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第四章 魔王国の日常 パート01
その十四 魔王様の夏休み 04
しおりを挟むそうこうしている内に私達の夏休みも明日で終わり。
明日には私達は魔王国へ帰らなければならない。
遊び目的で港町ウエストにいるのも今日限りだ。
「ねぇ……二人共いい加減機嫌を直してよね」
「ふ~んだ。意地汚いヒカルちゃんとは口を利きたくない」
「ヒカル……本当は私と太助ちゃんを見下してないか?」
「ううっ」
実は先日の寿司の一件で私達は太助とアンナの分まで寿司を食べちゃったばかりに二人は大激怒。
だから、あれから二人は別行動で遊ぶ事が多くて私達とはろくに口を聞いてくれないの。
あぁ、このままの状態で休みが終わったら今後の業務に支障を与えるわ。
だから今日中になんとかして仲直りしないと面倒な事になるわ。
「あれ?そういえばミルクとライトは何処にいったの」
「――――二人なら港町にあるスイーツ店に行くと言っていた。一体何をするつもりやら」
スイーツ店か。
もしかして?
そう感じた私はファブリーズとクロを引き連れてそのスイーツ店へ。
幸い港町ウエストでスイーツ店は一店しかないのですぐに見つかった。
私達はそのスイーツ店へ入ると……そこにはライト君が主導になって何やらお菓子作りをしてるみたい。
「おっ、ヒカル達じゃねぇか。丁度よかった。少し私達を手伝ってくれよ」
「えっ?」
「あの宰相とアンナ将軍に先日の寿司の礼をしたくてな。色々と準備してぇんだよ」
そうか。
ミルクとライト君は太助とアンナにお返しをしたいんだ。
そうだね。
先日お寿司をご馳走になっておいて何もお礼をしないのはダメだよね。
という訳で私達はミルクとライト君の手伝いをする事に。
それから丁度時刻はお昼頃。
クロが太助とアンナをスイーツ店へと連れてきたわ。
「ヒカルちゃん……こんな処まで連れてきてどうする気なの?」
「ふふふ……今日はこの前のお礼をしようと思ってね」
「お礼?」
「今から私達が作るスイーツのフルコースを楽しんでもらおうと思ってね💛」
私達は半信半疑の太助とアンナを客席に座らせる。
まずは私からだ。
「太助にアンナ!まずは私が自分で作ったコーンスープよ」
私はマグカップにいれたコーンスープを太助とアンナに手渡した。
太助とアンナは渋々と私が作ったコーンスープを口にした。
「!?これは」
「美味い!だけど確かコーンスープって牛乳が必要なんじゃ」
ふっふっふっ!
実はこのコーンスープに使ってる牛乳は魔王国で飼育している牛から搾った牛乳なのだ。
ようやく魔王国で牛乳が用意できるようになったのだ。
「そうか……これは魔王国の家畜から搾った牛乳か。魔王国もここまで来たんだね」
「そうだよ太助!我が国も牛乳を自給自足できるようになったんだよ。今回は特別に最初の出荷分から分けてもらったの」
「このコーンも魔王国が作ってるものかヒカル」
「そうよアンナ。もっともコーンは魔王国で生産されてるけどね」
さて、次はファフリーズね。
なんとファブリーズはホットケーキを持ってきたわ。
しかも魔王国産のハチミツたっぷりよ!
「うわぁ……ファフリーズさんって料理上手だな」
「ファフリーズのホットケーキは前にも食べたが相変わらずの豪快なホットケーキだな」
「そりゃ……独り身が長いですから(泣)」
ファフリーズの料理の腕前は豪快だけど美味しい事は聞いてたけど改めて見るご豪快なホットケーキね。
太助とアンナ曰く、これはいくらでも食べられると言ってたわね。
だけど今回はあくまで私達によるフルコース。
まだまだこれからよ!
次はクロね。
「――――私はこれを用意した。私の大好物のフライドチキンだ」
やはり出ました。
魔王国特産品の一つである鶏肉。
その鶏肉を分断に使ったフライドチキン!
ある意味我が魔王国の主食の一つなのよ。
「うんうん!相変わらず魔王国の鶏肉は美味しいね、アンナ姉ちゃん」
「流石に安定の味だな。しかもクロの香辛料チョイスもいいな」
さて、ここで私達は太助とアンナに頭を下げて謝る事に。
「太助、アンナ……昨日は御免!昨夜のお寿司を二人の分まで食べちゃって」
「本当に申し訳ありませんでした」
「――――この場を借りてお詫びする」
だけど、太助とアンナは笑顔で「許す!」と言ってくれた。
良かった。
なんとか機嫌を直してくれたみたい。
だけど……このフルコースはこれで終わりじゃないわよ!
次はメインデッシュをする事になったミルクだ。
「宰相殿、アンナ殿、先日は申し訳なかった」
「いえいえ、もう気にしていませんよ」
「寿司に対する礼は寿司で!二人にはこれからドワーフ国の寿司をご馳走しようと思う」
ミルクは太助とアンナに大きな皿を持ってきた。
その上には……それは大きなマグロ寿司があった。
普通のマグロ寿司と比べると二倍近く大きく、どちらかというと大き目のおにぎりと同じサイズであった。
「うわぁ……話には聞いてたけど大きいね」
「とても片手で食べる寿司じゃないな」
「はっはっはっ、それは両手て持って食べるのよ。バーガーやおにぎりと同じ感覚で食べるのがドワーフ国の寿司なの!」
とりあえず太助とアンナはドワーフ国の寿司を両手で掴んで口の中へ!
「ん!これは意外と」
「どちらかというとおにぎりに感覚が近いけど……これはこれで美味しいわ」
「どう?ドワーフ国の寿司の感想は」
太助とアンナは大型マグロ寿司をじっくりと味わって食べた。
そして、その感想は?
「うん!僕達の寿司とは感覚は違うけどガッツリと食べる寿司って印象だね」
「しかも結構ワサビが多めに入れてるから寿司の体面は保ってる感じだな。これはこれで立派な寿司のバリエーションとして通用するよ」
良かった!
結構評判がいいみたいね。
もっとも太助とアンナ曰く寿司には違いないけどイメージとしてはおにぎりやバーガーに近いとか。
それからミルクは太助とアンナに様々な巨大寿司を握り食べさせた。
これには太助とアンナも大満足の様子。
「ねぇミルク、後で私達にもドワーフ国の寿司を食べさせてよ」
「ダメよヒカル。今日は宰相様とアンナ将軍へのお詫びの為に用意したのだから」
あら、これは残念。
最後はライト君ね。
ドワーフ国における最強パティシエであるライト伯爵。
果たしてどんなスイーツを用意してくれるかしら。
「皆様お待たせしました!」
「おっ、来たか」
「ではライト伯爵のお手並みを拝見しますか」
そして……ライト君が持ってきたのは太助とアンナにとっては懐かしいお菓子であった。
「こ……これってまさか!」
「まさか、ライト君……君はこれが何か知ってるのか!」
ライト君が持ってきたお菓子。
それは紛れもなく太助とアンナが知るお菓子……饅頭であった!
「これはドワーフ国にあった古い書物から見つけたものを参考にして作ったものです。聞けばその書物を描いたのは昔にこの世界に来た異世界人だとか」
「成程、それにしてはかなり再現されてるねライト君」
「はい、ドワーフ国で作られた大豆を元に餡子を作り、それをもち米で作った生地で包んだものです」
そうか。
かなり昔にドワーフ国に異世界人が来訪して饅頭とかの技術を教えた訳か。
この世界って結構太助やアンナみたいに異世界から来る人が多いわね。
「では……頂きます!」
「私もひとつ」
太助とアンナはライト君が作った饅頭を食べてみる。
すると、二人の反応が変わる。
「これは……美味しいのもそうだけど、懐かしい味がするよ」
「まさか、もう二度と食べらえないと思ってたけど……間違いなくこれは饅頭だ」
あれ?
太助とアンナが泣いている。
二人して泣きながら饅頭を食べているわ。
その饅頭って、そんなに美味しいの?
「あっ、ミルク様に魔王様達の分もありますので……是非食べてください」
「えっ?本当!」
「はい、飲み物はお茶が会うんですよ」
さて、ここで私達もテーブルに座り饅頭とお茶を頂く事に。
そして……私達もライト君特製の饅頭をパクリ!
「おおっ!これは程よい甘さね」
「う~ん、流石は私の婿さんね💛素晴らしい味わいだわ」
「このモチモチ間と甘さがたまりませんわ!」
「――――素晴らしい!この世にこんな菓子が存在していたとは」
これはもう大絶賛!
恐るべし異世界人のパティシエの実力とその人が残した書物を元に見事に饅頭を再現したライト君の技量!
そして……太助ったらライト君の手を握り懇願してきたわ。
「ライト伯爵!短期間でも構わないから是非我が魔王国へ迎え入れたい」
「え、ええええええっ!」
「是非我が国にいるパティシエにライト伯爵殿のご教授をお願いした!!」
「そ……それは困ります」
あらら。
意外と太助も積極的じゃないの。
私としてもライト伯爵を好待遇で迎えたいわね。
だけど……当然彼女が黙っていないわね。
「こら~っ!ライト君は我がドワーフ国にとって大事な存在よ。それを魔王国にとられてたまるものですか!!」
「うわぁ、ミルク顔が怖いわよ」
「うるさ~い!ライト君は私だけのものよっ、絶対に誰にも渡さないんだから」
これはかなりの独占欲だ事で。
流石にミルクの迫力に太助もライト君と勧誘は断念した様子。
まぁ、考えてみればミルクって一度男に逃げられてるから猶更ライト君を手放したくないのも無理はないわ。
こうして今年の夏休みは終わりを告げる。
最後は楽しい夏休みになって本当によかった。
それから私達は魔王国へ戻り通常業務へ戻る事に。
いやぁ結構休んだから仕事が溜まってるわね。
とりあえず急いで片づけないとね。
そして、ようやく夏が終わり季節は秋。
魔王国でも収穫の秋だ。
「そろそろ我が国の農夫がひと頑張りする時期ね」
「今年は男手が戻ったお陰で田畑の整備が行き届いていたからミクシィからの報告だとどこも豊作みたいだよ」
「少なくとも今年の冬は問題なさかそうね。あぁ、こうゆう時はアンナ姉ちゃんの鶏肉丼が食べたいな」
「じゃあ今夜の夕食はそれにしない?材料はすぐに手配するわ」
忙しいけど平和な日々。
人間国も、もう暫くは自分の国の復興で大変だろうから我が国に攻め込む心配はないだろう。
当分は油断せずに軍備を整えながら収穫の時を過ごそうと思っていた時であった。
そこへ……執事のパンジーから通達があった。
「魔王様に宰相様。魔王様に緊急の謁見の要件があるとの事です」
「謁見?一体誰が私に会いに来たの」
「ドワーフ国の……今はエルフ国の外交官でしょうか。確かローブとか」
えっ?
あの女の敵のローブが?
とにかく会ってみましょうか。
そして……これが新たなる戦いの始まりだとは、この時私は思ってはいなかった。
To continue on to the next one
第五章 内乱のエルフ国
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