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第三章 ドワーフ国騒乱!
その三 コショウ問屋の一人娘・ヒカル
しおりを挟むさて、ここはドワーフ国の城下町。
この城下町は昔から様々な武具や装飾品の生産で成り立っている。
これもドワーフが怪力の割に手先が器用なのも理由といえる。
その素晴らしい武具や装飾品を求めて国内は無論の事、墓の諸国もそれを目当てに行商人が行きかいしていた。
そう、先代国王が健在だった頃までは。
「久しぶりにこの城下町に来たでど……すっかり寂れてる感じがするわ」
「ヒカ……じゃなかった。お嬢様、あまりこの町には活気を感じません」
「これでは折角のコショウも売れそうにありませんね。ま……お嬢様」
「関所も怖い兵士ばかりで抜けるのも大変でしたね、お嬢様」
そして、この城下町にやって来た四人組の旅商人ご一行。
彼等はコショウ問屋の一人娘・ヒカルとその一行である。
今回、彼等はドワーフ国へコショウの取引の為にやって来た訳であるが……まぁ、彼女達の正体は言うまでもないね💛
「とりあえず商業ギルドへ行ってみようよ」
「そうねたす……じゃなかった、助さん」
とりあえずヒカルお嬢様ご一行は城下町にある商業ギルドへ。
「ここみたいね……あれ?他の承認の姿が見えないけど」
確かに普通、商業ギルドといえば多数の商人がそrぞれ商談をしたり取引をしたりと賑わっているもの。
だけど、この商業ギルドにはそれがない。
いるのは数名のギルド職員のみである。
私は……あっ、ここではコショウ問屋の一人娘のヒカルね。
とりあえずギルド職人へこのギルドに閑古鳥が鳴いている理由を聞いてみる。
「あのう、私は魔王国でコショウ問屋やってるヒカルという者ですが……どうしたのですか?この寂しい状況は」
するとギルド職員は恐る恐る私に答える。
「えっ、知らないのですか。もうすぐドワーフ国と魔王国が戦争になるという噂を」
「戦争だって?」
「先日国王が亡くなってヌーク大臣が暫定国政を結成してからというもの……若い男は次々と兵隊へ駆り出されています」
「徴兵か……それで?」
「しかもこれは噂ですが近頃は新型と思われる麻薬も巷で出回っており町の治安も悪化している始末」
あぁ、それはクロから報告は受けてたけどここまで酷いとはね。
「せめてミルク柾とローブ様が……私個人としては信じたくはありません。あの方が自分の父親を探体したなんて」
安心して!
それは絶対に何者かによる濡れ衣だから。
「お嬢様、あれを」
「どうしたの?アンナ」
なんとアンナが目にしたのは国王暗殺の下手人としてミルクとローブの人相書きがデカデカと張られていた。
う~ん!
この人相書きって、いかにも悪人みたいに書かれてない?
ミルクって本当はもっと可愛い筈よ!
そんな中でファブリーズ……じゃなかったリーズはギルド職員に対してコショウの商談を。
「どうです?この魔王国産の最上級コショウはいいものですよ」
「はは……これは随分と値が張るみたいですね」
「今なら、この最上級コショウを……kの値段でいかがかしら?」
はは……流石は元官僚長。
交渉事には実に頼りになるわ。
だけど今回はコショウ売るのが本来の目的じゃない事を忘れないでね!
「お嬢様!とりあえず……この値段で売れました!」
「リーズ、確かにそうすれば怪しまれないけど本来の目的を忘れないで」
「はい、お嬢様」
とりあえず手持ちのコショウを取引してそれなりの金銭を手に入れた私達。
それから商業ギルドを出て暫く城下町を調べてみる。
「人が少ない感じがする。徴兵されている影響か」
「それに店も閉まってるのが多いのも気になります。後は私もアンナと同じ印象です」
「僕も人がいなくて不気味な印象だよ……ヒカルお嬢様」
こりゃ下手したらゴーストタウン寸前の廃れっぷりじゃなおの。
それにドワーフ国は本気で魔王国へ戦争をする気なの?
全く、よせばいいのに。
魔王国には現在、精鋭の正規軍や義勇兵がいるのよ。
特に航空魔導士部隊は魔王国にとって凄いアドバンテージなのよ。
正直、怪力しか能がないドワーフ国に勝ち目が無いと思うけど。
「よぉ、お嬢さんが揃って何をしてるのかな?」
「有り金全部置いていきな。なんならお嬢さん達が俺達の相手をしてくれてもいいんだぜ」
はぁ~っ。
ここでガラの悪いドワーフの皆様が数十名も。
いくら私達が綺麗で可愛いからって複数名で迫ってくる訳?
しかも皆様の手には不似合いな大斧を手にして……大斧が泣いているわよ。
「どうだい姉ちゃん。俺といい事しねぇか?」
おいおい、あの男ったら事もあろうにアンナにそんな事を。
そしてアンナの返答はやっぱり。
「口が臭いな。歯を磨いて出直してこい」
「!?なんだと~っ」
はい、ガラの悪いのが一人アンナに殴りかかって来たわ。
当然その後は?
ズバ――――ン!
哀れガラの悪い奴が一名アンナの鉄拳でぶん殴られて遥か遠くへ飛ばされて退場!
「てめえっ!やりやがったな」
「くそっ、構うか!やっちまえ」
あ~あ!
さっきの奴の末路を観なかったの?
ホントこいつ等は救いようがないわね。
こうなったら仕方がないわね。
「アンナさん、リーズさん、懲らしめてやりなさい!」
はい、この後の顛末は誰もが予想できるでしょう。
何しろ相手は国士無双クラスの実峪を持つ二人よ。
「うわあああああああああああっ」
「ひえええええええええええ3っ」
飛んでいく飛んでいく。
哀れガラの悪い連中はほんの数秒で何処かへ飛んでいきましたとさ。
「口ほどにもない」
「準備運動にすらなりませんでしたわ」
「ホントこの超人二人を相手に……バカだねヒカル様」
まぁ、こんな連だと私の出る幕はなかったわ。
しかし、このような連中が出てくるなんて余程治安が悪くなってるみたいね。
前の国王が健在だったら間違いなく衛兵がすっ飛んできて捕らえる筈なのに。
「この分だとこの城下町で安全な場所はないよ。いっそ野宿のほうが安全かも」
「助さん……それは流石に」
「それは私も反対だなたす……助さん。そうだ!確か無限バックの中に魔法結界が備わった簡易ハウスがありました」
「そうね……今夜は何処かの山奥で簡易ハウスで一泊ね」
正直この城下町で宿をとるのは危険だわ。
先程のような連中がまた来る恐れがあるし。
「じゃあ今夜はノーズ山脈で簡易ハウス設置ね」
「まぁ下手に危険な町にいるよりは安全だね」
やれやれ。
ドワーフ国に来て早速面倒な事が起こるわね。
しかも初日にして山奥でキャンプだなんて。
だけど……これはこれから起こる大波乱の序章にすぎなかったのよね。
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