時司るリトルメイジ

温水康弘

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エピソード002 転売ヤーには地獄への片道切符

第四章 転売ヤーは身近に存在した

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「さて、これからどうしようかしら?」

 俺と社長、それにさもなちゃんは本社にある実務一課事務室にいた。
 とりあえず俺はさもなちゃんに先程行ってきた家電店がどうなっているのかを伝えた。

「そっか、店長さん無事だったんだ」
「その店長さん、俺達の事を知ってたらしくて……あの悪質転売ヤーを何とかしてくれって頼んでたよ」
「私、絶対に店長さんの為にもあの連中を潰す。ぜ~ったいに潰してやるんだから」

 さもなちゃん……怖い。
 店長さんの事もあるが絶対に個人的な恨みもあるんだろうなぁ。

「とにかく連中よりも先回りして取り押さえるのが一番だと思いますよ社長」
「確かにそれも大事だけど、魔族まで使ってくる辺り相手は相当な大組織よ。ああゆうのは元を絶たないと話にならないわ」

 確かにこれは社長の仰る通りなんだよなぁ。
 あれだけ大掛かりな事やって買い占めるのだから実に面倒な話だ。

「となると、やはり奴等の本拠地を突き止めて……仕置きですか」
「当然!庶民のささやかな楽しみを自分達の金儲けの為に奪うなんて……私もSP5が欲しいわよ!」

 あの連中を仕置きするのは当然として社長……子供らしく本音出てますよ。
 そりゃ社長も小学生ですからSP5が喉から手が出る程欲しいでしょうねぇ。

「そういえばバカ調がいないけど……さもな、あのバカ知らない?」
「調お姉ちゃんだったらさっき大事な用があるから一旦帰ったみたい」
「参ったわね、これからあのバカの諜報能力が必要だというのに……どこほっつき歩いているのかしら」

 確かにあの転売組織を闇雲に捜索するよりは調さんの諜報能力に頼ったほうが確実だからな。
 だけど日頃コンピューター室で引きこもっている調さんが出かけるなんて珍しい事もあるものだ。

「じゃあ、俺が調さんに連絡してみましょうか」
「お願い。すぐにあのバカを呼び戻して」

 俺がスマートフォンで調さんと連絡を取ろうとした時であった。

「だっだいま~っ!」
「あっ、調さん!」

 そこへタイミングが良いのか、調さんが実務一課に戻ってきた。
 それにしても調さん上機嫌だなぁ。

「調」
「はい社長?」
「貴方先程まで何処に行っていたの?正直に答えなさい」

 うわぁ、社長完全に調さんを疑ってるぞ。
 しかも社長完全に目が座ってるな。

「普段引きこもってる癖に貴方が何処かに出掛けるだなんて珍しい事もあると思ってね」
「社長、私だって出かける事もありますよ。今個人的な取引が終わったばかりですし」
「取引?アンタ一体どんな取引をしたの?後ろめたい事してないなら……話せるわよね」

 調さん……睨む社長相手に目が泳いでますよ。
 まさか何か後ろめたい事してたんじゃないでしょうね?

「実は先程商品を二つ取引先に発送しまして……だから一旦家に帰ってたんですよ」
「商品発送ねぇ。で、何を取引したのかしら?」
「そりゃ新品のゲームハードですよ。一つ十二万円で売れまして……それが二個売れましたから二十四万円で取引できました」

 何?ゲームハードだって。
 まさか調さん……そのゲームハードってまさか!

「まさかバカ調……そのゲームハードってSP5じゃないのかしら?」
「あら~っ、よく解りましたね社長。お陰で本日私は十四万円の儲けですよ……って社長!それにさもなちゃんまで何青筋立ててるんですか」

 し、調さん……まさか何処かからSP5を入手して転売しちゃったんですか。
 何てことしてくれたんですか!
 !?って社長とさもなちゃん完全に青筋立てて大激怒じゃないですか。

「このバカ……そのSP5を手に入れたんだったら真っ先に手渡す人間がいたんじゃないの(ボキッボキッ)」
「お姉ちゃん本当にひどいよ……手に入ってtのなら私と司ちゃんに頂戴よ(ゴキッゴキッ)」

 もう社長とさもなちゃんの怒りは大噴火寸前。
 そりゃそうだ。
 この会社にSP5を渇望しているのが二人もいる訳ですからなぁ。
 どうやって手に入れたかは知りませんが、それ二つも手に入れたら潔く社長とさもなちゃんに渡せば良かったのに目先の現金に目が眩むから。
 
「さもな、とりあえず小さなお掃除の時間よ」
「ううん、これから私の可愛い子達へご馳走の時間だよ」

 うわぁ!
 気が付けば、さもなちゃんの足元に青白く光る魔法陣が!
 そして魔法陣の中から複数疋のシルバーウルフがわんさかと。

「うふふ、み~んな!今日は悪い人肉のご馳走だよぉ」
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいっ!さもなちゃん冗談でしょう」
「じゃあ……今ここにSP5持ってきて」
「それは無理でぇ~す」

 調さん、もう命乞いは無駄ですよ。
 怯える調さんとは対照的に社長とさもなちゃんはもうヤる気満々だ。

「さもな……ゴーツゥヘル!」
「イエッサー司ちゃん!」



 アタック!



 さもなちゃんの号令と共にシルバーウルフの群れが調さんに襲い掛かる。
 結果、実務一家の事務所は調さんの血に汚れ、シルバーウルフが調さんを噛みつく音が響き渡る。
 更に調さんの叫び声と断末魔も聞こえてきた。
 この様子は正に地獄絵図が相応しい。
 俺も思わず南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏と唱える始末。
 そして、社長とさもなちゃんによる私刑……もとい仕置きが終わりを告げる。

「さもな、この辺でいいでしょう」
「うん!」
「うわぁ……これは凄いスプラッターですね社長」

 それから社長は内部通信で警備員を呼び出してズタボロになった調さんを「病院に連行しなさい」と命じて連行させた。
 後は社長お得意にリーバスタイムの魔法で荒れて汚れた実務一課の事務所を元の状態へ。
 
「ふぅ~っ、害虫駆除した後は気持ちいいものね」
「すっきりした~っ!さぁ皆、戻っておいで」

 シルバーウルフの群れを魔法陣で元の世界へ戻した後のさもなちゃんの表情はスッキリしている模様。
 それはうちの社長も同様スッキリしてるみたい。
 特に社長は日頃調さんを毛嫌いしてたから猶更だな。
 だけど……これからどうする気なんだ?
 情報収集の要である筈の調さんをこうゆう形で排除して……俺達はどうやってあの転売組織を追うつもりで?

「社長」
「何?」
「いくら調さんの自業自得とはいえ今彼女を追い出してどうするつもりですか?あの悪質転売組織を潰すには調さんの能力が不可欠ですよ」
「ふふふ!宗吾、忘れたの」

 あれ?
 何故か社長が余裕そうな表情を?
 ……ってまさか!

「そうよ、うちにいるじゃないの……もう一人」
「ま、牧野さんですか」
「そう!あのバカとは違って私が信頼しているハッカーよ。ただ扱い辛いのが難点だけどね」
「大丈夫ですか?あの三年根太郎みたいなのを」
「だけど、いざ起きればあのバカ調よりも頼りになるわ」

 あぁ、やはりというべきか。
 この三条スイーパーカンパニーに属するハッカーが二人いる訳ですが……一人は先程悪事発覚により天罰が下った調さん。
 そして、もう一人が牧野知恵という女性。
 社長は牧野さんを信頼しているのだが……俺が正直扱い辛い彼女はやや苦手意識があるんだよなぁ。
 見かけは可愛いんだけどな。

「で、今回はどうやって起こす気ですか?この前みたいに大音響スピーカーでやりますか」
「あれは周囲の住民から苦情が来たから却下ね。もっとスマートな方法で起こしましょう」
「なら……俺に考えがあります。おたけさんにある物を作ってもらいましょう」



 さて、我が社には色々な人間が在籍しているがいずれも一癖も二癖もあるのばかり。
 今回はその一人が初登場になる訳だが……果たして?




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