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戦後編そして

戦後編そして・霧・第299章・金星圏からふるさと地球への帰還そして

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西暦2097年

金星圏

地球連邦の独立により金星の地下収容施設に収容されていた

地球連邦市民は釈放され地球圏に戻る事が決定された

歓喜に沸き涙ぐむ市民達

迎えの輸送船に乗り込むべく

荷造りに取り掛かるが

一部の市民は金星から離れる事は出来なかった

生まれ育ったコロニーが失われたり

居住不可能なまでに大破したコロニー出身者や

家族が病気やケガで入院していたり

高齢となりもはや故郷のコロニーに家族も知人も無く

この金星で余生を過ごす事を決めた者達

そしてそうした彼らを支えるべく

医師や看護婦・老人施設・など地域に必要な

最低限必要な者達が金星に残る事を決めた

大多数の者が居なくなり

食料や物資の不足問題は解決された

だが金星を去り地球圏に戻る者達の先行きは

決して明るくは無かった

地球連邦は分裂した形で独立し

特に北地球連邦と西地球連邦は特に仲が悪く

地球圏に帰還する者達の間で

将来戦争に発展する可能性について

話し合われたが

だからと言って地球健への帰還を諦める事は出来ない

それが大多数の意見だった

父親と母親そして祖父をこの金星で亡くした兄弟

兄のアベルと弟のトーマスは

墓参りをして地球圏へ還る事を報告した

辛く苦しい思いでしかないこの金星での暮らしも

いざ旅立つとなると郷愁で胸がつかえた

アベルとトーマスの故郷のコロニーは失われていたが

二人の妻達の故郷に行くことになり

地球圏ではそれぞれ北地球連邦と西地球連邦に

別れて暮らす事になる

軌道エレベーターに乗り

浮遊生命体のエリアを抜け

地上近くになると眩い輝きが二人を照らす

数年ぶりの太陽の光に二人は興奮した

ここに来たばかりの時に絶望の中で見た

太陽の光とは違い今自分達が見ている

光は希望に満ちていた

プラットホームに着くと

迎えの輸送船が来ていた

北地球連邦行と西地球連邦行の輸送船が

アベルとトーマスの二人はここで別れる事を

実感して無言で固い握手をして別れた

輸送船は地球に還る市民を乗せて飛び立つ

金星に残る人達が手を振る様子を

輸送船のラウンジからアベルは見つめ

次第に遠くなる金星を見ながら

地球に帰れる思い以上に

金星に残してきた家族を思い涙していた

その時もう一隻の輸送船が

アベルが乗る輸送船の横を通り過ぎて行くが

その輸送船の窓で手を振る人影に気が付いた

弟のトーマスとその妻だった

アベルと妻も手を振り返した

互いの輸送船が離れ見えなくなるまで

そして輸送船地球を目指し航海を続ける

地球圏に到着する前日赤道祭が開かれた

目の前に食べきれない程の豪華な食べ物と酒が振舞われた

食糧難にあえいでいたアベル達に取りまるで夢の様な一日だった

翌日早朝にも関わらず輸送船は歓声に包まれていた

アベルは妻に起こされ眠い目を開けるとそこには

青く輝く星が目に映った

地球・・・

何度夢に見たか分からない程帰りたいと思い続けた

地球にアベルは還って来た

だがこれから苦難の道が待ち構えているとはこの時

アベルは思いもしなかった
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