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第一次太陽系大戦

第一次太陽系大戦・壺・第226章・太平の夢破れ

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2086年1月1日午前零時

地球圏の各コロニーは照明を落とし

暗闇の中爆竹を鳴らしハッピーニューイヤーを祝った

照明は1分ほどで明かりがつく筈が

何時まで経っても灯りはつかず

やがて体が浮き出した

回転する事で重力を発生するスペースコロニーが

電源を失い回転が遅くなり重力が弱くなった事を

悟った住民はパニックに陥り

建物の外に飛び出したが

空に吸い込まれる様に浮かび上がるだけで

パニックは益々大きくなる

コロニーの管理部署では動力の復旧を試みるも

補助動力システムへのアクセスも遮断され

手の打ち様が無くなり

呆然と外見ていた職員から

隣のコロニーが近づいている

衝突すると悲鳴のような声で叫び声を上げる

2つのコロニーは緩やかな回転をしながら

一部分が火花を上げて接触し

やがて互いのコロニーの側面が完全にぶつかり

内部の空気が宇宙空間に流れ出し

火花と空気が混ざり合い

大爆発を起こしコロニー内に炎が充満し

二次火災を起こしコロニーは住民もろとも

大爆発を起こした

その破片は他のコロニーの外壁を破壊し

巨大な穴が居たコロニーからは

流出する空気と共に住人が宇宙空間に放り出され

さらに流出する空気が無重力化の巨大なコロニーを少しずつ動かし

第二第三の衝突を引き起こした

数時間後動力が復旧した時

地球圏のコロニーの1割と3億の人命が失われていた

当初地球圏のラグランジュ・ポイントに設置された

太陽電池パネルの故障か中継基地の故障と思われたが

故障も破壊もされておらず

突如地球圏のコロニーの電源がシャットダウンしたのは

地球圏のコロニーの電力を管理しているサーバーに

トロイの木馬型のAIウィルスが感染した結果と判明

そしてAIウィルスは誰かが物理的にサーバーに持ち込んだのではなく

太陽系中の宇宙船の航行と宇宙都市に必要なエネルギーを供給する為の

エネルギー・ネットワークを利用していた

AIウィルスを感染させた

ネットワークを遡り調べた結果

AIウィルスを送り込んだのは日本圏と判明した

指摘された日本連邦政府は政府の関与を全面否定したが

地球圏のコロニーでは真相究明を求め

大規模なデモが起こり
 
一部は暴徒化し日本圏系の企業の破壊が行われた

日本圏系企業のCEOがカメラの前で白人主義者に襲われた

CEOはアフリカーナ系日本人で

50年前差別の激しい地球圏からの移民者で

彼自身は人種の融和を唱えていたが

彼の死により皮肉にも日本圏に在る地球圏の企業に対するデモが

アフリカーナ系を中心に行われ暴徒化し

犠牲者が出る事態となり

容疑者の引き渡しを求める地球連邦政府と拒絶する日本連邦政府の話し合いは決裂

ついに地球連邦政府は日本連邦政府に宇宙艦隊の派遣を決定する

地球連邦政府は全宇宙艦隊の集結を命令する

2086年1月30年に及ぶ平和は崩れ去ろうとしていた
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