太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その十五 エルフ国大戦争!

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「はっはっはっ!この魔王の親友に害した報いよ!」
「ふん!こんな雑兵なんか準備運動にもならないわ」
「あ~あ、全員皆殺しですか。惨い」

 それにしても私達と出くわしたフェミーへの追手達もつくづく運が無かったわね。
 もう言うまでもなく追手の雑兵達は一人残らず私とミルクが地獄へ送ってやったわ。
 特にミルクったら大斧の一閃で雑兵達の首が飛ぶわ飛ぶわ!
 これは本当にいい見世物だったわ。
 私も私で雑兵の頭上に巨大な火炎魔法を落として雑兵の皆様完全焼却処分しちゃったわ。
 ただ……この楽しい虐殺劇場を見た太助は。

「やりすぎ。これじゃあ蘇生させて情報聞き出す事ができないじゃないか」

 太助~っ、それは完全に甘いわよ。
 この魔王ヒカル・グレーズに逆らう奴はこうなるのは必然よ!
 私こそが唯我独尊なんだから。

「それより太助、フェミーの方はどうなの?」
「大丈夫。今ファフリーズがエリクサー飲ませて治癒魔法を使ってるから」

 フェミーの腹部の傷は思ったよりも深い。
 だけど、なんとか万能薬であるエリクサーを飲ませて治癒魔法で傷を治している。

「全く……後少し遅れていたら命を失う処でしたわ」
「すみませんファフリーズさん」

 フェミーはファフリーズとブログさんに任せて……私は同じく結界の割れ目を潜り抜けて首都に侵入した我が魔王国が誇る正規軍達とルルと合流したわ。

「ルル!お疲れ柾」
「魔王様、魔王国正規軍・魔法航空部隊一個師団と陸戦部隊一個師団……集結しました」
「ゴメンねルル。まさかこのような事態になるなんて」
「本当はもう数部隊送り込みたかったのですが残念ながら結界が修復されたらしく、これ以上の造園は難しいと思われます」
「まぁ、人間国の動向も気になるし……これだけ回してくれたら十分よ」

 とにかく正規軍もこちらに来ているみたいだし、とりあえずここを拠点にするわよ。
 何しろ今からエルフ国と戦争をする訳だしね。
 そこへミルクが私に頭を下げてきたわ。

「御免なさい。本来なら同盟国としてドワーフ国からも兵隊送り込むのが筋なんだけど」
「まぁ厄介な結界が貼られてるから迂闊に来れないしね。その代わりミルクにはこれから大暴れしてもらうつもりだけど」

 確かにドワーフ国の援軍があれば頼りになるけど、やはりあの結界が厄介ね。
 現に魔王国正規軍一個師団ここへ送りもむのも一苦労だったし。
 現在も結界の外で再び結界に穴をあけようと我が国の魔導士師団が頑張ってるけど苦戦してるみたい。
 その辺は流石エルフ国ね。

 それから首都の郊外で陣取った私達は戦う前の腹ごしらえを。
 無論、私達に交えてミルクとフェミーとブログも一緒だ。

「えっ!緑の刻印を奪われたって」
「御免さない。しかも……アカウント将軍が母……いえルシフェル王と繋がっていたわ」
「となると面倒な事になったねヒカルちゃん」
「じゃあ、やっぱり」
「そう、今ルシフェル王には伝説の巨神復活に必要な三つの刻印が全て揃っている。そうなると一刻も早く」
「太助」
「えっ?」
「今はご飯だよ。腹が減ったら戦はできないでしょ」
「…………」

 そこへアンナが今夜の夕食を持ってきた。

「太助ちゃん、ヒカルの言う通りだよ。焦っても失敗するのがオチかから」
「アンナ姉ちゃん」
「今夜は戦の勝利を願って……かつ丼だぁ~っ!肉はルル様が持ってきてくれた大量の豚肉、しかも魔王国で作られた初物だよ」

 そうか。
 以前から魔王国で牛と豚の家畜養殖事業を進めてたけど……ようやくここまで来たんだ。
 しかもアンナ曰く、このかつ丼はこの場に集まっている正規軍全員に用意したとか。

「処でブログさんは肉大丈夫?」
「問題ない。頂こう」

 こうして私達はアンナ特製かつ丼を一緒に食べる事に。
 アンナが作ったかつ丼は私を含めて美味しいと評判が良かったわ。

「アンナ!おかわりはないの?」
「流石アンナ姉ちゃん。素晴らしいよ」
「これは……流石は私の強敵(とも)だけの事はありますわ」
「――――これは素晴らしい」
「あぁ、ララとロイドに申し訳ないわぁ。アンナさん!今度ララとロイドにもお願いします」

 流石に私の家族と配下には大好評!
 更にフェミーとブログ、更に使い魔である筈のファミーまでもアンナのかつ丼に夢中みたい。

「う~ん!本当に素晴らしいわ」
「うむ、この肉と卵の融合が奇跡を起こしているみたいだ」
「使い魔は本来食べないのもだが……これは癖になりそうだ」

 この光景を見ていたアンナは実にご満悦。

「みんな……絶対に生きて帰ろうな。そうしたらまた僕が美味しいのを作ってあげるからな!」





 これで私達の腹ごしらえは終わり。
 さて……あのクソバアァめ、どうしてくれようかしら?
 場所は変わってエルフ国のお城。





「ふふふ、遂に三つの刻印が揃ったわ」

 お城の謁見の目でルシフェル王が三つの刻印を手に高笑い。
 そして、ルシフェル王の傍らにはアカウント将軍とその副官のホーンとエルフ国の大臣であるガントの姿が。

「おめでとうございますルシフェル王様」
「これで伝説の巨神復活が可能となりましたな」
「――」

 ホーンとガントがルシフェル王を称える中でアカウント将軍はただ沈黙。
 しかもルシフェル王は完全に勝利を確信している。

「ガント、ホーン」
「「はっ」」
「今まで大儀であった。特にホーンはダークエルフに化けて大変であっただろう」

 するとホーンの体がダークエルフの特徴である褐色肌から徐々に白くなっていくわ。
 くそっ。
 どうやらホーンは最初からルシフェル王のスパイだったみたいね。

「私は夜明けと共にお城の祭壇で伝説の巨神を復活させる儀式を始める。それまで警戒を怠るな」

 はは、警戒を怠るなってね。
 ハッキリ言って……もう遅いわよ。
 この魔王様の逆鱗に触れた時点でね。
 それではルル……や~っておしまい!

「魔法航空部隊……爆撃開始!」

 はい真夜中の首都上空にわが軍が誇る数百名で構成されている空の守護者にして死神・魔法航空部隊の精鋭が!
 そして、問答無用とばかりにエルフ国のお城に向けて火炎・氷の魔法による大爆撃が始まったわ。
 これには城中は大混乱!
 まさか結界が貼られてるにも関わらず、あれだけの軍勢の侵入を許しちゃってるからねぇ。
 当然、クソババァ……もといルシフェル王の元にも敵による奇襲は伝令から聞く事に。
 って、もう外は私達の総攻撃による轟音で響き渡ってるから聞くまでもなく察してるみたいだけど。

「ぐぬぬ!奴等どうやって結界を抜けて侵入してきたのだっ」
「既に兵達が迎撃に出ていますが……正直旗色が悪い模様です」
「小便臭い小娘だと思って甘く見ていたわ。流石は魔王といった処か!」

 さ~て、ボケ老人のルシフェル王さ~ん。
 これからど~するのかしら?

「こうなったら、すぐに伝説の巨人を復活させて目にものを見せてやる!」

 あらら、結局は伝説のなんたら頼りですか。
 だけど……そうはイカのなんとかよっ!

「これはこれはルシフェル王様。そんなに急いで何処へいらっしゃるのかしら?」
「!?げげっ、お前達は!」

 はい、謁見の間正面口から私達が堂々とご入場!
 私の他にはお供としてアンナさんにリースさん、それに助さんとクロにミルクさん。
 更に今回は客人としてフェミーとブログさんも同行してるわ。

「ほほう、これは悪党どもが勢ぞろいとはねぇ。このお節介なコショウ問屋の娘である私も放置できそうにありませんわねぇ」
「とぼけるな魔王!この襲撃は貴様の仕業だな」
「いやいや、これは今まで不満を募らせたダークエルフとホビットの怒りの現れですよ。いい加減自分の王としての器の無さを思い知ったらどうでしょうか」

 そこへフェミーが私の横に立ちルシフェル王にこう告げた。

「母……いえルシフェル王よ!もはや貴方に王である資格はありません。すぐに王の座から退位して国民すべてに謝罪しなさい」
「フェミー……まだ生きていたか」

 そこへ私達の周囲に複数の親衛隊らしき連中が!
 全く往生際の悪いババァだ事!
 はい、そして問答無用に襲い掛かってくるのも毎度毎度のお約束💛

「アンナさん、リースさん、ついでにミルクさん!遠慮はいりません、徹底的に懲らしめてやりなさい!」
「ちょっとヒカル!仮にも王様の私とついで扱いなんて」





 はい、いよいよクライマックスみたいね。
 あのクソババァめ!
 絶対にコテンパンにしてやるんだから!





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