時司るリトルメイジ

温水康弘

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エピソード002 転売ヤーには地獄への片道切符

第五章 可愛らしい電脳の眠り姫

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 三条スイーパーカンパニー本社ビルのお隣にある社員寮。
 元々は買い手が皆無だったマンションを丸ごと三条財閥が買収してうちの社員寮として運用している。
 まぁこれでもセキュリティは万全である。
 その社員寮の二六四号室の前に俺と社長、それにさもなちゃんがいた。

「じゃあ、マスターキーで玄関を開けるわよ」
「確か前にこの部屋に入ったのは数か月前だったような……相当汚れてるだろうなぁ」
「安心して宗吾。この前は相当散らかってたから近頃は定期的にハウスクリーニングに入ってもらってるから」

 社長がマスターキーで玄関の鍵を開き恐る恐ると玄関の扉を開く。
 うん、確かに臭い匂いもしないし奇麗な部屋だな。
 それからまずは台所へ。
 すると……やはりというか買い貯めていたらしいカップラーメンの山がぎっしりと。
 それと少し前にハウスクリーニングの方が入っていたせいか量自体は少ないが使用済みの箸や空のカップラーメンが散乱している。

「さもな、悪いけど……ここ整理してくれる?」
「うん!」

 さもなちゃんは台所の引き出しから大きなごみ袋を取り出して片っ端から割り箸や空のカップラーメンを入れていく。
 更に台所の清掃作業も始めてくれた。
 結構さもなちゃんは手慣れてる感じがするなぁ。
 さもなちゃんって将来いいお嫁さんになりそう。

「さて、ここはさもなに任せて問題の寝坊助を起こしに行きましょう」

 そうですね社長。
 では問題の寝室へ行きましょう。

「…………むにゃむにゃ……すぅすぅ」

 おやおや、寝室にある大きなベットの上でぐっすりと寝てますよ。
 しかも、かなりいい夢見ていそうな雰囲気だな。
 おまけに着ているのはピングのパジャマとは色気がない事で。
 せめてネグリジェとか大人らしい恰好で爆睡してほしいのは俺の個人的感想か。

「牧野さ~ん!起きてくださ~い!!お仕事ですよぉっ」

 俺はこの色気のない眠り姫の耳元で言い聞かせる。
 だが当の眠り姫は全く反応を示さない。

「社長~っ」
「やはり普通に起こすのは不可能みたいね。かといって前のように大音響スピーカーは周辺から苦情が来るし」
「ならばこれならどうでしょうか」

 俺は亜空間の穴を開き、それに手を突っ込む。
 そして取り出しますは高音質のヘッドフォンでござい。

「これをこの眠り姫の両耳に取り付けて……ではスイッチオン!」
「ちなみに局は私が厳選したアニメソングのメドレーよ!」
「勿論ボリュームはマックスです!」

 すると眠り姫の両耳に響き渡る社長が選んだ電波系萌えアニメソング・オンパレード!
 その中毒性が著しく高いアニメソングが大音量で両耳にボリューム・マックスで響くから当然!



「ぎょえええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ」



 やはりというべきか、眠り姫の両目がバッチリと開きベットの上を飛び跳ねている。
 社長曰く「これで起きない奴は神経つながっていない」という事。
 おやおや、眠り姫……牧野知恵さん耳からヘッドフォンを外して地面に叩きつけたぞ。

「あ~~~っ!煩~い!」
「おはよう牧野さん」
「ぐっとモーニングって……もう時刻は夜ですがね」
「あれ?社長に光前寺さんじゃないですか」

 やれやれ、なんとか起きてくれたみたいだな。
 それでは改めて彼女のご紹介。
 名前は牧野知恵といい年齢は二十歳。
 なんと彼女は飛び級でアメリカの国立大学を主席で卒業した経歴のある天才ハッカーだ。
 ただ……先程の通り救いようのない三年根太郎で一度寝たらもう何日も眠り続けるある意味我が社の問題児。
 それから俺達は部屋のリビングでそんな知恵さんに事の次第を話す事になる訳であるが。

「転売組織ですか。確かに頭に来ますね……私先日お菓子を通販サイトで購入しようとしたら売り切れで……」
「それで試しにメーカリを見たら見事に高額転売されていたと」
「そーなんですよ!折角食べたかったのに……あんまりです」

 うわぁ、転売はゲームハードだけではなく菓子まで被害を。
 転売ヤー……本当に撲滅すべきだな。

「という訳で牧野さん、すぐに出社してくれる?SP5を悪質転売してる奴等の招待を知りたいの」
「はい、わ……かり……ま……」

 あ~っ!
 この三年根太郎めっ。
 折角起こしたのにまた寝るつもりかい!

「こら~っ!寝るんじゃないわよ。せめて給料分は働きなさい」

 社長が牧野さんに往復ビンタをして寝かさないようにするが効果がないな。
 よし、ここはおたけさんから拝借した秘密兵器を導入するしかないな。
 俺は亜空間の穴を展開して中から少し大きめのポットを取り出した。
 そして取り出したポットから暖かい黒い液体をカップに移して、その液体を牧野さんに飲ませた!
 すると……牧野さんに異変が起こった。

「あれ?目が閉じないなぁ。何だか気分がハッキリしてくるなぁ」

 途端に牧野さんが立ち上がり準備体操を始めた。
 ふふふ、これは効果絶大ですなぁ。

「宗吾、貴方……牧野さんに何を飲ませたのよ」
「いやぁ、おたけさん特製濃縮カフェイン入りコーヒーの効力は凄いですねぇ」
「濃厚カフェインって……おたけさんも結構えげつないものを作ってくれたものね」
「事実上あの三年根太郎専用のコーヒーですからね。ただおたけさん曰く普通の人は絶対に飲まないようにと言ってました」
「どうして?」
「超がつく程の強力濃縮カフェイン入りですからね。普通の人が飲んだが最後、最低一週間は眠れなくなるそうですから」
「うわぁ」

 そりゃ社長も愕然とするぐらいの強力濃縮カフェイン入りコーヒーですからね。
 普通の人間なら確実に体を壊しますなぁ。
 だけど……これで彼女も完全に目が覚めただろう。

「お兄ちゃん、知恵お姉ちゃんが起きたから……今すぐここから出てってね」
「えっ?それはどうゆう事だい、さもなちゃん」
「ばぁかぁぁぁっ!今から女の子が着替えるんだよ。まさかパジャマのまま会社に行けとでも?」

 あらら、これは俺とした事が。
 女性の着替えに立ち会うなど紳士としては最低でした。
 俺はひとまず部屋の外へ出て少しの間待つ事に。

「あの色気のないのを着替えさせても大して変わらないと思うがな」

 確かに先程のパジャマ姿を見た限り失礼ながら色気の欠片もない印象が頭から離れない。
 正直その色気の無さは普段からズボラな調さんといい勝負だと思うがな。
 これならまだ子供ながらまだオシャレしている社長とさもなちゃんがまだ女性として見れるんだよなぁ。
 まぁ、あの二人に関しては断じて手を出したくはありませんが。
 子供だし。

 それから約に十分経過した頃。
 社長とさもなちゃんが「もういいよ」と俺を読んできた。
 俺は内心不安になりながら再び部屋の中へ入ってい行った。



 そこで……俺はとんでもないものを目撃してしまう!



「え、えええええええええええええええっ」
「どうかしら宗吾、女ってものは変われば変わるものよ」
「どぉ~だぁ~っ!」

 俺の眼前に……一言で表せば麗しき女神が立っていた。
 栗色のロングヘアーに水晶のような瞳。
 理想的な女性としてのボディースタイルにそれを彩るベージュ色のワンピース。
 
「し、社長……この娘さんって、まさか」
「そう、うちの信頼なるハッカー・牧野知恵さんよ」
「えっ……嘘だろ」
「前に起こして仕事させた時はジャージ姿だったでしょう。だから今回はさもなと相談して奇麗にしてみたのよ」
「お姉ちゃん本当に奇麗!」

 確かに今まで牧野さんと仕事していた時はジャージ姿だったからな。
 だけど今回まさかここまで美しくなるとは。
 
「私……こうゆうの似合わないと思ってるのですが」
「牧野さん!貴方はもっと自分の容姿に自信を持つべきよ。今後出社する時は今回のようにオシャレしなさい」
「ええっ?そ、それは」
「大丈夫だよ。もし着る服に困ってるなわ私が選んであげるよ」
「さもなちゃん……ありがとうね」
「うんうん」

 いやはや女って気持ち次第でここまで変われるものだな。
 しかもあの三年根太郎の女版といえる牧野さんがこのような美女だったとはなぁ。
 これを見抜けなかった俺の目も節穴だったな。
 俺は亜空間の穴から一凛の薔薇を取り出して美しくなった牧野さんに差し出した。

「麗しきレディ、俺がエスコートいたします。では本社のコンピューター室までご案内させて頂きます」

 だけど……牧野さんは薔薇を受け取ろうとせずに。

「私、見かけだけで判断する殿方は好みではありません。という訳で、さもなちゃんエスコートお願いね」
「は~い!」

 あらら……これは振られちゃったか。
 牧野さんはさもなちゃんの手を取って自分の部屋から出て本社ビルへと出社していった。
 ああゆう辛辣な処はやっぱり牧野さんだな。

「あはは……確かに女性を見る目が未熟だと痛感するなぁ」

 まぁ、これは牧野さんの仰る通りかな。
 最近まで彼女の事を三年根太郎の女版と軽蔑していたからなぁ。
 さて、社長そろそろ俺達も戻りましょうか。
 
「…………」
「社長?」
「それは私が貰っておくわ」

 社長は俺が持っていた薔薇の花を奪い取った。
 しかも奪い取った薔薇を手に上機嫌。

「では宗吾、今から私を本社までエスコートしてくれる?」
「えっ?」
「お願い」

 俺は少しの間悩んだ。
 だけど……社長が珍しく純粋そうな目で俺を見つめてるのを感じて、俺は社長の手を取った。
 そして俺は社長の手を握りながらゆっくりと本社へ。
 俺としては幼い妹と一緒に帰り道を歩いている気持ちであった。



 それと……気のせいか、社長の表情が満点の笑顔になっていたような気がした。
 



 
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