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第二次太陽系大戦

第二次太陽系大戦・墟・第314章・3人の義足

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西暦2098年

北地球連邦軍病院

一人の兵士が入院していた

右足を負傷し失っていた

この時代には脳を除くあらゆる部分の治療に

電子機器によるパーツを作り人体に取り付ける

再生治療が確立し

治療後は健常者と変わらない生活が出来

メガネや補聴器・松葉杖や車イスなどは既に過去の物となっていた

しかし戦場で戦う兵士がそれらの電子機器を取り付けると

敵のレーダーなどに探知されるだけでなく

電子妨害波などで動けなくなる為

兵士がこの治療を受けると二度と前線の任務には付けなくなる

だがそれでは負傷し再生治療を施す程軍は優秀な兵士を失う

それを避ける為軍は電子治療とは別に

クローン技術を使い必要な部分だけを作り出し

再生して取り付ける技術も確立していたが

3Dプリンターを使い大量生産するのと違い

細胞再生治療はオーダーメイドであり

時間と資金が必要で全ての兵士に行う事は不可能で

どちらの治療を行うかは事実上医師の判断が尊重された

前線から3人の足を負傷した兵士が軍病院に送られて来た

一人目の兵士は新兵だが戦意に溢れていたK2等兵

二人目は軍人の家系で士官学校を首席で卒業したY中尉

三人目は歴戦の強者のD軍曹

3人は電子機器の義足ではなく細胞再生治療を望んでいたが

すでにスケジュールがびっしりと埋まっていた為

今この軍病院で細胞再生治療が出来る設備は2つだけで

Y中尉とD軍曹が優先とされた

K2等兵は階級が低いから差別されたと不満を口にする

D軍曹はこれで戦場に戻れると上機嫌だが

Y中尉は再生した細胞との治療手術が近づくに従い元気がなく落ち込み始めた

担当医のBは3人のカルテを見ながら気が付き

それぞれに問い質す

まずD軍曹はすでに兵役年齢を過ぎ

引退していなければならない

そして反射神経のテストはギリギリで合格で

最前線で闘う事は無理だとDを説得するが聞き入れられなかった

そしてK二等兵には何故かKの子供の頃の雑談をするB

気を許し話続けるK二等兵にBは

12歳の時にその事件があったのはおかしい

この時君は15才でなければ経歴書と合わない

沈黙するK二等兵にBは

君はまだ18才以下だね?

年齢を偽って入隊することは軍旗違反だ伝えたが

K二等兵は国を思い戦争を終わらせると熱く語り聞く耳を持たず

どうかこの事はしゃべらないでくれと頼まれ

報告書には書けなかった

翌日D軍曹の治療が完了しその足で前線へと向かう

Y中尉の再生治療手術の前々夜何者かがY中尉の細胞が入った設備が破壊された

当初再生治療が後回しにされたK二等兵が疑われたが

Dは内部調査でY中尉の細胞培養がもうすぐ終わりその跡は

K二等兵の細胞培養が始まるのにこの時期に破壊するのはおかしいと証言

捜査は暗証に乗り上げるがBはひとつの提案をした

BはY中尉に設備は壊されたが幸いにも修理が完了して細胞は無事だと伝えた

その夜細胞再生設備に侵入したY中尉が逮捕された

壊されたのは間違いなくY中尉の物だったが

普通自分の治療が近づく程落ち込むY中尉の姿を見ていた

BにはY中尉は細胞再生治療を望んでいないのではないかと考えていた

何よりY中尉の左腕のリストカットの跡をカルテで見てから

より深く思っていた

Y中尉は軍人の家系に生まれただけで

軍人になり戦場に送られたことが嫌で堪らず

右足を自分で傷付けた

二度と戦場に行かない様に電子機器による治療を希望したが

厳格な父親の圧力で細胞治療が行われた

Bは主治医としての権限で

Y中尉の治療を電子治療に切り替える

父親の権限で除隊が出来なくとも電子機器を取り付けた体では

前線に行く事はもう無いと伝えると

Y中尉は泣き崩れた

翌日前線から全身を負傷した重傷者が1名軍病院に送られて来た

退院したばかりのD軍曹だった

カルテを見ているBにD軍曹は

≪やっぱり先生の言う通り引退すべきだった

からだが付いて行かずへまをしちまったよ・・・≫

その夜D軍曹は亡くなった

Bはあの時自分にはもっと何かで来たのでは無いかと考えたが

すでに手遅れ

しかし彼は気が付いた

まだ出来る事が在ると

翌日K二等兵はBの報告で年齢を偽り軍に入隊したことが発覚

除隊処分となるK二等兵はBに対して

【よくもしゃべったな一生うらんでやる】

そう叫びながら連行された

それを聞きながらBは呟く

『長い一生よーく恨んでくれ』
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