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戦後編・選択の時代

戦後編・選択の時代・参・第158章・核兵器もう一つの歴史・

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すでにAD1945から1世紀が過ぎ

連邦軍参謀本部は

火星のネオ・チャイナが

核兵器を越える破壊力を持つ

『反物質爆弾』の研究に着手したとの情報を入手

連邦軍も『反物質』の研究者を招集した

研究者達からは

異論が噴出した

過去の原子爆弾の開発が

ナチスドイツの核爆弾開発に

対抗する形で始められたが

実際にはドイツの原爆開発は無く

米国の思い込みによる

核開発はその後の技術流出を防ぐ事が出来ず

全世界に核兵器が拡散

第三次世界大戦を引き起こし

数億人が犠牲となり

放射能汚染の拡大は

人類の生存を許さず

宇宙移民の原因となった

科学者達からは

火星との戦争に備え

在りもしない脅威をあおり

原爆開発時の二の舞を演じるなど

受け入れられないと

日本人科学者が強く抗議し

大半の科学者がその意見に賛同した

どうしてもと言うなら

納得出来る証拠の提示を

科学者達は求めた

軍首脳は顔を見合わせ

1世紀に渡り極秘とされてきた

反物質と核爆弾開発の話を始めた

『1945年に最初の核実験が行なわれ

広島と長崎に航空機から

核爆弾が投下され

始めて実戦に使用された

此処までは誰もが知る事だが

真実は違う』

「どう言う事ですか?」

《一体何が違うんです?》

科学者達から何を言っていると

我々を騙すつもりかと罵声を浴びせられるが

軍高官は続けて

『1945年時点で米軍は

巨大な工場施設の大きさの

核爆弾しか作れなかった』

科学者達は

何を言っているといった調子で

《あの記録映画の核爆弾は何なのだ?》

軍高官は両手を合わせあごを乗せ言い放つ

『航空機に載せる原爆開発に成功したと思わせる

つじつまを合わせる為の演出だ』

「演出って出来ていなかったのか

航空機に搭載する大きさの原爆が?」

《そんな筈は無い広島と長崎に落としたじゃないか

あれは一体なんだ?》

しばらく軍高官達が小声で何かを話し

『あれはナチス・ドイツの高官達の

海外逃亡を見逃す事と引き換えに

入手した物だ』

「ナチスが原爆開発に成功していたのか?」

《確かに当時のドイツの科学力は

20年以上進んでいた

だが原爆の開発には

多くの科学者が関わる必要が在る

何故今まで表に出なかったんだ

納得できん

本当の話か?》

軍高官は淡々と話を続ける

『その2つの核爆弾さえ

ナチスドイツが造った物ではない』

科学者達は怒りを通り越し呆れた様に

《いい加減にしてくれ

おとぎ話を聞きに来たんじゃ無い》

『ここからは本当に

おとぎ話に聞こえるかも知れん

広島と長崎に投下された原爆は

紀元前に製作された物だ』

ため息をつき

《もういい

我々はオカルト・マニアではない

呼ぶべきゲストを間違えている》

もう誰も軍の説明を聞こうとする者は居なかった

「帰るか・・・」

《景気直しに酒場にでも寄るか》

(そうするか)

科学者達が帰る為に立ち上がると

『話を最後まで聞け

歴史は教科書に書いてある事が

全てではない

これから話す事は

歴史の常識など捨てて聞いて欲しい』

軍関係者の真剣さに科学者達は

《時系列で話してくれ

初めて聞く者にも分かる様に》

スライドが映し出され

画像は古く傷とノイズだらけだが

科学者達はじっと画面に見入る

『事の始まりは紀元前より

南極に在った古代遺跡での発見だ

そこは南極の氷の下に存在していた

だが地熱により天井部分を残し

氷は溶け天井の氷を通して降り注ぐ

太陽光で地上には植物が生え

淡水の湖も存在し未確認だが

動物の鳴き声もしていた

一種の温室状態で

南極が凍りに閉ざされる前の

太古の状態を維持していた

そしてその古代遺跡は

階段の段差や部屋の扉

室内のテーブルやイスなどの大きさから

巨人族が残した遺跡だと判明した』

《それで巨人族は発見されたんですか?》

『埋葬された遺体だけで

それも新しいのでさえ5千年前のものだ』

「ではこの遺跡は放棄されてから

既に5千年が経っている事は

理解出来ましたが

どうしてそれが

原子爆弾に繋がるんですか?」

『遺跡と聞いて君達は

巨石で作られた神殿をイメージするだろうが

この遺跡は外見は確かに石作りだが

入り口の扉は金属でも石でもない

材質はセラミックスに近く

僅かに横にスライドをする形で

人一人通れるだけの幅で開いていた

中に入ると驚く事に

明かりが灯されていた

たいまつなどの火ではなく

科学的なライトだった

後に判明するが電源は

衛星軌道上の正体不明の

黒い衛星から供給されていた』

《それは21世紀の技術では・・・》

『奥に進む途中通路には

当時の人間には理解不能な

機械が透明なケースに入れられて

巨人族が使っていた文字が

書かれていた』

《一体何と書かれていたんです》

『蒸気機関』

《まさか・・・》

『その隣には

蒸気機関の車

ガスタービンエンジン

航空機用エンジン

ガソリンエンジンで動く

あらゆる種類の車

無線・機械式計算機

ラジオ・TV

船舶・潜水艦・戦車

ロケット・月着陸船に見える乗り物も

そして原子力機関

現代文明に繋がる

ありとあらゆる物が在った』

「5千年前ですよね?」

《まるで博物館だな・・・》

『その通りこの建物全体が

巨人族文明の博物館だ』

「原子力機関が有ると言う事は」

『そうだこの遺跡は当初

世界を牛耳ると言われる

ビック3が密かに管理していたが

第二次世界大戦中

占領下欧州の

ビック3からこの遺跡の

話を聞いた

ナチス・ドイツと同盟国が

遺跡の奥深くに隠されていた

4つの爆弾を発見した

ウラン爆弾

プルトニュウム爆弾

重水素爆弾

そして反物質爆弾だ』

「その話が本当だとすると

なぜ1945年8月9日から

1949年の8月29日の4年間

核実験が一切行われなかったか

うなずける」

《4年間の間に古代の科学力を

元に米国は原爆や水爆の小型化に成功させた

しかしその技術の流出を防げず

ソビエト連邦に核技術が渡り

冷戦が始まる

ソビエト連邦の崩壊で一時的に

第三次世界大戦の危機は遠退いたが

結局世界中に拡散した核兵器で

第三次世界大戦は行われ

人類は汚染された地球から追われ

宇宙に移民をせざるを得なくなった

1945年に核兵器開発を封印していれば

この悲劇は起きなかったのでは?》

『1945年8月12日に日本軍が

イ400型潜水艦に搭載して

日本海行なった

核実験さえ行われなければ

核兵器はあの3回で終わっていた』

《ばかな米国やドイツさえ作れなかった

艦船に搭載できる小型核兵器を製造して

核実験が行われたと?》

『ナチスドイツが古代遺跡を

調査した時に同盟国として

日本の2人の科学者が同行していた

彼らは日本が行なっていた

核兵器開発の中心人物で

当時日本の核兵器開発は

壁に突き当たり

研究は先に進めなかったが

この遺跡に同行した事により

核兵器開発の壁を乗り越え

朝鮮半島北部の研究所で

1945年8には核兵器を完成させた

日本軍の移動可能な小型の

核開発を知った米国は

日本軍の核兵器完成前に

日本に核攻撃を行い

早期に日本を降伏させる事を計画

7月16日に史上初の核実験を

ニューメキシコで行い

古代文明の核兵器2発を

広島と長崎に投下した

だが日本軍はついに

日本海上で核実験を行った』

《そんなばかな》

「いくら何でも日本が・・・」

『1945年に全ての都市が破壊されたのに

20年後には世界第二位の経済大国に

なった日本なら

少しも不思議とは思わないが

問題なのは日本軍による核実験を前に

もう一隻のイ400型潜水艦に

核兵器が搭載され

サンフランシスコに向け出港していた

8月中旬には目標に到達する

我々は日本政府に対して

サンフランシスコを核攻撃

すれば日本全土の都市を

核攻撃すると警告

東京には10発の核爆弾を投下すると宣告

もちろん嘘だが

既に2回の核攻撃を受けていた

日本軍は作戦中止を命令するが

イ400型潜水艦の艦長には前もって

中止命令は全て拒否する様に命令していた

もはや誰にも止められない筈だったが

日本は最後の切り札として

8月15日に早期に終戦を行った

その知らせはイ400型潜水艦にも届いた

カウント10秒前で核攻撃は中止され

サンフランシスコ沖に浮上

白旗を上げ米軍に降伏した

日本製の核爆弾は

それまでの3発の核爆弾に比べ

10倍の破壊力を持っていた』

「だがそれでも

核兵器開発は封印で来たのでは?」

『確かに我々もそう考えたが

ソビエト連邦軍が

日本軍の核研究所が在る

朝鮮半島北部を占領するまでは

日本軍は朝鮮半島に侵攻して来る

ソビエト軍の侵攻の速さに

研究者達関係者を連れ出し

研究資料を持ち出すしか出来ず

研究施設やウラン鉱はそのままにされた

さすがにソビエト連邦でも

残された設備だけでは

直ぐに核爆弾は製造出来なかったが

着々と核開発を進めていた

我々は核開発を進めるしかなかった

日本人技術者の道案内で

古代遺跡に向かったが

すでに水素爆弾は

ソビエト連邦占領下の

旧ナチスドイツの軍人達に

導かれすでに持ち去られていた

そしてついに1949年8月29日

ソビエト連邦は核実験を行った

そして水爆の研究を同時進行で

行なっている事は確かで

米軍は水素爆弾の研究を進め

米軍は1952年

ソビエト連邦は1953年に

開発に成功

その後核兵器は英国中国に拡散

遂に全世界に拡散した

第三次世界大戦後

古代遺跡に赴いたが

そこにはネオチャイナが居た

戦闘の末古代遺跡は

核爆弾により破壊された

その後

破壊された遺跡を調べた結果

反物質爆弾を収められたカプセルは

開封されている事が確認された

反物質爆弾は1発で星を破壊する

このまま火星のネオチャイナが

量産に成功すれば我々は

いやあの1発だけでも

地球を破壊出来る

そして破壊された地球の破片は

月やスペースコロニー

全てを巻き込み全滅する

それでも君達は

反物質の研究を断るのかね?』

一人の科学者が立ち上がり

《私は協力しよう》

(私も)

次々に立ち上がる科学者達

だが日本人科学者は最後まで

強力を申し出なかった

《おい

お前は反物質研究者の最高峰じゃないか

お間が居なければ研究は

十年は遅れる》

「悪いが反物質爆弾が量産され

全面戦争になれば

太陽系は全て破壊される

俺には出来ん」

他の科学者達は連邦軍の案内で

連邦軍が用意したエア・シャトルに乗り込み

研究施設へと飛び立つ

宇宙港で彼らを一人見送る

だがエア・シャトルは

上空で爆発した

「みんな・・・どうして?」

滑走路を猛スピードで逃げる車を

空港ポリスが追いかける

追いつかれ逃走車は自爆した

何が起こっているのか分らず

混乱している日本人科学者に

先程の連邦軍高官は

『ネオ・チャイナの破壊工作員の

仕業だ

これで連邦軍の研究続行は

絶望的になったよ・・・』

日本人科学者の胸の内に

何かがこみ上げ

「いえまだ私がいます

必ず完成して見せます

彼らの為にも」

『いいのかね?』

「ええ

たとえ太陽系の破壊者と呼ばれても」
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