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「ん~!おいひ~!!」

口いっぱいにパンケーキを頬張り、幸せに浸る。

もう、フォークが止まらないっ!

「ラーティル様も、食べますか?」

少しだけ調子に乗った私はライル様にパンケーキを差し出す。
が、案の定ライル様には断られた。

そして、断られたショックで我に返った。

あれ、今、私、貴族令嬢として、ありえない食べ方をしてしまったような⋯⋯

コホン。とわざとらしく言い、すまし顔をつくり、ゆっくり優雅にパンケーキを食べる。

もちろん、口に広がるパンケーキの甘さに徐々に頬が緩むわけで⋯⋯

その時、フッと微かにライル様の笑い声が聞こえた。その声に私が視線を向ければ、直ぐになんでもなかったような顔をする。

え、うそ⋯⋯いま、ライル様が笑って⋯⋯

気のせいかもしれない。だけど、気のせいでもいい。ライル様といるだけで私は幸せなのだ。
私は嬉しくなって頬を緩ませた。

その後パンケーキを食べ終わった私は、とっくにコーヒーを飲み終わっていたライル様と店を出た。

あ、もちろん。自分の分は自分で払ったわよ?
元々、そのつもりだったし⋯⋯

ただ何故か、ライル様は驚いていたけれど。
もしかして、私にパンケーキ代をたかられるとか思っていたのかな⋯⋯

だから、ライル様は食べなかったとか?

あ、ありえるわね。

「あの、リズベット嬢⋯⋯」

「⋯⋯?」

寮に向かって歩いていると、ラーティル様は突然立ち止まりこちらを向いた。

私は突然の事に首をかしげた。

「それが貴女の素なんですか?」

あぁ。その事ね。と、私はどこか納得した。

そう言えばなんで今の今まで何も言われなかったんだろう⋯⋯

「さぁね」

私はそれだけ言って、先に歩き出す。

「ライル様って呼ばせてくれたら考えるわ」

振り向きもせず、呟いた。

ラーティル様から返事はなかった。

聞こえなかったのかな?とは思わなかった。多分、これが彼の答え。

うん、前途多難ね。
前を向いてて良かったわ⋯⋯

少しだけ苦笑い漏れた。




私がライル様と学園の敷地内へ戻ると、向こう側から王子がやって来た。

「なんで二人が一緒にいるんだ?」

「さっきぃ~、たまたま会ったんですよォ~」

先程歩きながら簡単にツインテールに戻して良かった。シンプルなワンピースを着ては居るが、私は構わずぶりっ子を演じた。

突然の私の豹変ぶりにライル様は驚きを隠せないでいたが、直ぐに私の言ったことに便乗した。

不思議なことに、私が言っても、不振な目を向けるだけだった王子が、ライル様の言葉は信じているみたいで、すぐに納得して「そうか」と呟いた。

私は王子とライル様にお花摘みに行ってきます!とぶりっ子全開で言い、その場を離れた。

流石にいきなりのぶりっ子は私だってきつい。

せめて心の準備をさせてくれ⋯⋯





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