時司るリトルメイジ

温水康弘

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エピソード002 転売ヤーには地獄への片道切符

エピローグ

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 あの金子さんと警視総監を交えた飲み会から三日後。
 今日は専一一応解決したアニー社での一仕事に関する報告書とかの作成をしていた。
 既に学校も終わってるので社長とさもなちゃん……そして新入社員である都ちゃんも実務一家事務室で一緒に作業している。
 それからすっかり日は沈み夜が訪れたころに報告書作成はひと段落。
 俺達は集まって一息つく事に。

「宗吾、この前もらったコレなんだけど」
「あぁ、金子さんからもらったSP5のエミュレータですね」

 社長は先日金子さんからもらったSP5エミュレータ入りのUSBメモリを俺に見せる。
 実はそのUSBメモリは複数枚もらってるから内一枚を社長に、他にも都ちゃんや今ここにはいないが牧野さんにも手渡している。
 ちなみに牧野さんは……今頃自分の部屋でぐっすりと眠っているだろう。
 牧野さん、また困った事があったら頼みますよ。

「これ……かなり高性能なパソコンじゃないとマトモに動かないそうじゃないの。現に家のパソコンじゃ世代が古いせいもあって使い物にならなかったわ」
「社長の財力なら高性能なパソコン購入は簡単でしょう。今度購入したらどうです」
「そうね、今度秋葉原にでも行こうかしら」

 やはり金子さんの言う通りあのエミュレータ動かすにはかなりの高性能なパソコンが必要みたいだ。
 あれ?俺達の会話に都ちゃんが食いついてきたぞ。

「えっ?金持ちの社長が最新のゲーミングパソコン持ってないのは意外でしたわ」
「悪かったわね、都ちゃんはその最新のゲーミングパソコンを持ってるの?」
「はい!何しろこっちは最新世代のIntelCPUに最上位のRTXグラボを搭載してますから、そのエミュレーターも快適に動きますよ」
「となると都ちゃんは事実上SP5を入手できたと同じ状況になってる訳ね」
「おかげでもう店で並んだりネットでにらめっこしたりせずにすみました。光前寺さん、素晴らしいエミュレーターを有難うございます」

 確かに高性能なパソコンにあのエミュレータがあれば事実上SP5を入手できたのと同じだからな。
 普通にベビーゲーマーである都ちゃんには素晴らしい贈り物だったのだろう。

「そういえば都ちゃんの母親……再婚したそうね」
「はい!私の実の父は交通事故で亡くなりましたが母さんが再婚しましたので……私の苗字が中書島になりました」
「これはおめでよう都ちゃん」
「今後、私の事は中書島都とお呼びくださいな!」

 そっか。
 都ちゃんの親が再婚か。
 それで都ちゃんの苗字も中書島に代わる訳か。
 これはこれで明るい話題だな。
 そして……都ちゃんとは別に明るい満点の笑顔をしてるのが約一名。

「うふふ~ん!都お姉ちゃん本当に良かったね」
「ありがとう、だけど……さもなちゃんも何かいい事あったの?随分と機嫌がいいけど」
「うん!実は……本当に欲しかったものがようやく手に入ったんだよ」
「ほう……さもな、一体何が手に入ったの?」
「SP5!金子おじさんが私にくれたの」
「「えっ?SP5だって!」」

 さもなちゃんのSP5入手。
 これには社長と都ちゃんも驚きを隠せない。
 仕方なく俺は金子さんから詩型SP5の試作機を提供してもらい、そして金子さんの希望でさもなちゃんに手渡した事を社長と都ちゃんに説明した。

「宗吾!新型SP5の試作型ですって。そうゆうのあるならどうして私に渡さなかったの」
「そうですよ。さもなちゃんだけずるい!」
「はは……あの試作機は一台だけしかもらえなかったんだ。だから金子さんの希望でさもなちゃんに手渡した訳で」

 はい当然、社長と都ちゃんの敵意満々の視線をさもなちゃんに向けた訳ですが。

「さもな!すぐにその試作機を私によこしなさい」
「ダメだよ司ちゃん。もうユーザー登録しちゃったし」
「なら初期化しなさい!」
「そうよそうよ!」
「やだ!第一司ちゃんも都お姉ちゃんも金子さんからSP5のエミュレータもらったんでしょ。司ちゃんの財力ならそれ動かせるパソコン用意できる筈だし」
「けどね」
「それに都お姉ちゃんはもうエミュレータ動かせるパソコンあるんでしょ。なら無理してSP5欲しがる必要無いじゃん」

 まぁ、都ちゃんはエミュレータ動かせるパソコンあるからSP5必要ないでしょ。

「それに私、あのSP5貰う条件として動作報告とかのモニター感想文を作らないといけないんだよ」
「えっ?」
「司ちゃん、仮にも三条財閥の令嬢がライバル会社のモニター感想文を提出するのは色々と問題起こるんじゃないの?」
「ぐぬぬ」
「それに司ちゃんって、モニター案件とか面倒くさい人だからね。だからあのSP5は私が使うのが適任な訳!わ・か・る?」
「はぁ~っ、負けたわ」

 これは完全に社長の負けですな。
 社長は金持ちなんだから大人しく高性能なパソコンを確保しなさいな。
 
「社長」
「何?」
「できれば俺にも高性能なパソコンを支給を。俺もSP5のエミュレータ貰ってますから」
「なら今度の今度の臨時賞与で用意するわ。処で宗吾はパソコンはインテル派?それともAMD?」
「特に拘りはありません。それは社長にお任せします」



 さて、俺達的にSP5騒ぎは終焉となりそうだが……だが、思わぬ波乱が俺達を待っていた。



「失礼する!」
「あら?貴方は確か佐竹さんじゃ」

 あらら、ここで今回の依頼人の一人である佐竹淳さんがご乱入。
 確か佐竹さんには今回の事件の顛末は報告済みだった筈。
 それなのに何故ここに来たのやら?

「都!どうして俺達のチームを脱退した」
「あら何かと思えば……私、チームサウザンドとはキチンと脱退届出してやめた筈だけど」
「それにしては突然すぎるぞ。今度の大会には都のプレイが必要なのに」

 どうやら佐竹さん、都ちゃんを連れ戻しに来たみたいだが。
 しかも当の都ちゃん随分と嫌そうな顔をしてるぞ。
 おや?ウチの社長が佐竹さんに何か言おうとしてるぞ。

「ん?なんですか三条さん。これは俺と都との……」
「悪いわね佐竹さん。都ちゃんは……この度、私達チーム・リトルスイーパーに転属となったわ」
「な、なんだって」
「はい、これが契約書。今後都ちゃんは私達のチームメイトであり我が社の専属秘書として契約したから」

 契約書を見た佐竹さんは顔面が真っ青に。
 更に都ちゃんが追い打ちとばかりに佐竹さんにこう告げた。

「悪いわね。正直あのチーム・サウザンドの雰囲気には前々から馴染めなかったのよ」
「なっ」
「チート紛いの事は強要するし、明らかに卑怯な事をさせるわで……こんなゲームプレイなんかもううんざりよ」

 うわぁ。
 これには俺は勿論、ウチの社長がやさもなちゃんも呆れて言葉も出ないな。
 そりゃ都ちゃんも嫌気がさすわな。

「とにかく!私はもうサウザンドとは縁を切るから宜しく」
「何を言ってるんだ!とにかく戻ってこい」
「い・や・よ!」

 あ~あ、とうとう都ちゃん手から光の輪を出して佐竹さんに投げつけた。
 そして光の輪は佐竹さんを捕獲して……そのまま移動してご退場。

「「「ば~いばい~っ!」」」

 さて、煩いクレーマー顧客には退場してもらったが……おや?今度は別の方向から足音が。

「くぉぉぉらぁぁぁっ!牧野のボケは何処だっ」
「あっ、調さん」

 今度は先日の制裁からようやく復活した樟葉調さんがこっちに来たぞ。
 しかも大きなハンマー持参の上で血相変えて。

「あんにゃろ~っ!私が入院している間に私のコンピューターのフォルダーから秘蔵映像や写真を全て削除しやがった」

 あらら、それは大変で。

「それで調さん、そのコンピューターに入れていたファイルは具体的に何を」
「そりゃ~っ、私の可愛い描線の裸体写真とか映像の数々……その至高の宝をあの女はぁぁぁっ」
「「「えっ……」」」

 しっ、調さん!
 それって完全に児童ポルノじゃないですか。
 完全にアウトですよ……それ。
 現にそれを聞いた社長にさもなちゃんに都ちゃんまで後ずさりしてドン引きですよ。

「バカ調……完全に悪趣味よ」
「それってロリコンよりも質が悪いよ!」
「そりゃ見つけたら即削除でしょう」

 うわぁ、完全に社長達三人娘は調さんを変態……いや危険人物扱いだ。
 そりゃ牧野さんもそんなデータを発見したら即刻削除だろうな。

「光前寺さん!牧野の大馬鹿女は何処にいる!」
「い、今頃自分の部屋で眠ってるんじゃないですか」
「あの女……ふざけやがって絶対に地獄に落としてやる!」

 そうして調さんは鼻息荒くして本社ビルの隣にある社員寮へ。
 こりゃ寝ている牧野さんを襲撃しに行くつもりだぞ。

「社長、どうするんですか!」
「まぁ……いいんじゃない。多分返り討ちになると思うわ」
「えっ?」

 それから数分程、社員寮で何やら大きな音が響き渡る。
 だけど、その音は数分で収まった。

「静かにありましたね」
「ふふふ……そろそろバカ調を迎えに行きましょう。多分また病院へ逆戻りになると思うわよ」

 それから俺と社長と都ちゃんは社員寮へ。
 
「あら、やっぱりこうなったみたいね」
「「げげっ」」

 なんと牧野さんの部屋の玄関前には哀れぼろ雑巾にされていた調さんの姿が。
 俺はそんな調さんを抱き抱えて「何があったの」と聞いてみる。

「はは……何あの魔法は(ガクッ)」
「調さん!」
「あ~あ、やっぱりやっちゃったわね」
「えっ?どうゆう事なんですか」

 実は社長曰く牧野さんは電撃の魔法が得意で迂闊に強引な手段で起こそうとすると強烈が電撃を出してくるとの事。
 幸い俺はそれなりに手段を選んで起こしていたからそんな目には会った事は無かったが、それを聞くと実に恐ろしい。

「とにかく用のないときは迂闊に起こさないのがいいのよ」
「は、はぁ」

 まぁ、今回は本当に牧野さんには助けられたからな。
 今はぐっすりとおやすみ。
 また必要になったらお願いね。

「さて、調さんを病院に送ったら本社に帰りますか」
「そうね宗吾。仕事もひと段落したし食堂で夕食にしましょう」
「賛成です社長に宗吾さん」

 果てさて、これで今回の事件もとりあえずおしまいだ。
 金子さんの話だと来月ぐらいからSP5の大量供給が始まるそうだから転売ヤーどもの断末魔が世間に響き渡る事は間違いないだろう。
 今後は三条財閥傘下の任地堂のポチットとアニー社のSP5との健全なゲームハード競争も再会されるな。
 こちらも色々あったけど新しい仲間もできたし今後も忙しくなるだろうなぁ。
 それでは次のお話までひとまずお別れだ。
 じゃあ、皆!風邪をひくなよ、歯を磨けよ、また次のお話でな!



 エピソード002 転売ヤーには地獄への片道切符……Fin


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