太助と魔王

温水康弘

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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり

その十四 ウエスト山脈大爆破!

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 あの酒池肉林となった戦勝会から一週間後。
 すっかり城下町は落ち着きを取り戻し平常運転に戻った感じだ。
 唯一変わった事は拉致されていた男達が戻り我が国はかつての活気を取り戻した事だろう。

 さ~て、今私と太助は屈強の男達数百人引き連れてウエスト山脈にいた。

「太助~っ、本当にいいの💛」
「いいよ!あのウエスト山脈の調査の結果大した鉱脈はない上、原住民もいないからね」
「それにしても太助にしては思い切った事を」
「はは、正直あの山脈は魔王国にとって邪魔なだけだしね!ヒカルちゃん、ドーンとやっちゃってよ」
「は~い💛」

 あの逆賊クロームとの闘いで判明したがあのウエスト山脈の向こう側には海岸……即ち海がある!
 もしその海を我が国の物のすれば莫大な利益が転がり込むと太助は言っていた。
 そ・れ・に・は!あの何も価値がない目の前の山脈が邪魔なのだっ。

「太助~っ、重ねて言うけど本当に大丈夫?確かこの山脈の近くにエルフ国の国境が」
「それについては僕が直々にエルフ国の大使館に話しておいたよ。もっともこっち持ちで街道を敷いてくれって頼まれたけど」

 そういえば我が国はエルフ国とドワーフ国とは国交を開いていて城下町に大使館があるのよね。
 そして先日の戦勝会は呆れて眺めてたそうよ。

「それじゃあヒカルちゃん!」
「では……ど派手にやってやりますか」

 私は一人ウエスト山脈の近くまで歩いていく。
 そして……この距離でいいかな?と立ち止まる。
 さぁ!これから世界の地形を変えてやりましょうかっ!



 私は静かに大きな魔法の詠唱を始める。
 そして私が詠唱を続けていると……ウエスト山脈の上空にとてつもなく巨大なエネルギーの塊が出現する。
 ふふふ!
 これから、あのエネルギーの塊はどんどん大きくなりますよ!

「はは……総員一時退避!」

 あれ?
 太助ったら顔を真っ青にして……引き連れていた男達引き連れて一木さんに逃げちゃった。
 本当に太助ったら心配性だな。

「さ~て、そろそろいいかしら?」

 もうエネルギーチャージはいいかしら。
 では……そろそろ爆破しますか。

「いっけ~~~っ!」

 私はその超巨大なエネルギーの塊をウエスト山脈へ叩きつける!
 それと同時に……最後の仕上げ!



 エクスプロージョン!



 その直後、ウエスト山脈は凄まじい大爆発とエネルギー波に包まれた。
 そして、その爆風は半径五十キロメートルまで届き、魔王国の城下町やエルフ国の国境近くまで影響を受けたという。
 更に諸外国まで地上から観測できる超巨大な真っ赤なキノコ雲も観測されたとか。
 だけど……本当に私としては気分爽快だ。

「あ~っ、すっきりした!」

 それから約三十分後。
 私のエクスプロージョンの影響はようやく収まり、周囲には私以外は存在していない。
 それから更に十五分後、私の元へ太助と男達が駆け寄ってきた。

「ひ……ヒカルちゃん、あれって」
「うん!エクスプロージョンを使ったの」
「エクスって、これじゃまるで核爆弾じゃないか!」
「山脈ぶっ飛ばすならこのぐらい必要よ。現にほら」

 私は山脈の方を指差した。
 これを見た太助は顔を真っ青にして唖然茫然とする。

「さ……山脈が跡形もなく消えてしまってる」
「ご希望通りあの山脈は完全に更地になったよ。さぁ、そろそろ海を見に行こう」

 どうだ!
 私の手にかかれば山脈のひとつやふたつ、跡形もなくぶっ飛ばしてやるんだから。

「……」
「ヒカルちゃん」
「ここが砂浜……そしてあれが海?」
「そうだよヒカルちゃん、もしかして海は初めて?」
「うん」

 そう、私は初めて海というものを見た。
 どこまでも広がる青い海……そして白い砂浜。
 以前本で読んで存在は知っていたが実際に見るのは初めてだ。

「うん、塩っぱいな。やっぱり海だ」
「えっ?やっぱり海の水って塩っぱいの?」
「そうだよ、試しになめてみる」

 私は太助に進めらえて海の水をなめてみる。
 塩っぱい!
 そうか、これが海か。
 それから私と太助は男達と協力してこの海と砂浜、そしてその周辺の地形を測量した。

「とりあえず人員数十人警備として残して僕達は帰ろう。帰っtら官僚達とこの海岸の開発計画を立てないとね」
「そうね……ここは我が国の海ですもの」

 そうね。
 これからはいつでも行ける我が国の海ですもの。

 あれ?
 海を見たら足がふらついてきた。
 私は思わず太助の胸元へ倒れた。

「ヒカルちゃん!」
「はは……どうもさっきのエクスプロージョンで結構魔力を使っちゃったみたい」

 私は自分の腰からエリクサーの便を取り出して飲んだ。
 すると……魔力が戻ったのか私はまた元気が出てきた。

「それって?」
「エルクサーよ。魔王国の特産品で様々な状態異常や魔力回復、それに体の傷も治せるのよ」
「へぇ、そんなのもあるんだ」
「だけど……皮肉にもこれが人間国との争いの火種なのよ」
「なんだって」

 私はエリクサーと人間国との関係を離した。
 エリクサーそのものは魔王国の他にエルフ国とドワーフ国でも生産されている万能薬だ。
 しかし魔王国程の純度と効力をもつエリクサーは存在しない。
 材料の質が著しく違うのだ。
 それに比べて人間国にはエリクサーの原材料を生産する技術がない。
 というかエリクサーに必要な薬草が人間国では育たないのだ。
 しかも今の人間国皇帝はこの大陸全土を支配しようする野望を抱いており事あるごとに魔王国以外にもエルフ国やドワーフ国へ侵攻もしている。
 故に現在、人間国は大陸内で完全に孤立しており残る国家全てから国交断絶状態が続いている。

「そうか、人間国は愛陸統一の野望を持っていて……その軍事力維持の為に強力な回復力を持つエリクサーを狙ってる訳か」
「もし人間国が他の国を侵略してエリクサーの生産能力を手にしたら面倒な事になるわ。だから我が国は人間国と敵対しているの」

 これを聞いた太助は大きく溜息をつく。
 そうね、異世界から来たとはいえ自分と同じ人間が大陸統一なんてバカな事やってるのだから。

「安心してヒカルちゃん。僕は決してあんな人間国には力を貸さないよ」
「太助」
「それより今はここを立派な港町にして魔王国の国益にするのが先決だよ。それに人間国の侵略に備えて国の城塞都市化を急がないと」

 そうね、確かに人間国の思うようにはさせない。
 こうして私と太助は初めての海を後にした。
 それにしても……太助ったら何やらニヤニヤしていたようだけど気のせいかな?




「あ~っ、海のお魚……海の幸かぁ。本当に楽しみだなぁ」





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