この婚約破棄は運命です

朝比奈

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二度目の人生

何度でも君に恋をする(3)

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「もう私に構わないでっ·····」

   クリスティーナからその言葉を聞いた瞬間、僕は“いやだ”と思った。

   何故かは分からない。でも、僕はこの子の手を、離しちゃダメだと、思った。一度離してしまえば、もう本当に振り向いて貰えないと、思った。

   “また”無くしてしまう·····

   でも、どうすれば、なんて言えばクリスティーナが、僕を見てくれるのかが分からなかった。

「あっ·····クリスティーナ·····僕·····」

「とにかく、もう、私に近づかないでよ·····」

「でもっ·····」

「別にっ!·····私じゃなくても良いじゃない·····」

「えっ·····」

   ズキリ、心臓が何かで刺されたように傷んだ。

「私、じゃなくてもっ·····っ、!」

   そう言ったクリスティーナが、僕を見て目を丸くする。·····?  どうして、君がそんなに辛そうな顔をするの·····?

   あれ、なんで、僕·····泣いてるんだろう·····

   なんで、ここまで言われても、クリスティーナと仲良くしたいって思うんだろう·····

   なんで僕、こんなに必死になってるんだろう·····

   ああ。やめてよ、クリスティーナ。今、傷ついているのは僕の方だ。なんで君の方がそんなに·····

「クリスティーナ·····」

──僕がその顔に弱いの知ってるでしょ?

「泣かないでよ·····」

「·····泣いてないわ、·····それに、泣いてるのはフィンセントの方でしょ?」

「そう、だね·····、ごめん。·····でも」

   僕には、君が泣いているように見えたから·····

「·····なに?」

「ううん、なんでもないよ」

   僕はそう言って誤魔化して、涙を拭いた。

「ねえ、クリスティーナ·····、僕、出直してくるよ!」

「へ?」

「やっぱり、クリスティーナと友達になりたいんだ!」

「·····なんで·····」

「うっ、それは·····、分からない·····」

「えっ?」

   分からない·····分からないけど·····、きっと初めてあった時、君の涙を見た、あの時から僕は·····

   僕は·····何だろう·····

「わ、分からないって·····、なら、もう、ほっといてよ·····」

「嫌だ、ほっとけない·····」

「·····意味わからないよ」

「·····うん、僕も」

   僕がそう言って曖昧に微笑むと、クリスティーナも、少しだけ笑った。何だか、疲れているような、諦めたような感じで。

   僕は、初めて見たその笑みに、何だか胸が締め付けられた気がした。

「·····一年に一回くらいなら、いいよ·····遊んでも·····」

   少しだけ頬を染めて、クリスティーナが困ったようにそう言う。

「一年に一回·····」

(少ない·····)

「なに?」

「ううん、なんでもない。ありがとう·····」

   もっと沢山、一緒にいれるように頑張ろう·····。僕はその時、ひっそりとそう心に決めた。


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