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親衛隊パニック!

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◇◇◇

「それじゃあ同室者でただのお友達、ということだね?」
「う~ん、そうですねぇ。ただの友達っていうとちょっと寂しいですが──」

玄関につながる廊下を歩きながら、さっきされた質問に答える。

コッチをジって見てくる弥尋先輩が可愛くて癒される。
身長差があるから必然的に上目づかいになるんだよね!

機嫌よくにこにこしながら眺めてると、弥尋先輩の向こう側にいる副隊長さんが手帳にメモ取ってるのが見えた。

「不良が同室者で今は友達…っと」

手帳にしてはけっこう分厚い。

なに書いてるんだろ?
気になるから聞いてみよっと♪

「副隊長さん、ソレなに書いてるんですかぁ?」
「いえ、たいしたことはなにも」

あ、聞いた瞬間ものすごい速さで手帳閉じられちゃった。

ジャマしちゃったかな?
でも気になっちゃったんだよねぇ。

「揚羽君、いつものことだから気にしないで」
「はい、気にしないでください」
「ん~、わかりましたぁ」

ふたりにそう言われてうなづく。

しかたないよね、ジャマしちゃったりイヤがられるのはヤだもん。

「そんなことより、揚羽君の下駄箱はどこ? 僕、くつを──」

ソコまで言って弥尋先輩が立ちどまる。

どうしたんだろ?

そう思って弥尋先輩の視線を追って前を見ると──

『お疲れさまですっ、みつ様!』

ソコには、ズラリと並んだ男の子たちがいた。

う~ん、デジャブ。

「えっとぉ~、親衛隊の子たちじゃない…ですよね?」
「そうですね、違います」

すこしも表情を変えないまま淡々と言う副隊長さん。
クールだ。

「じゃあ、あの子たちは──「ボクたち、みつサマのファンクラブです!」

元気な声が俺の疑問に答える。

でも、あれ? 
この声、どっかで聞いた気が…

「あっ、食堂の!」

ウェイターさんとぶつかった子だっ!

「お久しぶりです、みつサマ♪」
「あぁ、お久しぶりで──「喋らなくていいよ、揚羽くん!」

あ~、なんか今日、遮られるの多いなぁ。

「弥尋先輩、急にどうしたんですか?」
「ファンクラブは親衛隊とは違って非公認だから好き勝手するんだ。そんなやつらと関わらないほうがいいよ!」

弥尋先輩からピリピリとした空気を感じる。

コレ、ヤバい状況?

「そんな言いかたないだろ? まだなにもしてないし、今日は挨拶に来ただけだし」

ちょっと焦ってたら、食堂の子が一歩前に出た。

よかった、あっちは冷静みたい。

「それ本当? 全っ然信用できない! てか、お前がリーダーって時点で信用できないっ!」
「ちょっ! なんだよ、それ!」

うわぁ~、あっちも怒っちゃったよぉ。

てか弥尋先輩、言葉づかいぜんぜん違うんですけど…
もしかしてコッチが素?

「信用できないってなんだよ?!」
「秘密だよって言ってもバラしたりするじゃん!」
「秘密…って、あぁ! 小3までおねしょしてたとか?」
「だからなんで言うんだよ! 本当信じらんないっ!」

秘密をバラされて、弥尋先輩は顔を真っ赤にして怒り心頭って感じ。

どうしよう、止めたほうがいいんだろうけどあいだに入れない;

「弥尋は小3までおねしょしてた…っと」

って、副隊長さん!
なに冷静にメモしてるんですか!?

「ちょっと! なにメモしてんの!」

ほぉら、言われちゃった。

「いえ、貴重な情報だったので」
「今すぐ消して!…とにかく、ファンクラブなんて認めないからっ! 揚羽君にも近づかないで!!」
「なんでそんなこと言うんだよ!」
「害でしかないからだよ!」
「なんだよ、みつサマの靴箱が汚れてたのも気づかなかったくせにっ!」
「「え?」」

ファンクラブの人たち知ってたんだ。
あ、もしかして──

「掃除してくれたのって、ファンクラブの人たちですか?」
「は、はいっ」

やっぱり、ソレなら納得だもん。

「みつ様、僕にんにく片づけました!」
「ボクはファブ○ーズしましたっ」
「俺は靴のサイズを調べました!!」
「ボクはニラを…」
「オレは靴を──」

みんなつぎつぎに言ってく。

すごい勢い、元気だなぁ。
見てると楽しいや。

ひとりひとり聞いてくと、ほとんどの人がしてくれたってわかった。
できなかった人は部活とかだったみたいで悔しがってる。

そんな悔しがるコトないよ、その気持ちが嬉しい。

「みなさん、ありがとうございます」

嬉しくて、満面の笑みを浮かべてお礼をいう。

ホント嬉しいんだぁ。
だってあんな臭かった下駄箱をみんなで掃除してくれたんだよ?

弥尋先輩はあぁいったけど…
なんだ、いい人たちじゃん。

「おい、みつ」

感動してたら、空気と化してた響介に話しかけられた。

「なに」

あ、コレさっきと同じ流れじゃない?

「下駄箱の前で固まってたら──「ジャマだって言うんでしょ?」
「み、みつ君;」

あ、ひなたちゃんが焦ってる。

大丈夫、いつものコトだよ。
そう気持ちをこめてほほ笑みかける。

響介はこんなん慣れっこだからね!
むしろ喜んでるんじゃない?

「みつ、宮部君がウザいこと言うし、もう俺とふたりっきりで帰ろうよ」

丞が後ろから抱きつきながらいった。

あぁ、癒される…

まぁジャマになるし、帰りたいのは山々なんだけどねぇ。

「でも弥尋先輩たちを置いてくのは──」

チラリと、弥尋先輩たちのほうを見る。

「馴れ馴れしくみつ様なんて呼んじゃって!」
「なんて呼ぶかなんて勝手だろ?! みつサマは嫌がってないんだからさ!」

うん、置いてけないね。
落ちつくどころか激しくなってる気ぃするし。

「あんな状況だし、置いてけな──「大丈夫です」
「わっ、副隊長さん!」

急に横から出てくるからビックリしたよ;

「大丈夫って、あの状況で?」
「はい」
「ホントに?」

だって手ぇこそ出してないけど、ものすっごく険悪だよ?
コレ以上ないってくらいだよ?

「大丈夫です」
「わっ! だ、ダレ?!」

今度は反対側から急に人が出てきてビックリする。

し、心臓に悪い…
気配なかったよ、ふたりとも;

気配出してこうよ!

「失礼しました。ボクはファンクラブの副リーダーです。以後、お見知りおきを…」
「はぁ…ご丁寧にどうも──って、なにが大丈夫なんですか?」

ただ大丈夫っていわれただけじゃ心配で帰れないよ!

「あのふたりは、家族ぐるみで付き合いのある幼なじみなんです」
「ケンカするほど仲がいいというやつです。安心してください」
「でも──「ボクも残りますし、大丈夫です」
「一緒に帰りましょう」

ココまでいうなら大丈夫…だよね?

一緒に帰るっていった弥尋先輩を置いてくのは忍びないけどしかたない。

「じゃあ、先に帰らせてもらいますね? あとはお願いします」
「はい、任せてください」

うん、頼もしい返事。

よし! 
帰るって決めたんだからさっさと帰ろっと。

「丞、ひなたちゃん、帰ろぉ~♪ 副隊長さんも一緒…だよね?」
「はい、ご一緒させていただきます」

チラリとうかがう俺に、無表情のままうなづく副隊長さん。
やっぱりクールだ。

「やった! じゃあ、一緒に帰りましょ♪ 俺、急いで靴変えてきます!」
「みつ、待って」
「はぁ~…みつ、待てって。ひなた、早く来ないと置いてかれるぞ」
「あ、待って!」

急いで靴を履きかえて玄関に向かう。

『みつ様、一日お疲れ様でした!』
『また明日、お会いできるのを楽しみにしてます!』
「ありがとうございます」

お礼を言うと、みんな嬉しそうに笑ってくれた。
可愛いなぁ~。

「みつー?」
「あ、今行くー! では、また明日♪」

可愛い笑顔にほんわかしてたら呼ばれちゃった;

俺は元気よく送りだしてくれたファンクラブの人たちに手を振って、弥尋先輩たちのケンカをBGMに先にいってたみんなのトコまで走る。

「お待たせ!」

つぎはあの子たちとも帰れるといいな。




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