太助と魔王

温水康弘

文字の大きさ
上 下
70 / 89
第五章 内乱のエルフ国

その二 友達を助けたい!

しおりを挟む

 さて、エルフ国内乱発生について我が魔王国も全幹部を招集して緊急会議を始める事に。
 私と太助を筆頭に官僚長のミクシィに正規軍総司令官のルルに義勇兵ギルドマスターであるララ。
 それと我が国が誇る二大将軍であるファフリーズとアンナに今では我が国の技術師長であるロイドもいる。

「さて、現在判明しているエルフ国で起こってる状況は今話した通りよ。そこで皆の意見を聞いてみたいわ」

 果たして、皆はどう答えるのかしら?
 まずは官僚長であるミクシィの意見だ。

「正直個人的には内乱そのものは放置すべきですが……現実は香辛料の輸出げできず我が国の財政に影響が出ています」
「で、ミクシィの結論は?」
「幸いエルフ国とは緊急時の軍事同盟がありますので我が国の魔法航空部隊を送り込み反乱軍を即時殲滅すべきです」
「つまり個人的には嫌だけど国益の為に航空部隊送り込んで反乱分子をせん滅したほうがいいと」
「はい」

 個人的に嫌といいながら結構ミクシィったら過激な判断ね。
 だけど……それではエルフ国を戦火で焼きかねないわ。
 次はルルとララね。

「私は諜報部の暗殺部隊を差し向けてアカウント将軍を暗殺するのが手っ取り早いと思います」
「反乱の首謀者さえ消せば後は烏合の衆。後はエルフ国の軍勢がなんとかしれくれるでしょう」

 うわぁ。
 確かにアカウント将軍を暗殺すれば反乱なんか即終了。
 わが軍も無駄に血を流す必要がないわ。
 だけど……私個人としては何かが引っかかるのよね。
 ある意味軍部のトップらしい意見ね。
 ちなみにファフリーズとアンナにも意見を聞いたけど……もうお察しでしょう。
 ズバリ二人が出向いて殲滅!
 はぁ、この脳筋コンビに聞いた私が大馬鹿だったわ。
 一方で変わった意見を出したのはロイドだ。
 彼はエルフ国に伝わる伝説の巨神に興味があるみたい。

「魔王様、いっそ内乱のどさくさに紛れて俺達が伝説の巨神の封印を解いて解析してやりましょうか」
「却下!流石にエルフ国の最高機密を探ると色々と面倒になるからダメ!」
「はは……やっぱりダメですか」

 この研究バカ。
 少しは奥さんであるルルとララの事を考えなさいよ。
 最後は太助ね。

「僕はもう少し保留かな。アカウント将軍が何を考えてるか判断し兼ねるし……それに」
「それに何?」
「何処か引っかかるんだよね。森とともに生きる自給自足のエルフの国が何故にクーデター起こして他国に攻め込む意味ったあるのかな?」
「太助」
「僕があの国の王だったら他国に攻め込む事なんか一片たりとも考えないけどね」

 太助はそう少し様子見か。
 私も個人的には太助の意見に近いかな。
 何より……迂闊に他国への干渉は後々面倒な事になる場合もある。
 けど、私はやっぱりフェミーの事が気になるわ。

「とにかく、この一見の最終判断は現在エルフ国に送り込んでいる諜報員の報告待ちにするわ」
「ただ正規軍はいつでもエルフ国へ出撃できるようにしたほうがいいね。最悪の場合に備えてね」

 という訳で緊急会議はひとまず解散。
 それぞれ万が一に備える事になったわ。
 
「ふぅ……」
「お疲れ様ヒカルちゃん」

 私と太助は魔王城のカフェテラスで少し一息。
 パンジーが入れた紅茶を飲み色々を考え事。
 
「ヒカルちゃん……エルフ国の内乱が起こってから、いや謁見の間で大使からの書状を受け取ってから何か辛そうだよ」
「太助……やっぱり太助にはわかっちゃうんだ」

 私は太助に大使からの書状……いやエルフ国の友達からの手紙を見せた。
 そして太助がその手紙を読み終えた。

「フェミーって……ヒカルちゃんの友達?しかもエルフ国の王女様ってヒカルちゃんって結構顔が広いね」
「うん。だけど今、彼女は苦しい立場にあるの。フェミーの恋人はダークエルフでアカウント将軍の息子なのよ」
「なんだって!!

 私は太助にファミーとはどうやって知り合ったか。
 そして、どうゆう経緯で友達になったかを太助に話し始めた。

「私の実の家族が天変地異でなくなって先代魔王様に引き取られた事は知ってるわよね」
「うん」
「そして私は先代魔王様から様々な英才教育を受けてたけど……その時、一緒に勉強したのが当時エルフ国から留学していたフェミーだったのよ」

 フェミーはエルフ国の王女として見分を広める為に魔王国へ短期留学していた時期があったの。
 最初出会った頃はあまりいい印象を持ってはいなかったわ。
 何しろ私は当時十歳、フェミーは既に百歳を超えていたのだから。
 だけど……フェミーと一緒に勉強しているうちに何処か親近感を抱くようになっていたの。
 儀が付けば私とフェミーは姉妹に近い友達になっていたわ。
 そして私が魔王になる試練を突破して魔王になったのを見届けてフェミーは留学を終えてエルフ国へ帰っていったの。

「これでも最近までは手紙でのやり取りを続けてたけど……まさかエルフ国がこんな事になったなんて」
「ヒカルちゃん」
「何?」
「ヒカルちゃんはどうしたいの?」

 そりゃ……私としてはすぐにエルフ国へ駆けつけてフェミーの危機を救いたい。 
 だけど今の私は魔王国の魔王。
 軽々しい真似はできないわ。

「ヒカルちゃん!」

 突然太助が私を睨みつける!
 そして、こう言い放った。

「まさか……ヒカルちゃん、自分が魔王国の魔王だから動けないとでも言いたいの?」
「そ、そうよ。私は魔王だもの!」
「ヒカルちゃん、一国の領主としては正しい判断だけど……そんなの僕が好きなヒカルちゃんじゃないよ!」
「えっ?」
「傍若無人で自分勝手。その癖友達が困ってる時は何も考えずに助けに行くのがヒカル・グレーズという女の子の筈だよ」
「……」

 太助は私の肩を叩く。
 そして太助は私にこう告げた。

「少しは自分の思うようにすればいいと思うよ。それが僕が大好きなヒカルちゃんなのだから」

 その言葉を聞いた時、私の決意は固まった。
 絶対にあのエルフ国の内乱には何か裏がある。
 そして裏で動いている何者かのせいで私の友達が苦しんでいる。
 もう、じっとしてはいられない。





 行くか!暗雲渦巻くエルフ国へ。
 友達の窮地を救う為に!





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...