書かれた本が増える仕様なのかその辺はよく分からないが、テレビやPCが無いこの世界では本が一番身近な娯楽な事は間違いない。


そんなまったりした生活を続けていると、ある日クロウが出掛けてくると言い出した。

『２、３日留守にするが大丈夫か？』
「それは多分大丈夫だけど・・・。どこに行くんだ？」
『下界がどうなっているのか確認にな』
「下界・・・。ああ、クロウの本来の仕事か」
『そんなところだ』
「俺は大丈夫。行ってらっしゃい。気をつけてな」
『ああ』

返事と同時、クロウは目の前から消えた。

「は？」

・・・って、転移か。
呪文とか使わないんだな。
俺も呪文は唱えないけど、俺の場合は恥ずかしいから口に出したくないから声に出さないだけで、魔法を使う時には脳内で“こんなの”なんて考えてから魔力を放出する為、狙いをつけてから発射するまでに多少タイムラグがある。
映画やTVやアニメなど、前の世界で見た『魔法』をいくつかの属性を組み合わせて形にしていくのは楽しい作業だけれど、イメージから発動までが致命的に遅く、実戦なら素早い魔物相手ではすぐにやられてしまうだろう。
爺さん神さんに全属性の魔法を貰ったのに、全然活用出来る気がしない。
固定的で貧困なイメージを膨らませるのに手っ取り早い方法はこの世界の魔法使いが使う魔法をこの目で見て、どんなふうに魔法を使っているのかを感じる事だと分かってはいるが、・・・まだ森の外に出る勇気は出ない。
あの日、王子の部屋でほんの僅かな時間とはいえ経験してしまったあの気持ち悪さは簡単に忘れられるものではない。
だからクロウも慣らすための場所ではなく、元いたこの森の深部に連れ帰ってくれたのだと思う。









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クロウが出掛けてから５日経った。
２、３日の仕事が少し伸びるなんて事は前世？ではたまにある事で、仕事大変なのかな、と暢気に構えていたのだが。
でもそれが１週間になるとさすがに心配になった。

神獣がどういうものなのかよく知らない。
神の使い、もしくは代行者、そんなような存在だとしか。
魔獣化したモノが増えすぎたら間引いたりするというのは聞いたが、それ以外の事は殆ど知らない。
強くて、偉そうで、実際偉いのかもしれないけど神獣なんてクロウしか知らないから他がどうなのかは分からんけど、甘い物が好きじゃなくて、でも付き合いでリンゴくらいは一緒に食べてくれる友達が、今どこで何をしてるのか。ちゃんと無事と帰ってくるのかなんてこんな心配したくない。
人間とは明らかに違う存在で、生死に縛られないと聞いてはいるけど。


「ああもう！なんで帰ってこないかな！クロウのあほ！」

――――『阿呆とは、随分な言い草だなハルカ』
「うわあっ！」













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今回短くてすみません。事故の前に書いていたものを吐き出しています。
次回はまたしばらく後になるかと思いますが、気長にお待ち頂けたら有難く思います。