24 / 24
第九章~②
しおりを挟む
突然の爆弾発言に思わず英美は顔を上げ、彼を見た後二人の表情を伺った。固まっていた古瀬の顔はみるみる内に赤らみ、激怒している様子だった。
逆に悠里の顔は、真っ青に変化していく。それを見てハッとした。先に口を開いたのは古瀬だった。
「何を馬鹿な事を言うんだ! 人の嫁を殺人犯扱いするなんて。いつからお前はそういう目で、悠里の事を見ていたんだよ! 最近週に一回は事務所に来てくれて話もしていたようだが、その度に人殺しかもしれないと思って喋っていたのかよ!」
個室とはいえ他の客がいる為、抑え気味の声だったが物凄い剣幕だった。浦里の胸倉を、掴みかからんばかりの勢いだ。しかしそうなることを予期していたのか、浦里は怯まず真っすぐな力強い目で彼を睨み返しながら言った。
「廻間さんが三箇さんの態度がおかしいと感じ始めた少し前から、俺は悠里さんを疑い出していた。彼がこれ以上の調査を止めようと言い出したのは、美島支社長に菓子を食べさせた人物が、ごく身近にいる人だと気付いたからじゃないかと思ったんだ」
聞き捨てならない話に、英美が尋ねた。
「どういう意味? 三箇さんは悠里さんが犯人かもしれないと思っていたって事? そんな話、今まで聞いていないわよ」
「言っていないからね。以前、悠里さんへの聞き取りは俺がするって話をしていただろ。だから古瀬さんの事務所を訪問する度に、彼女から聞き取りをしていたんだ」
そう言えばそんな事を言っていた気がする。だが四人で情報を共有しているサイトに、彼女から得た情報は書かれていなかったはずだ。しかしそれは彼女が話したがらないと事前に聞いていたので、余り期待していなかった。その為すっかり忘れていた。
古瀬が再び、怒気をはらんだ声を出した。
「おい! 何を勝手な事をしているんだ! 悠里が何を言ったんだ! 俺はそんな話、聞いていないぞ!」
「本当に聞いていないのか? 俺が何を質問してきたか、悠里さんは古瀬さんに何も話していないのか?」
浦里の問いに古瀬は首を縦に振って、悠里の方を見た。
「おい、何を聞かれたんだ? そんな話はしてなかっただろ。どういうことだ?」
彼女は俯いたまま、何も話そうとしなかった。その様子に古瀬も不安を感じたようだ。
「おい、何とか言えよ。嘘だろ? 美島支社長の机に菓子を置いてなんかいないよな? ただの言いがかりだろ? 第一、そんな事をする動機がないよな? そうだろ?」
古瀬の狼狽ぶりからすると、本当に何も知らないようだ。しかし彼が言うように悠里が犯人だとしたら、何故そんなことをしたのかと考えた時、英美はある可能性に気付いた。
「もしかして悠里さんも柴山さんと同じように、美島支社長からパワハラを受けていたってこと?」
英美の質問に悠里は体をビクリとさせ、古瀬の目が丸くなった。言葉を省略したが、反応を見る限り彼女はセクハラ被害も受けていたようだと確信する。
どうやら浦里は、その事に気付いていたらしい。
「悠里さんも、柴山さんが亡くなる前から警察で事情聴取を受けていたと思いますが、聞かれたはずです。でも言わなかったようですね。俺も同じ質問をしましたが、あなたは否定した。でも他の方の証言では、そうかもしれないと思っていた人がいました。警察もその点を疑っていたと思います。現に私もあなたの反応を見て、そう感じましたから。ただデリケートな話なので、古瀬さんも見ているサイトには書き込まなかった。だからこの事を、三箇さんだけに話しました」
「だから柴山さんが亡くなった後、三箇さんは古瀬さんや悠里さんを守ろうと、私達にこれ以上調べることを止めさせた。浦里さんはそう考えていたのね」
「ああ。でも廻間さんの推理の方が正しかったのかもしれない。または両方だった可能性もある。しかし三箇さんが逮捕されたのなら、これ以上俺だけ黙っている訳にはいかないから言わせてもらった」
「でも悠里さんはどうやって、柴山さんがウィルス入りの菓子を持っているなんて知ったの? そうじゃなければ、美島支社長の机の上に置いたりできないじゃない」
英美の疑問に、彼は答えた。
「恐らく悠里さんは、柴山さんの様子がおかしい事に気付いていたんじゃないかな。隆さんの証言によると、菓子を持ち込んだことは確かだけど、実行する際に彼女は躊躇していたらしいね。だからメールでやり取りをした、と証言している。悠里さんはそのメールをこっそり覗き見したんじゃないのかな。だから柴山さん達が仕込んだ菓子を盗んで、美島支社長が食べるよう仕向けた。以前古瀬さんが言っていたよね。悠里さんは、絶対携帯を覗いたりしないって。そんなことをしても良いことが無いから、というのが理由だと聞いた。それは十年前の事があったからじゃないのかな」
浦里に尋ねられた彼女は、突然何も言わず持っていたバックを持って立ち上がった。そして個室から出て行ったのだ。その後を、古瀬が慌てて追いかけていった。
ぽつんと残された英美達は、気まずい空気のままテーブルの上に残っていた食べ物や飲み物を口にし、ある程度片付けてから店を出ることにした。浦里の送別会だと言うのに、会計は折半で払うことになり、申し訳ない気持ちになりながら英美は店を出た。
もう四月だと言うのに、夜の風はまだ冷たい。暗い夜道に出て周りを見渡す。するとどこかで桜が咲いているのか、花びらがちらりと舞って足元に落ちた。英美は視線を戻し、古瀬は悠里に追いつくことができたのだろうか、ともう一度辺りを目で追った。
しかし二人の姿は、どこにも見当たらない。ここから帰るには、最寄りの駅から地下鉄に乗るはずだ。ならばその周辺にまだいるかもしれない。それはそれで困った。
英美も同じ駅から電車に乗る為、途中で彼らと会う可能性がある。あんな状況で別れた手前、顔を会わせればお互い気まずい。それでもやむを得ず駅に向かって歩いた。すると歩いて数分程度で帰ることができるはずの浦里が気遣ってくれたのか、声をかけてくれた。
「送るよ」
彼の言葉に内心はホッとしつつ、無言で頷く。なぜなら二人で歩く道中、何を話せばいいものかと悩んだからだ。これで彼とはお別れだというのに、最悪の結末を迎えた。
加えて明後日から、古瀬や悠里とどう話せばいいのか。それより彼らは、今後どうするつもりなのだろう。想像するだけで頭が痛くなる。そんな気持ちが伝わったのか、浦里が言った。
「申し訳ない。俺はもう彼らと会わないで済むけど、廻間さんはそうじゃないんだよな」
頷きそうになったが、英美は首を振った。
「ううん。私が三箇さんのことを話したせいで、こういう風になったんだから。悪いのは私。こっちこそごめん。最後の送別会がこんな風になっちゃって」
「送別会はどうでもいいんだ。悠里さんのことだって、決着をつけるのなら今日しかない、と俺が無理を言って呼んだのだから、廻間さんのせいじゃない」
「じゃあ浦里さんは最初から、こういう展開になることも覚悟していたの?」
「ああ。だけどギリギリまで迷っていたのは確かだ。でも廻間さんの話を聞いて、やっぱり言わなきゃいけないって思った」
「言ってどう思った? 後悔している?」
「少しだけかな。もっと上手い言い方があったんじゃないかって、反省している。でも言ったこと自体は、後悔していない」
「浦里さんは、本当に悠里さんが犯人だと思っているの?」
「今まで話を聞いた時の反応や今日の態度からして、間違いないと思う。でも証拠はない」
「だったら彼女自身が自首しない限りはこのまま、ってこともあり得るってこと?」
「そうだね。それに彼女が犯した罪は、“殺人”になるのか、それとも“過失致死”になるかも微妙だ。もし“過失致死罪”なら時効は十年だから、今自白しても罪に問われないかもしれない。でも“未必の故意”となれば、罪に問われる可能性は高くなる」
英美は推理小説なども好んで読む為多少の知識は持っている。しかし浦里がさらに詳しく説明してくれた。
「未必の故意」とは、実際に事件や犯罪が発生するかどうかは不確実だと知りつつ、自ら想定したことが実現されると認識し、さらにそれを容認して、結果の発生を認める場合を意味する。
他にも“認識のある過失”というものがあり、これは同じく実際に事件や犯罪が発生する可能性を認識していても、問題は起きないだろうと考え、結果の発生を認めない場合を指す。
つまり今回のケースで言えば、ウィルス入りの菓子を美島支社長が口にすれば、”高熱が出るかもしれないけれど、死ぬことは無いだろう”と思っていたにもかかわらず、亡くなってしまったのであれば、“認識のある過失致死罪”となる。
しかし”高熱を出し、下手をすれば死ぬこともあるだろうが、死んでしまったらそれはそれで仕方がない”と思っていた場合“未必の故意による殺人”と見なされるだろう。
刑法三十八条一項では、罪を犯す意志を故意犯として重く処罰し、過失犯は法律に特別規定のある場合を除けば、犯罪とされない。よってこの違いはとても大きいと言える。
「浦里さんはどっちだと思う?」
「事実は本人しか知りようがないけど、俺は限りなく故意に近いものだったと思う。だから罪を償って欲しいと思って言ったんだよ。だから後悔はしないし、したくない。だから廻間さんも、一人で考えて実行したことを責めないで欲しいんだ。それに三箇さんが裏で仕組んでいた事を言ったから、廻間さんはこれまで起こったことを振り返り、彼の言動に疑わしい点があると気づいたんだよね。だから今回の件は俺にも責任がある。今日、彼が逮捕されたかもしれないと聞いて、彼の取ったこれまでの行動が俺もやっと腑に落ちたよ」
彼の言葉を否定することが出来なかった英美は、何も言えなかった。その様子を見て彼はさらに言った。
「あの時、俺も廻間さんと同じように考えた。目の付け所は少し違ったようだけどね。それに三箇さんは殺人まで起こして、久我埼さんを追い込もうとした。これは決して許されることじゃない。恐らく彼は美島さんが柴山さんや悠里さんなどに酷いパワハラやセクハラをしていたことを知りながら、目もくれなかったんだと思う。信じたくなかったせいもあって、盲目になっていたのかもしれない。業務課長と事務職との不倫関係を暴いたのも、そうした事をしている人に対する強い憤りを実際は持っていて、それが現れた結果だと俺は思う。しかし言い訳に使った手法が災いして、自分の首を絞めた。廻間さんの洞察力を見誤ったのは、彼にとって大きな失敗だったことになる。自業自得さ。大宮の件では、映っている映像が彼の姿だけで良かった。まさか突き落とした瞬間まで写っていた訳じゃないだろ。名古屋の部屋で寝込んでいるはずの人間が、大宮にいたということだけを証明するのなら、ちらっとでも写っていれば良かったんだから。彼はあの不倫問題の件で、大きなヒントを廻間さんに与えた。人を欺いた結果だよ」
そこでようやく英美は口を開いた。
「三箇さんは久我埼さんが十年前の事件の犯人でない可能性が高いと知って、ようやく我に返ったのかな」
「そうだと思う。彼じゃなければ誰なのか。ウィルスを持ち込んだのは誰なのか。他に動機があって仕込むことが出来た人間は誰かと考えた時、彼の頭の中で柴山さんと悠里さんの名前が浮上したはずだ。おそらく昔の刑事時代の仲間から情報を聞いて、ウィルスを持ち込んだのは柴山さんに間違いないと思われるが、犯人ではないと証言していることを知ったんだと思う。そこでようやく冷静になって考えた時、久我埼さんと同じく一線を超えた目をしていたのは、柴山さんではなく悠里さんの目だったことに気付いたのかもしれない。だから古瀬や俺達の今後の事を考え、これ以上調べるのは止めると言い始めたんだろう。もちろん六年前の件まで詳しく捜査されると困るから、会社を辞めて逃げようと企んだ可能性も否定できないけどな」
「それなのに、私達が全てを暴いてしまったのね。三箇さんや悠里さんは、この後どうなるんだろう。古瀬さんも知らなかったとはいえ、ただでは済まないわよね。私達に関わったせいで、今後代理店を廃業しなければならないかもしれない。だって彼女が警察に逮捕されたとしたら、多くのお客様が離れていくだろうから続けられないでしょう」
英美は再び落ち込んだ。浦里があの場で口にしなくても、三箇が警察で取り調べを受ければ、全て明るみに出ていた可能性は高い。そう思うと、英美自身もこれ以上会社に居続けることはとても無理だと思った。
正しい事をしたからと言って、それが会社の利益に反するものであれば排除されるだろう。いや、それでなくても明後日からどんな顔をして出社すればいいのか分からない。行きたいとも思わなかった。
そんな英美の心を読んだのか、浦里がいつもと違った優しい声でとんでもないことを言い出したのだ。
「辛い事だとは思う。この先自己嫌悪に陥ることもあるかもしれない。けれどそれは俺も同じだから、一人で抱え込むことは止めて欲しい。俺は廻間さんから勇気を貰った。もしこの先の事を考えて、先程言ったように会社を辞めたいと本気で思っているのなら、俺に付いて来てくれないかな」
「え?」
突然の告白に足を止めた。彼も同時に立ち止まる。そこは駅前のロータリー近くの道で、周りに人は誰もいなかった。直立不動で背筋を伸ばした彼は続けた。
「もっと早く言うべきだったのかもしれない。でもなかなか思い切れなかったんだ。実を言うと俺は京都にいた時、結婚を考えていた彼女がいた。でも名古屋への転勤を機にプロポーズした所、各地を転々とするのは嫌だと断られたんだ。理由はその彼女の父親が俺と同じく、転勤族だったかららしい。幼い頃転校する度に嫌な目に遭ってきたので、将来自分が結婚する相手は、転勤が限られた人が良いと言われた。だったら俺なんかと何故付き合ったんだと喧嘩になって別れたんだ。その事がトラウマになり、この一年程で持ち始めた廻間さんへの気持ちが本物なのか、自分でも判らなかった。しかも廻間さんが以前付き合っていた人から、転勤による異動のタイミングで別れを切り出された経験があることや、地元から離れたくないと聞いたことがあったから、余計に言い出せなかったんだ」
いつの間に、誰からそんな情報を仕入れたのだろう。しかし一年ほど前から好意を持ってくれていたなんて、全く気付かなかった。そう言われるとここ最近は色んな事件があったこともあり、距離が縮まっていたことは確かだ。
そういう自分も、彼を見る目が徐々に変わっていたことは間違いない。ただどちらかと言えば、三箇に気持ちが傾いていたと思う。その相手を疑い、英美は警察に売り渡したばかりだ。その為余りにも急な話で、頭も感情も付いていけなかった。思考が鈍くなりぼうっとする。
それでも何か言わなければ、と焦っていた所に彼は重ねて言った。
「でも今日で色んなことが決心できた。言わずに後悔するよりも、言って後悔する方がましだ、と廻間さんから教えられたよ。三箇さんや悠里さんのこともそうだ。今後あの二人がどうなるかは判らない。でも一人で別々に抱え込むより、二人で分かち合えば同じ苦しみや後悔があっても、乗り越えられるんじゃないかな。今後廻間さんが一人で苦しむくらいなら、俺と一緒にいて欲しい。答えは急がなくていいから。東京へは明日先に行くけど、廻間さんの気持ちが固まったら俺と一緒に住まないか。遊びに来るだけでもいい。結婚を前提として、お付き合いから始めても良いと思う。もし答えが出てOKなら、俺はいつでも迎えに来るよ」
「ありがとう。浦里さんの気持ちは伝わった。でも少し時間を頂戴。真剣に考えたいから」
英美が絞り出した言葉に、彼は強く頷いた。
「うん。考えてくれるだけでも嬉しい。じゃあ、待っているから」
二人はそこで別れ、英美は一人で改札を通った。幸いと言っていいのか、駅の周辺やホームに古瀬達の姿は見当たらなかった。少し前の電車に乗ったのか、それともまだどこかで話し合っているのかもしれない。いずれにしても、遭遇しなかったことに安堵する。
今だけは嫌な事を忘れたかった。少し前まで会社を辞めて今後どう生きて行こうかと煩悶していた自分が、この時全く予期せぬ彼の告白に浮き足立ち温かい気持ちに浸っていたからだ。
不謹慎だとは思う。三箇や悠里、そして古瀬の事を考えると気が重くなる。特にこのままの状態で、古瀬の担当を続けることは困難だろう。
もし今後悠里が自首すれば、古瀬との繋がりは完全に崩壊する。自首しなくても、これまでと同じ関係を続ける自信などない。少なくとも課長には、担当変更を願い出なければならないだろう。
そう考えると卑怯かもしれないが、逃げることも選択肢の一つだ。会社を辞めても、英美達がしたことは消えない。それならば少しでも傷を浅くするために、忌まわしい事件が起こったこの名古屋の地から離れることを考えてもいいのではないか。
それとは別に浦里の事も、自分の気持ちに嘘がないか確かめなければならなかった。逃げ道として、彼を利用するのは失礼な事だ。そんな結婚生活など長く続くはずがない。
それでも真っ暗闇になりかけていた英美の歩む道に、光が灯った気がした。そして人を妬む人生よりも、妬まれる人生を歩んだ方が幸せだという誰かの言葉を思い出す。
嫉妬や恨みの先に、決して明るい未来はない。それは久我埼や柴山夫妻、そして三箇や悠里が教えてくれた。殺したいほど憎い相手や避けたい人がいたならば、そこから離れることが一番の解決策なのだろう。時には立ち向かって、戦うことも必要かもしれない。
しかし自分がそれ程強いかどうかを見極めなければ、道を誤ってしまう。それほど人間は愚かで弱いものだ。その事を知った上で、自分が届く範囲の幸せに手を伸ばせばいい。
ホームに入ってくる電車の灯りを見つめながら、英美はぼんやり霞む未来を想像していた。
そんな時だ。どこから現れたのか、十メートルほど先でホームに向かって走る女性の姿が視界に入った。突然の事で驚きの余り言葉を失っていた英美だったが、線路へ飛び込むつもりなのだと気付く。と同時に、後ろ姿から彼女が悠里だと分かった。
危ない! と声をかけようと思ったその瞬間、彼女はこちらを振り向いた。警笛を鳴らしながら急ブレーキを踏む電車のライトに照らされた彼女の表情は、ニタッと笑っていた。
彼女の体が、線路に向かってゆっくりと落ちていく。英美が悲鳴をあげたと同時に、古瀬と思われる言葉にならない男性の叫び声が聞こえた。駅中に大きな音が響き渡った。(了)
逆に悠里の顔は、真っ青に変化していく。それを見てハッとした。先に口を開いたのは古瀬だった。
「何を馬鹿な事を言うんだ! 人の嫁を殺人犯扱いするなんて。いつからお前はそういう目で、悠里の事を見ていたんだよ! 最近週に一回は事務所に来てくれて話もしていたようだが、その度に人殺しかもしれないと思って喋っていたのかよ!」
個室とはいえ他の客がいる為、抑え気味の声だったが物凄い剣幕だった。浦里の胸倉を、掴みかからんばかりの勢いだ。しかしそうなることを予期していたのか、浦里は怯まず真っすぐな力強い目で彼を睨み返しながら言った。
「廻間さんが三箇さんの態度がおかしいと感じ始めた少し前から、俺は悠里さんを疑い出していた。彼がこれ以上の調査を止めようと言い出したのは、美島支社長に菓子を食べさせた人物が、ごく身近にいる人だと気付いたからじゃないかと思ったんだ」
聞き捨てならない話に、英美が尋ねた。
「どういう意味? 三箇さんは悠里さんが犯人かもしれないと思っていたって事? そんな話、今まで聞いていないわよ」
「言っていないからね。以前、悠里さんへの聞き取りは俺がするって話をしていただろ。だから古瀬さんの事務所を訪問する度に、彼女から聞き取りをしていたんだ」
そう言えばそんな事を言っていた気がする。だが四人で情報を共有しているサイトに、彼女から得た情報は書かれていなかったはずだ。しかしそれは彼女が話したがらないと事前に聞いていたので、余り期待していなかった。その為すっかり忘れていた。
古瀬が再び、怒気をはらんだ声を出した。
「おい! 何を勝手な事をしているんだ! 悠里が何を言ったんだ! 俺はそんな話、聞いていないぞ!」
「本当に聞いていないのか? 俺が何を質問してきたか、悠里さんは古瀬さんに何も話していないのか?」
浦里の問いに古瀬は首を縦に振って、悠里の方を見た。
「おい、何を聞かれたんだ? そんな話はしてなかっただろ。どういうことだ?」
彼女は俯いたまま、何も話そうとしなかった。その様子に古瀬も不安を感じたようだ。
「おい、何とか言えよ。嘘だろ? 美島支社長の机に菓子を置いてなんかいないよな? ただの言いがかりだろ? 第一、そんな事をする動機がないよな? そうだろ?」
古瀬の狼狽ぶりからすると、本当に何も知らないようだ。しかし彼が言うように悠里が犯人だとしたら、何故そんなことをしたのかと考えた時、英美はある可能性に気付いた。
「もしかして悠里さんも柴山さんと同じように、美島支社長からパワハラを受けていたってこと?」
英美の質問に悠里は体をビクリとさせ、古瀬の目が丸くなった。言葉を省略したが、反応を見る限り彼女はセクハラ被害も受けていたようだと確信する。
どうやら浦里は、その事に気付いていたらしい。
「悠里さんも、柴山さんが亡くなる前から警察で事情聴取を受けていたと思いますが、聞かれたはずです。でも言わなかったようですね。俺も同じ質問をしましたが、あなたは否定した。でも他の方の証言では、そうかもしれないと思っていた人がいました。警察もその点を疑っていたと思います。現に私もあなたの反応を見て、そう感じましたから。ただデリケートな話なので、古瀬さんも見ているサイトには書き込まなかった。だからこの事を、三箇さんだけに話しました」
「だから柴山さんが亡くなった後、三箇さんは古瀬さんや悠里さんを守ろうと、私達にこれ以上調べることを止めさせた。浦里さんはそう考えていたのね」
「ああ。でも廻間さんの推理の方が正しかったのかもしれない。または両方だった可能性もある。しかし三箇さんが逮捕されたのなら、これ以上俺だけ黙っている訳にはいかないから言わせてもらった」
「でも悠里さんはどうやって、柴山さんがウィルス入りの菓子を持っているなんて知ったの? そうじゃなければ、美島支社長の机の上に置いたりできないじゃない」
英美の疑問に、彼は答えた。
「恐らく悠里さんは、柴山さんの様子がおかしい事に気付いていたんじゃないかな。隆さんの証言によると、菓子を持ち込んだことは確かだけど、実行する際に彼女は躊躇していたらしいね。だからメールでやり取りをした、と証言している。悠里さんはそのメールをこっそり覗き見したんじゃないのかな。だから柴山さん達が仕込んだ菓子を盗んで、美島支社長が食べるよう仕向けた。以前古瀬さんが言っていたよね。悠里さんは、絶対携帯を覗いたりしないって。そんなことをしても良いことが無いから、というのが理由だと聞いた。それは十年前の事があったからじゃないのかな」
浦里に尋ねられた彼女は、突然何も言わず持っていたバックを持って立ち上がった。そして個室から出て行ったのだ。その後を、古瀬が慌てて追いかけていった。
ぽつんと残された英美達は、気まずい空気のままテーブルの上に残っていた食べ物や飲み物を口にし、ある程度片付けてから店を出ることにした。浦里の送別会だと言うのに、会計は折半で払うことになり、申し訳ない気持ちになりながら英美は店を出た。
もう四月だと言うのに、夜の風はまだ冷たい。暗い夜道に出て周りを見渡す。するとどこかで桜が咲いているのか、花びらがちらりと舞って足元に落ちた。英美は視線を戻し、古瀬は悠里に追いつくことができたのだろうか、ともう一度辺りを目で追った。
しかし二人の姿は、どこにも見当たらない。ここから帰るには、最寄りの駅から地下鉄に乗るはずだ。ならばその周辺にまだいるかもしれない。それはそれで困った。
英美も同じ駅から電車に乗る為、途中で彼らと会う可能性がある。あんな状況で別れた手前、顔を会わせればお互い気まずい。それでもやむを得ず駅に向かって歩いた。すると歩いて数分程度で帰ることができるはずの浦里が気遣ってくれたのか、声をかけてくれた。
「送るよ」
彼の言葉に内心はホッとしつつ、無言で頷く。なぜなら二人で歩く道中、何を話せばいいものかと悩んだからだ。これで彼とはお別れだというのに、最悪の結末を迎えた。
加えて明後日から、古瀬や悠里とどう話せばいいのか。それより彼らは、今後どうするつもりなのだろう。想像するだけで頭が痛くなる。そんな気持ちが伝わったのか、浦里が言った。
「申し訳ない。俺はもう彼らと会わないで済むけど、廻間さんはそうじゃないんだよな」
頷きそうになったが、英美は首を振った。
「ううん。私が三箇さんのことを話したせいで、こういう風になったんだから。悪いのは私。こっちこそごめん。最後の送別会がこんな風になっちゃって」
「送別会はどうでもいいんだ。悠里さんのことだって、決着をつけるのなら今日しかない、と俺が無理を言って呼んだのだから、廻間さんのせいじゃない」
「じゃあ浦里さんは最初から、こういう展開になることも覚悟していたの?」
「ああ。だけどギリギリまで迷っていたのは確かだ。でも廻間さんの話を聞いて、やっぱり言わなきゃいけないって思った」
「言ってどう思った? 後悔している?」
「少しだけかな。もっと上手い言い方があったんじゃないかって、反省している。でも言ったこと自体は、後悔していない」
「浦里さんは、本当に悠里さんが犯人だと思っているの?」
「今まで話を聞いた時の反応や今日の態度からして、間違いないと思う。でも証拠はない」
「だったら彼女自身が自首しない限りはこのまま、ってこともあり得るってこと?」
「そうだね。それに彼女が犯した罪は、“殺人”になるのか、それとも“過失致死”になるかも微妙だ。もし“過失致死罪”なら時効は十年だから、今自白しても罪に問われないかもしれない。でも“未必の故意”となれば、罪に問われる可能性は高くなる」
英美は推理小説なども好んで読む為多少の知識は持っている。しかし浦里がさらに詳しく説明してくれた。
「未必の故意」とは、実際に事件や犯罪が発生するかどうかは不確実だと知りつつ、自ら想定したことが実現されると認識し、さらにそれを容認して、結果の発生を認める場合を意味する。
他にも“認識のある過失”というものがあり、これは同じく実際に事件や犯罪が発生する可能性を認識していても、問題は起きないだろうと考え、結果の発生を認めない場合を指す。
つまり今回のケースで言えば、ウィルス入りの菓子を美島支社長が口にすれば、”高熱が出るかもしれないけれど、死ぬことは無いだろう”と思っていたにもかかわらず、亡くなってしまったのであれば、“認識のある過失致死罪”となる。
しかし”高熱を出し、下手をすれば死ぬこともあるだろうが、死んでしまったらそれはそれで仕方がない”と思っていた場合“未必の故意による殺人”と見なされるだろう。
刑法三十八条一項では、罪を犯す意志を故意犯として重く処罰し、過失犯は法律に特別規定のある場合を除けば、犯罪とされない。よってこの違いはとても大きいと言える。
「浦里さんはどっちだと思う?」
「事実は本人しか知りようがないけど、俺は限りなく故意に近いものだったと思う。だから罪を償って欲しいと思って言ったんだよ。だから後悔はしないし、したくない。だから廻間さんも、一人で考えて実行したことを責めないで欲しいんだ。それに三箇さんが裏で仕組んでいた事を言ったから、廻間さんはこれまで起こったことを振り返り、彼の言動に疑わしい点があると気づいたんだよね。だから今回の件は俺にも責任がある。今日、彼が逮捕されたかもしれないと聞いて、彼の取ったこれまでの行動が俺もやっと腑に落ちたよ」
彼の言葉を否定することが出来なかった英美は、何も言えなかった。その様子を見て彼はさらに言った。
「あの時、俺も廻間さんと同じように考えた。目の付け所は少し違ったようだけどね。それに三箇さんは殺人まで起こして、久我埼さんを追い込もうとした。これは決して許されることじゃない。恐らく彼は美島さんが柴山さんや悠里さんなどに酷いパワハラやセクハラをしていたことを知りながら、目もくれなかったんだと思う。信じたくなかったせいもあって、盲目になっていたのかもしれない。業務課長と事務職との不倫関係を暴いたのも、そうした事をしている人に対する強い憤りを実際は持っていて、それが現れた結果だと俺は思う。しかし言い訳に使った手法が災いして、自分の首を絞めた。廻間さんの洞察力を見誤ったのは、彼にとって大きな失敗だったことになる。自業自得さ。大宮の件では、映っている映像が彼の姿だけで良かった。まさか突き落とした瞬間まで写っていた訳じゃないだろ。名古屋の部屋で寝込んでいるはずの人間が、大宮にいたということだけを証明するのなら、ちらっとでも写っていれば良かったんだから。彼はあの不倫問題の件で、大きなヒントを廻間さんに与えた。人を欺いた結果だよ」
そこでようやく英美は口を開いた。
「三箇さんは久我埼さんが十年前の事件の犯人でない可能性が高いと知って、ようやく我に返ったのかな」
「そうだと思う。彼じゃなければ誰なのか。ウィルスを持ち込んだのは誰なのか。他に動機があって仕込むことが出来た人間は誰かと考えた時、彼の頭の中で柴山さんと悠里さんの名前が浮上したはずだ。おそらく昔の刑事時代の仲間から情報を聞いて、ウィルスを持ち込んだのは柴山さんに間違いないと思われるが、犯人ではないと証言していることを知ったんだと思う。そこでようやく冷静になって考えた時、久我埼さんと同じく一線を超えた目をしていたのは、柴山さんではなく悠里さんの目だったことに気付いたのかもしれない。だから古瀬や俺達の今後の事を考え、これ以上調べるのは止めると言い始めたんだろう。もちろん六年前の件まで詳しく捜査されると困るから、会社を辞めて逃げようと企んだ可能性も否定できないけどな」
「それなのに、私達が全てを暴いてしまったのね。三箇さんや悠里さんは、この後どうなるんだろう。古瀬さんも知らなかったとはいえ、ただでは済まないわよね。私達に関わったせいで、今後代理店を廃業しなければならないかもしれない。だって彼女が警察に逮捕されたとしたら、多くのお客様が離れていくだろうから続けられないでしょう」
英美は再び落ち込んだ。浦里があの場で口にしなくても、三箇が警察で取り調べを受ければ、全て明るみに出ていた可能性は高い。そう思うと、英美自身もこれ以上会社に居続けることはとても無理だと思った。
正しい事をしたからと言って、それが会社の利益に反するものであれば排除されるだろう。いや、それでなくても明後日からどんな顔をして出社すればいいのか分からない。行きたいとも思わなかった。
そんな英美の心を読んだのか、浦里がいつもと違った優しい声でとんでもないことを言い出したのだ。
「辛い事だとは思う。この先自己嫌悪に陥ることもあるかもしれない。けれどそれは俺も同じだから、一人で抱え込むことは止めて欲しい。俺は廻間さんから勇気を貰った。もしこの先の事を考えて、先程言ったように会社を辞めたいと本気で思っているのなら、俺に付いて来てくれないかな」
「え?」
突然の告白に足を止めた。彼も同時に立ち止まる。そこは駅前のロータリー近くの道で、周りに人は誰もいなかった。直立不動で背筋を伸ばした彼は続けた。
「もっと早く言うべきだったのかもしれない。でもなかなか思い切れなかったんだ。実を言うと俺は京都にいた時、結婚を考えていた彼女がいた。でも名古屋への転勤を機にプロポーズした所、各地を転々とするのは嫌だと断られたんだ。理由はその彼女の父親が俺と同じく、転勤族だったかららしい。幼い頃転校する度に嫌な目に遭ってきたので、将来自分が結婚する相手は、転勤が限られた人が良いと言われた。だったら俺なんかと何故付き合ったんだと喧嘩になって別れたんだ。その事がトラウマになり、この一年程で持ち始めた廻間さんへの気持ちが本物なのか、自分でも判らなかった。しかも廻間さんが以前付き合っていた人から、転勤による異動のタイミングで別れを切り出された経験があることや、地元から離れたくないと聞いたことがあったから、余計に言い出せなかったんだ」
いつの間に、誰からそんな情報を仕入れたのだろう。しかし一年ほど前から好意を持ってくれていたなんて、全く気付かなかった。そう言われるとここ最近は色んな事件があったこともあり、距離が縮まっていたことは確かだ。
そういう自分も、彼を見る目が徐々に変わっていたことは間違いない。ただどちらかと言えば、三箇に気持ちが傾いていたと思う。その相手を疑い、英美は警察に売り渡したばかりだ。その為余りにも急な話で、頭も感情も付いていけなかった。思考が鈍くなりぼうっとする。
それでも何か言わなければ、と焦っていた所に彼は重ねて言った。
「でも今日で色んなことが決心できた。言わずに後悔するよりも、言って後悔する方がましだ、と廻間さんから教えられたよ。三箇さんや悠里さんのこともそうだ。今後あの二人がどうなるかは判らない。でも一人で別々に抱え込むより、二人で分かち合えば同じ苦しみや後悔があっても、乗り越えられるんじゃないかな。今後廻間さんが一人で苦しむくらいなら、俺と一緒にいて欲しい。答えは急がなくていいから。東京へは明日先に行くけど、廻間さんの気持ちが固まったら俺と一緒に住まないか。遊びに来るだけでもいい。結婚を前提として、お付き合いから始めても良いと思う。もし答えが出てOKなら、俺はいつでも迎えに来るよ」
「ありがとう。浦里さんの気持ちは伝わった。でも少し時間を頂戴。真剣に考えたいから」
英美が絞り出した言葉に、彼は強く頷いた。
「うん。考えてくれるだけでも嬉しい。じゃあ、待っているから」
二人はそこで別れ、英美は一人で改札を通った。幸いと言っていいのか、駅の周辺やホームに古瀬達の姿は見当たらなかった。少し前の電車に乗ったのか、それともまだどこかで話し合っているのかもしれない。いずれにしても、遭遇しなかったことに安堵する。
今だけは嫌な事を忘れたかった。少し前まで会社を辞めて今後どう生きて行こうかと煩悶していた自分が、この時全く予期せぬ彼の告白に浮き足立ち温かい気持ちに浸っていたからだ。
不謹慎だとは思う。三箇や悠里、そして古瀬の事を考えると気が重くなる。特にこのままの状態で、古瀬の担当を続けることは困難だろう。
もし今後悠里が自首すれば、古瀬との繋がりは完全に崩壊する。自首しなくても、これまでと同じ関係を続ける自信などない。少なくとも課長には、担当変更を願い出なければならないだろう。
そう考えると卑怯かもしれないが、逃げることも選択肢の一つだ。会社を辞めても、英美達がしたことは消えない。それならば少しでも傷を浅くするために、忌まわしい事件が起こったこの名古屋の地から離れることを考えてもいいのではないか。
それとは別に浦里の事も、自分の気持ちに嘘がないか確かめなければならなかった。逃げ道として、彼を利用するのは失礼な事だ。そんな結婚生活など長く続くはずがない。
それでも真っ暗闇になりかけていた英美の歩む道に、光が灯った気がした。そして人を妬む人生よりも、妬まれる人生を歩んだ方が幸せだという誰かの言葉を思い出す。
嫉妬や恨みの先に、決して明るい未来はない。それは久我埼や柴山夫妻、そして三箇や悠里が教えてくれた。殺したいほど憎い相手や避けたい人がいたならば、そこから離れることが一番の解決策なのだろう。時には立ち向かって、戦うことも必要かもしれない。
しかし自分がそれ程強いかどうかを見極めなければ、道を誤ってしまう。それほど人間は愚かで弱いものだ。その事を知った上で、自分が届く範囲の幸せに手を伸ばせばいい。
ホームに入ってくる電車の灯りを見つめながら、英美はぼんやり霞む未来を想像していた。
そんな時だ。どこから現れたのか、十メートルほど先でホームに向かって走る女性の姿が視界に入った。突然の事で驚きの余り言葉を失っていた英美だったが、線路へ飛び込むつもりなのだと気付く。と同時に、後ろ姿から彼女が悠里だと分かった。
危ない! と声をかけようと思ったその瞬間、彼女はこちらを振り向いた。警笛を鳴らしながら急ブレーキを踏む電車のライトに照らされた彼女の表情は、ニタッと笑っていた。
彼女の体が、線路に向かってゆっくりと落ちていく。英美が悲鳴をあげたと同時に、古瀬と思われる言葉にならない男性の叫び声が聞こえた。駅中に大きな音が響き渡った。(了)
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ヴァルプルギスの夜~ライター月島楓の事件簿
加来 史吾兎
ホラー
K県華月町(かげつちょう)の外れで、白装束を着させられた女子高生の首吊り死体が発見された。
フリーライターの月島楓(つきしまかえで)は、ひょんなことからこの事件の取材を任され、華月町出身で大手出版社の編集者である小野瀬崇彦(おのせたかひこ)と共に、山奥にある華月町へ向かう。
華月町には魔女を信仰するという宗教団体《サバト》の本拠地があり、事件への関与が噂されていたが警察の捜査は難航していた。
そんな矢先、華月町にまつわる伝承を調べていた女子大生が行方不明になってしまう。
そして魔の手は楓の身にも迫っていた──。
果たして楓と小野瀬は小さな町で巻き起こる事件の真相に辿り着くことができるのだろうか。
母からの電話
naomikoryo
ミステリー
東京の静かな夜、30歳の男性ヒロシは、突然亡き母からの電話を受け取る。
母は数年前に他界したはずなのに、その声ははっきりとスマートフォンから聞こえてきた。
最初は信じられないヒロシだが、母の声が語る言葉には深い意味があり、彼は次第にその真実に引き寄せられていく。
母が命を懸けて守ろうとしていた秘密、そしてヒロシが知らなかった母の仕事。
それを追い求める中で、彼は恐ろしい陰謀と向き合わなければならない。
彼の未来を決定づける「最後の電話」に込められた母の思いとは一体何なのか?
真実と向き合うため、ヒロシはどんな犠牲を払う覚悟を決めるのか。
最後の母の電話と、選択の連続が織り成すサスペンスフルな物語。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。
のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。
彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。
そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。
しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。
その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。
友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる