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第二章 人間国の勇者と二人目の嫁
その二 黒い治癒魔法と飛行魔法
しおりを挟む「あれから全く使ってないからね。いっそ一度掃除してから義勇兵の魔導士達に開放しようかしら」
ここは魔王城の中にある魔法研究室。
様々な魔法に関する資料や魔導書が保管されている研究室。
そして、私と太助が初めて出会った場所でもある。
「とりあえず魔導書をいくらか読んでみるか」
とりあえず私は研究室の本棚から一冊の魔導書を取り出して閲覧を始める。
少し読んでいると……昔、師匠に魔導書を読んでもらった事を思い出す。
私は魔王国の農家の娘として生まれた。
幼い時はそのまま農業をして暮らすと信じていた。
あの日、魔王国を人間国の大量破壊兵器を用いて進撃を行った時に私の運命は変わった。
その大量破壊兵器は当時の魔王国を照度に変えて壊滅寸前まで追い込まれた。
私の父と三人いた私の母、そして私を除く全ての兄弟達はそれに巻き込まれて死亡した。
しかし、そんな人間国の進撃にも屈せず最後は魔王国を守り切ったのが当時の魔王。
先代の魔王は廃墟となった魔王国をその指導力で復興を果たした。
私はそんな魔王に保護されて魔王の奥さんから英才教育を受ける事になった。
それが私の師匠である。
「今でも思い出すなぁ。その時だったっけ……ルルとララに先代魔王と師匠の息子のロイドと出会ったのは」
先代魔王は一夫多妻の魔王国では珍しく妻は師匠一人だけだったらしく、その息子のロイドも自分は魔王の器じゃないと鍛冶師の修行に専念していた頃。
私は先代魔王と師匠に見込まれて鍛えられて、その実力は気が付けば魔王国では屈指の実力を身に着けていた。
そして……今から一年前の仙台魔王引退に伴う魔王決定戦で見事私が魔王の座を得た。
「だけど……私が魔王になったら先代様と師匠何処に行ったのかしら?」
私が魔王になったのと自分達の息子のロイドがルルとララと結婚し一級鍛冶師になったのを見届けた後で先代様と師匠は魔王国を去っていった。
できれば今の私やロイド夫婦の事を見守ってくれたらいいのに。
そして、先代様と師匠には是非。私の太助に会って欲しかったのに。
「おや?この飛行魔法は面白そう。それに巨大化魔法もあるんだ……使い方はっと」
調べてみると結構研究室には使えそうな魔法が記されていた。
巨大化や飛行とかも面白いが個人的に引かれたのは一連の治癒魔法だ。
これにはエリクサーの代わりに自身の魔力で様々な状態異常や治療、更に寿命以外の要因なら死者蘇生できるダーク・リザレクションもあった。
しかもこれらは魔族なら誰でも使える闇属性なのが魅力的だ。
「そうだ!これをルルとララに見せてあげよう」
という訳で私はその数冊の魔導書を手にルルとララのいる義勇兵ギルドへ。
「どう?義勇兵が飛行できたり巨大化できたりしたら面白そうでしょう」
「巨大化は使いどころは難しいけど飛行魔法は魔導士部隊に教えたら戦術の幅が広がりそうですね」
「それにこの治癒魔法ってモンクが使う治癒魔法よりも高位なものですね!しかもダーク・リザレクションは兵力の生命を救うのに最適じゃないですか」
ルルは早速魔導士を数名呼び出して飛行魔法を伝授。
半ばぶっつけ本番だがその魔導士達による飛行魔法演習が行われる事になった。
「では……総員飛行開始!」
「「「了解!」」」
演習場で魔導士達が飛行魔法を詠唱!
すると魔導士達はフワリと地面から浮かび空高く飛び上がった。
どうも上空で魔導士達が戸惑っているみたいだけど……そこは我が国が誇る義勇兵魔導士部隊の精鋭だ。
「うっはあああああああっ!」
「まるで鳥になったみたい。気持ちいい」
「そ~れ!急旋回に宙返り」
うわぁ。
流石としかいいようがない。
我が国の魔導士は素晴らしい。
あっという間に飛行魔法を完全にものにしたみたいだ。
これを地上から見ていた私とルルとララは我が国の精鋭魔導士のセンスに驚きを隠せない。
「ララ、私達も飛ぼうかしら」
「そうねルル!」
「なら……私も飛んでみようかしら」
という訳で私とルルとララもいざ大空へ!
「あっギルドマスター」
「皆!今日の処は飛行魔法に馴染む事に専念して。決して無理はしない事」
「「「了解!」」」
それから魔導士達はルルとララの指揮で飛行魔法の試験訓練を続けていた。
だ;け;ど!
私がそ~んなおままごとのような訓練マトモに受けると思ってるの?
「なっはっはっ!じゃあちょっとお空の散歩に行ってくるわよ」
「えっ?」
「魔王……ヒカルちゃん何言ってるの」
ルルとララの制止な~んか無視無視!
という訳で……行ってきま~す!
「うわぁ……ヒカルちゃん速い速度で飛んで行っちゃった」
「あそこの方向は……人間国よ!」
「「大丈夫かなぁ」」
現在私の飛行速度はマッハ四!ぶっちぎりで音速を超えて飛んでま~す!
そして、こちらは人間国のお城では?
「宰相、勇者のほうはどうだ」
「はい!現在軍事訓練で鍛錬をしております。間もなく勇者として仕上がる事でしょう」
「うむ、楽しみにしておるぞ」
な~んか余裕そうにしてるけど……ハッキリ言って無駄な努力ね。
そこへそんな皇帝の元へ一人の兵士が報告しに現れた。
「大変です皇帝陛下」
「何事だ」
「突如、我が帝国の上空に魔族と思われる存在が飛行して回っております」
「なんだと!」
はい、皇帝陛下さん急いで城の外へ。
そこでは私が人間国の大空を悠々と飛び回っていました~っ!
「ま、まさか……魔王ヒカル・グレーズ」
「あ~ら、これは人間国のおバカな皇帝陛下様。ご機嫌よろしい事で」
「!?何をしている、すぐに弓兵に命じて撃ち落とせ」
あらら~っ!
皇帝の命令ですぐに人間国の弓兵が大集結。
当然、その弓矢は私に向けられているわ。
「撃て!」
はい皇帝陛下の号令で無数の矢が私へ飛んでいく。
だけどね……そ~んなもん私に通じる訳がないでしょう!
こんなので、わざわざ魔法を使うまでもないわ!
私は大きく息を吸って~~~って!
ふぅぅぅぅ~~~っ!
「うわぁ!」
「なんて突風だ!吹き飛ばされる」
「げぇ~っ!矢がこっちに戻って来たぞ」
♪私の一息で大嵐~っ、撃たれた矢は全てお返ししま~す♪
はい、その結果戻った矢は見事に弓兵達に突き刺さり哀れ悲惨な事に。
早く治療しないと死んじゃうよぉ~っ!
「おのれ~っ魔王め!」
「おバカな皇帝陛下様、今日はここまでにしてあげる」
私は皇帝に向けて、アッカンベーしてから。
「ば~いばい!」
「こらっ、待て~っ」
私はそのまま人間国から颯爽と飛び去って行った。
ちなみに現在出している飛行速度はマッハ七!
誰も私の前には行かせないわよぉ!
だけど……人間国の地上から飛び去る私を見上げていた少女の姿があった。
その少女は前進に金色の甲冑を身に纏い腰には眩い剣を携えていた。
「あれが魔王か。そう笑っているのも今の内だぞ」
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