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第二次太陽系大戦

第二次太陽系大戦・墟・第320章・物質・α・β・γ・そして

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西暦2099年初頭

月面政府W大統領は太陽エネルギーコントロールシステムが在る

水星への攻撃を開始月面からマナ砲が発射された

次の瞬間エネルギーはワープ装置により空間転移され

水星に光の柱が突き刺さり太陽エネルギーコントロール基地が

水星を覆う表面の氷ごと破壊された

内部から噴き出す熱水が宇宙空間に飛び散る

太陽発電システムからの電力供給が途切れ

たちまち太陽系全域の電力供給が止まり

太陽系中の惑星や衛星は

重力システムが止まり低重力状態で人々は浮き上がり

スペースコロニーでも

重力を発生する回転が止まり無重力状態に

太陽エネルギー伝送装置を使い航行している民間の船舶は

航行不能に陥り衝突や星の重力に引かれ

地上に落下して大惨事を引き起こしていた

火星より外縁の惑星では

電源が切れ気温が一気に下がり

多くの人々が凍死する事態に陥る

火星本星でも電源が切れ

非常用電源に切り替えるまでの間

高速で移動している列車や自動車などが

脱線や自動車同士の衝突で大事故が相次ぎ

航空機などが次々に落下した

日本のコロニーでも被害が出たが

非常用電源に切り替え

被害を最小で食い止めた

そんな中月だけがマナ砲のシステムからのエネルギー供給により

何の被害も無くW大統領は再び日本と火星に降伏を求めた

降伏しなければ次は金星の番だと

それでも日本・火星連合軍は月への進撃を止めなかった

日本も火星もマナ砲についての研究が行われ

金を採掘する時に不純物として出される物質αを

宇宙空間で拡散させるとマナ砲の威力を著しく低下させる事が判明していた

金星の周りに物質αを散布して月のマナ砲の攻撃に対処した

物質αは金星で採掘されていた為

惑星を覆うほど大量に用意出来た

日本艦隊は破壊された水星の太陽エネルギー基地の代わりに

太陽エネルギーコントロールシステムを搭載した船を派遣して

エネルギー供給の再開を急いだ

しかし月のマナ砲は金星ではなく再び水星をマナ砲で攻撃した

前回とは比べ様もない程巨大な穴が開き

熱水が長時間噴き出した

その結果太陽を廻る水星の軌道が外れ出した

更にマナ砲の攻撃で穴が開き更に軌道が変化し

水星は太陽へ向かう

太陽の引力で次第に速度を加速させ

水星が太陽に衝突すると思われた時

更なるマナ砲の砲撃が水星に加えられた

水星は太陽に引き込まれる力を利用して

スイングバイ現象で加速し

更なる砲撃で軌道修正がされて水星は

完全に第一惑星の軌道を外れ

浮遊惑星と化して

高速で金星への衝突コースを取る

宇宙空間にW大統領の高笑いが響く

全太陽系に向け

木星圏と土星圏の衛星は大量の熱水が在りそれを攻撃すれば

全ての衛星を動かして月面政府に従わない者を攻撃出来ると宣言した

マナ砲を防ぐαは火星圏と日本圏に散布され

残りは金星圏と各艦隊の防御用に散布され殆ど残っておらず

木星圏や土星圏のすべての衛星に散布する事は不可能に近い

マナ砲を無力化する物質αは金星が最も多く産出していた

その為月面政府は真っ先に金星の破壊を計画した

その時水星の海ではマナ砲の攻撃の中で中心核近くで潜水艇が生き残っていた

水星表面はマナ砲の攻撃で破壊されていたが

中心部には届かず潜水艇は無傷でいたが

水星の基地が破壊され連絡が取れず司令官以下

何が起きているか分からず混乱していた

司令官は危険を承知で長距離通信が可能な地表近くまで浮上する事を決意

高水圧の深海から地表への急激な浮上は船体の破壊を招く恐れが有り時間を掛け浮上する

【必ず帰るよリサ・・・】

反物質保管庫でサトウは妻の写真に呟く

同僚のスズキはサトウに

<聞いたぞお前病気の嫁さんの為に

今回の仕事を引き受けたんだってな>

【ああ・・・

リサには物質βが必要なんだ】

<重力障害の特効薬か・・・>

【リサは子供の時に宇宙船が遭難して

低重力状態に置かれてしまい

重力障害病になった

治療には金星で採掘される

物質βが在れば

健康な状態で暮らせる

だがその為には・・・】

<引き換えに莫大な金が必要になるか>

【だから俺は莫大な報酬を得られる

反物質を使う技術者に成ったんだ】

<だけど俺達は反物質を使い水星の核の一部に穴を開けて

そこから物質γを取り出す失敗すれば水星を崩壊させてしまう>

【物質γは恒星間航行ワープに必要な物質だ

タイムマシーンや次元移動にも使えるらしい】

<だがそこまでして何故物質γを欲しがる

今の戦争には役に立たないのに>

【この戦いが終わった後に物質γが在れば

次に人類は何をすると思う?】

<他の太陽系に進出するそしてを

まさか・・・>

【そうだ他の太陽系に知的生命体が居れば戦争になる】

<しかし勝てるのか?

負ければ人類は滅亡するぞ>

【俺にも分からない・・・

しかし全太陽系を征服した権力者が

星をも破壊するマナ砲を搭載した恒星間航行用の戦闘艦を

侵略に使いたいと考えるのは歴史が証明している】

<物質γが手に入れば人類の繁栄にも滅亡にも繋がる訳か>

【だけど結局の所木星や土星の衛星の核にも

物質γは無かった水星も同じ構造をしているから 

水星にも物質γは無い可能性が大きい

確実に存在しているのは金星だけだ

それも中心部の核の側だ

採掘は事実上不可能

どうしても欲しいなら

金星を破壊して取り出すしかない】

<ぶっ飛んだ考えだが

俺達のオーナー

月面政府のW大統領ならやりかねないな>

その間にも水星は金星へと急速に接近していた

水星の金星への衝突は

月面政府の宣言と日本と火星の政府により確認され

直ちに金星からの全住民の避難と時を同じく

日本火星連合軍のマナ砲搭載艦を金星宙域への派遣を決定した

水星へのマナ砲の集中砲撃で軌道を変えて金星への衝突を避けようとしたが

月面艦隊の妨害でマナ砲搭載艦は各所で足止めを食っていた

日本と火星は民間企業にも呼び掛けあらゆる船舶が避難民を救助する為に金星へ向かう

金星の地下都市では第1・第2軌道エレベーターに避難する民衆が押し寄せた

大半は金星の地下都市へ流刑にされた元地球連邦市民達

水星が衝突すれば全てが終る恐怖で我先に逃げる事を求める者も居れば

もう二度と金星から出る事が出来ないと諦めていた者達に取り

水星の接近は金星から脱出できる幸運の星に思えた

避難民は着の身着のままで手荷物すら持ち込む事も禁止され

軌道エレベータに乗り込み

最大速度で宇宙港の在る衛星軌道まで上昇する

女性や老人そして金星で生まれた子供達は

エレベーターの高速上昇による荷重で体調不良を起こしていた

金星の雲海の中を浮遊生物が飛び交う中を通り過ぎ

星の輝く世界に飛び出す

そして誰かが叫んだ

『地球だ地球が見える』と

そこには小さく輝く青い星が見えた

涙を流し泣き崩れる

金星生まれの少女は祖父に尋ねる

地球はどんな星なの?

みんなで地球に行って暮らすの?

周りの大人達は答えられない

地球は戦争で環境を破壊して

もう人間が生存出来ない星となったとは

衛星軌道上の宇宙船ドックに到着した避難民は用意された宇宙船に乗り込む

本来の定員の数倍を乗せて宇宙船は金星を離れる

宇宙船のブリッジでは金星に向かう水星をレーダーで捉えていた

動員された避難船ではとても全住民の避難は間に合わないのは誰の目にも明らかだった

輸送船と入れ違いに日本・火星連合軍の宇宙艦隊がすれ違い金星へ向かう

水星の金星圏への到達迄に全住民を軌道エレベーターで

避難させるには余りにも時間が足りず

日本火星連合軍は動員出来る全ての

強襲揚陸艦で直接金星の大気圏に突入した

地上に点在する地下都市入り口に乗り付け多くの住民を収容した

それでも水星が金星に衝突するまでに全住民の避難は不可能

残された手段はマナ砲を使い水星を砲撃して

内部の高圧水を噴出させて再び水星の軌道を変化させる事だけだ

日本火星連合艦隊は全てのマナ砲搭載艦を金星に向かわせた

その行く手に月面艦隊が待ち構え

日本火星連合軍と月面艦隊との間で戦闘が始まろうとしていた

全て計算ずくで行動している月面艦隊は

日本・火星連合艦隊の3倍の艦隊数を用意出来たが

急ぎ艦隊を集結させた日本・火星連合艦隊は

マナ砲艦隊こそ月面艦隊と同数だが

艦隊総数は3分の1

月面艦隊は水星が金星と衝突するまでの間

日本・火星連合艦隊のマナ砲搭載艦を

足止めしてその間に水星を金星に衝突させれば

月の巨大マナ砲の威力を無力化させる

物質αの最大の産出地の金星を消滅させる事が出来れば

もはや月の巨大マナ砲を防ぐ事は不可能になり

全太陽系は月面政府の前に降伏する事になる

古代から地球を影から動かして来た

陰の政府の目的が達成される

だが金星を日本と火星が守るのには他にも理由が在った

金星からはα物質以外に重力障害の難病を回復させるβ物質が取れる

重力鉱石が発見される以前は月や火星がまだ地球の4分の1の状態の時

地球で生まれ育った人類が長期間低重力下の月や火星で暮らすと

宇宙ステーションの無重力下で宇宙飛行士が起こす様々な障害が

月や火星の住民の体と精神に起こり

それを回避するには定期的に人口重力を作れるスペースコロニーで

静養と治療が行われ殆どの住民が回復したが

僅かだが治療の効果が無い者も居た

だが回復後再び低重力下に戻り

再び低重力障害が再発して

スペースコロニーで静養と治療を受けるが

前回より僅かだが回復せず障害が残り

二度と月や火星に戻る事が出来ない住民が増えた

この時までは元々低重力下に適応出来ない者が一定数居ると考えていたが

月や火星での開拓が進むにつれ

スペースコロニーでの治療の効果が無く

低重力障害が残り月や火t井汲星に戻れない者が増え続けた

同じ事は宇宙船や軍艦でも起きていた

多くの船員や軍人などが低重力障害で苦しみ

重力鉱石が発見され低重力の障害者は激減したが

それまでの宇宙開拓で重力障害を起こした者の治療法が見つからず

多くの者が長年苦しんで来た

そして今でも宇宙船が遭難して重力装置が故障して

長時間無重力状態に置かれた者達が

重力障害を発生させるケースが相次いでいた

第一次太陽系大戦後金星に流刑になった地球市民の中に

軽度の重力障害者が鉱山で採掘作業に従事したが

ある時期を境に重力障害が回復したと報告され

調査の結果同じ坑道で働く重力障碍者すべてに回復が見られ

他の坑道で働く重力障碍者に変化が見られず

回復者が働く坑道の鉱石に原因が在るのではと調べた結果

物質βが発見され重力障害を回復させる効果が確認された

重力障害者に取り長年の苦しみから解放された

だが物質βは重力障害を完治させるのではなく

物質βは酸素と反応して分解する時に重力障害者に反応する形で

一時的に重力障害が回復していた

その為重力障害者は絶えず新しい物質βを身に付ける必要があり

そして物質βの採掘精錬には莫大なコストが掛かり

高額で取引され莫大な治療費を必要とした

軍人は軍病院で無料で治療を受けられるが

民間人では富裕層は別だが

一般の市民が入手する為に全財産を失うか

莫大な借金を家族の為に抱えた

水星の海底で潜水艦に乗り込むサトウは

重力障害者の妻の治療に必要な物質βを買う為に

高額な報酬を得られる反物質技術者になった

もしも金星が破壊される事態に陥れば

重力障害者は治療薬物質βを失い重力障害に苦しむ事になる

日本・火星連合軍の中にも多くの重力障害者が居る

そして太陽系開拓の犠牲者である重力障害者を守る為にも

日本・火星連合軍はこの戦いに負ける訳には行かなかった

だがそれは月に本拠地とする月の住民は太陽系で一番開拓の歴史が古く

一番重力障害者を出していたが月面政府のW大統領と側近達は

地球出身で身内には殆ど重力障害者は居ない為

重力障害者に必要なβ物質など眼中に無かった

だが日本・火星連合艦隊を迎撃を命じられた月面艦隊の司令官の心は複雑だった

彼には多くの重力障害者の部下とその家族が居たのだ

月面艦隊の前方に金星に向かう日本・火星連合艦隊が現れた

地球圏と金星圏の中間で戦闘が始まった

月面艦隊と日本・火星連合艦隊が正面から激突した

本来なら圧倒的多数の月面艦隊が有利の筈が

少数の日本・火星連合艦隊に圧倒され

月面艦隊は次第に後退してゆく

日本・火星連合艦隊はマナ砲搭載艦を守る様に

老兵や学生が動かす駆逐艦や巡洋艦が盾となり

残り少ない熟練兵が乗艦する艦隊が月面艦隊の中央を突破する為に

立ちふさがる月面艦隊に対して熟練兵の乗る日本や火星の駆逐艦や巡洋艦は

無謀とも思える攻撃を仕掛け次々に撃沈される

中には体当たりをする艦艇がに月面艦隊は怯み日本・火星艦隊は

マナ砲搭載艦隊を強行突破させる

今までに経験した事も無い恐怖を感じた月面艦隊は

大混乱に陥り逃げ惑い味方同士の衝突が相次ぎ

その隙を突き日本・火星連合艦隊は月面艦隊の中央を突破する

遠ざかる日本・火星連合艦隊に月面艦隊は追撃命令を出すが

機関の故障・武器システム損傷を理由に追撃する艦はいなかった

その様子を見ていた月面政府W大統領は

体当たり攻撃に怯えた臆病者達と罵る

月面艦隊司令官は『やはり大統領は追撃しなかった者達が

体当たり攻撃に怯えただけだと思って居るのか』

<金星を破壊すれば重力障害者の治療に必要な物質βが失われる

この艦隊の誰もがその事を望んでは居ないのを

わが大統領は理解していない様ですな>

副官の言葉に司令官は頷く

日本・火星連合艦は月面艦隊を振り切る事に成功するが

多くの熟練兵を失う

その中には生き残った学徒動員の少年少女達の父親や兄弟達も居た

自分達の未熟さの為に肉親を失った子供達に

予備役で復職した艦長は

【亡くなったお前達の肉親の為にも金星を守り

多くの住民の命を救うのだ

そしてそれは重力障碍者の為の物質βを守る事に繋がる

更にマナ砲の破壊力を無効化にする物質αを守れば

マナ砲による惑星や衛星の攻撃は無くなり

戦争も終わる

我々の行動が太陽系の平和か滅亡かの岐路に立たされている】

この言葉に多くの将兵の心が奮い立たされた

この時点で生き残ったのは当初の艦隊の半数以下

熟練兵の乗る艦隊は僅か1個艦隊のみ

第6・第7・第8艦隊のマナ砲搭載艦を金星に向かわせる事に成功したが

残りの日本・火星連合艦隊は壊滅した

その間にも水星は金星に接近を続けていた

月面政府のW大統領が金星の破壊にこだわるのには

もう一つの目的が在った

それは金星の中心部近くに存在する物質γ

それは光速を超える為に必要な物質

古代遺跡から発掘された宇宙船には

光速を超えワープをする為に必要とされる物質

星が破壊されたと思われる火星と木星の中間に位置する

小惑星帯で初めて発見されたが

既に採掘され尽くした痕跡が在り

古代文明はこの物質γを使い

太陽系を脱出して銀河系に進出したと思われた

これまで木星や土星の衛星は氷の表面と

液体の内部そして頑丈な岩石に覆われた内部に

高温の流体金属が在り

その中に物質γが在ると思われ

調査を行ったがすべて失敗した

最後に残されたのは水星だが

既にW大統領は諦めていた

現在物質γが埋蔵されていると確認されているのは

金星だけだが

通常の採掘方法では採掘は不可能で

その為に金星を破壊してまで物質γを手に入れ

太陽系を支配して銀河系への進出の野望に燃える

月面政府のW大統領は何としてでも

金星の破壊を目指した

その為に重力障害者に必要な物質βが失われる事など

全く眼中に無かった

だがそれが結果としてW大統領にとり大きな誤算となる

多くの犠牲と引き換えに月面艦隊を振り切り

金星に向かうマナ砲を搭載した日本・火星連合艦隊は

避難民を運ぶ宇宙船と遭遇した

定員の10倍もの人々が乗り込み最も近いコロニーへと向かっていたが

それでも金星から避難した住民は全体の3割に過ぎず

水星が金星衝突するまでに避難出来るのは5割が限界

このままでは約半数の住民が金星と運命を共にしてしまう

日本・火星連合艦隊のマナ砲を使い水星の軌道を変える作戦だけが

金星を救う唯一の希望

水星の金星衝突まで24時間を切り

金星圏の全ての宇宙船に退避命令が出された

宇宙港に残っていた最後の民間の旅客船に避難民が殺到した

当初船長は女性と子供達を優先して乗せようとしたが

旅客船のオーナー企業から

莫大な金で旅客船を買い取られたと船長に通告され

避難民の乗船を中止して

金星に進出している

月の企業の社員と家族と金星で採掘した資源を乗せる事になった

今回の避難民の退避の為の避難船の派遣は

民間企業の自主的なボランティアで行われている為に

金星を管轄している日本や火星政府にも口出しが出来なかった

避難民達は今回の水星衝突の原因が月面政府なのに

その月の企業が避難民が乗る筈の旅客船を乗っ取られたと知った

避難民から非難の声が上がった

母親達は子供達だけでも乗せて欲しいと嘆願するが

子供を乗せればその分の鉱物資源を乗せる事が出来なくなると

子供より鉱物資源を選び限界ぎりぎりまで乗せて

最後の船は金星を離れた

この時金星には半数の住民が残されていた

もはや肉眼でもはっきりと認識出来る水星が金星に迫っていた

マナ砲を搭載した日本・火星連合艦隊は水星と金星の中間に到達

水星を射程距離内に捉えると同時にマナ砲を水星に向け発射する体制に入る

マナ砲を無効化する物質αは高速で移動する

水星ではたちまち宇宙空間に四散して効果は低下した

だが水星周辺にはマナ砲を搭載した月面艦隊が護衛に付き

日本・火星連合艦隊に攻撃を開始する

既に日本・火星連合艦隊は前回の月面艦隊との戦いで

熟練の兵士の大半を失い残されたのは老兵と学徒動員の少年少女達

残された熟練の兵士達は敵の前衛艦隊との戦いで全滅

マナ砲が水星を射程距離に到達するまで

老兵と子供達が乗り込む日本・火星連合艦隊が

月面艦隊と正面から衝突する

初めての実戦は戦闘ではなく月面艦隊が一方的に日本・火星艦隊を攻撃する

形で進み日本も火星も艦隊が次々に撃破され若い命が宇宙に散って行く

多くの犠牲を出し遂に水星をマナ砲の射程距離に捉えた

幾つものマナ砲搭載艦からが水星に向け発射された

凄まじい閃光が水星を包んだ

水星の表面にマナ砲が直撃するが

巨大な氷が宇宙空間に飛散するが

内部の高圧の水は出ず

水星の進路を変える推進力は得られず

金星へのコースは変えられなかった

日本・火星艦隊と金星に向け

月面政府W大統領の映像が高笑いと共に送られて来た

既に水星は表面から中心部に向け

内部の半分近くまで月面艦隊の工作船による

氷結材を大量に注入され氷結していた

マナ砲の連続攻撃で水星を破壊しても

水星の破片は軌道を変えずに

巨大な氷の塊が高速で金星を直撃して

金星は破壊されてしまう

もはや打つ手が無いと思われた時

マナ砲により

表面を深く抉られた巨大なクレーターの

氷の下から通信が届く

こちら潜水艇ヴィクトル艇長コルサコフ

我々には水星を破壊しないで

軌道を変える方法が在ると
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