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二度目の人生
デートの約束
しおりを挟むクリスティーナは早速、アリシアに嫌がらせをしている人物を探すため、朝から張り込みをすることにした。
と言うのも、クリスティーナにはこういう事を相談できるような友達は愚か、フィンセント以外とは全然話したことが無かったのだ。
あ!いたわ!
クリスティーナは、寮から出てきたアリシアを見つけた。アリシアの隣には、友達と思われる令嬢が二人いた。
クリスティーナはアリシア達の尾行を開始した。こうしていると、前世で言うスパイにでもなった気分だ。
そそくさとアリシア達を見守っていると、直ぐに教室に着いてしまった。
収穫は無し。まあ、私も直ぐに見つかるとは思っていなかったから、予想はできたけど、少しガッカリだ。
また出直そうと踵を返した。
その瞬間、クリスティーナはなにかに視界を塞がれた。
「っ、!!!」
驚きすぎて悲鳴を忘れていたクリスティーナがハッとして声をあげようとした時、上から聞きなれた声がした。
「クリスティーナ」
「フィンセント様!」
顔を上げると、そこには婚約者であるフィンセントがニコニコしながらクリスティーナを見つめていた。
突然のスキンシップにボンッと顔に火がついた様な熱を感じた。
「フィンセント様、あの、な、何を?」
「あ、ごめん。つい·····」
フィンセント様はそう言って私から手を離した。それから、人差し指で頬をかきながら小声で言った。
「クリスティーナが見えたから」
「え·····」
「ほら、最近、忙しくてお互いあんまり会えて無かっただろう? だから、その、嬉しくて」
「フィンセント様」
「うっ、ク、クリスティーナは、最近どうだった? その、良かったら、カフェに行かない? 今日、授業の後にでも·····。あ、近くにとてもオシャレなカフェが最近出来て·····」
フィンセント様はそう言ってチラリと私を見た。その視線にビクリと肩がはねたのは何故なのか·····。
「わ、かりましたわ」
放課後のアリシアの尾行はまた明日にしようと思い、素直に頷く。するとフィンセントは嬉しそうに破顔した。
「それじゃあ、放課後、直ぐに行けるように予約を入れとくよ。クリスティーナの教室まで迎えに行くから待ってて」
「はい、お待ちしております」
「出来るだけ急ぐから」
何故か食い気味にそう言うとフィンセントにクリスティーナは思わず笑いをこぼした。
「ふふっ、楽しみです」
「! あの、クリス──」
───チリリリンッ
何かを言おうとしたフィンセントの言葉に被さるように、チャイムがなった。
「それでは、私はこれで」
そう言って、にやけそうになる口元に何とか力を入れて、足早にフィンセントの横を通り過ぎた。
一方、フィンセントは、久しぶりにクリスティーナの笑顔と、すれ違いざまの嬉しそうな顔を見て、なんとも言えない胸が締め付けられるような気持ちになった。
ああ、本当に。俺も放課後が楽しみだよ。
フィンセントは暫くクリスティーナの後ろ姿を見つめていた。
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ベイマックスさん、はい、そうです、実は巻き戻しでした! 私も自分で少し、前フリが長すぎたかな···とは、思いましたね❀.(*´ω`*)❀.
本当ですか!ありがとうございます!そう言って頂けると、本当に嬉しいです!少女漫画ばかり読んでいるので、それに寄ってる可能性はあるかもですね·····。今後とも、二人の様子を見守って頂けたら嬉しいです!(*・ω・)*_ _)
ベイマックスさん、感想ありがとうこざいます(●︎´▽︎`●︎)
ちょっと、感想に返事をしてしまうと、確信を着いてしまいそうなので、控えさせて頂きますね·····。書きだめが無くなるまでは、1日1話ずつ投稿します。引き続き楽しんで頂ければ嬉しいです。(*' ')*, ,)✨ペコリ