時司るリトルメイジ

温水康弘

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エピソード002 転売ヤーには地獄への片道切符

第三章 買い占め被害は甚大なり!

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「ここか」

 依頼者達との楽しい昼食を楽しんだ俺と社長。
 それから早速、白いフェラーリを乗り俺と社長は午前中さもなちゃんが酷い目に会った家電屋へ。
 本当はさもなちゃんも一緒に同行させるべきだったが、また先程の悪夢を思い出させるのは酷という事で俺と社長で行く事に。
 俺と社長が問題の家電屋に到着したのは午後三時ぐらい。
 店は午前中に起こった出来事が原因なのか今日はもう臨時休業になっており店の出入口には数名の警察が。

「やはりというか……結構荒らされてる印象だな」
「見て宗吾、あのバカ刑事コンビもいるわよ」

 おやおや、そこには俺達にとってお馴染みの二人組。
 関目警部と野江刑事の凸凹セットがいやがる。

「げっ、光前寺にクソガキ!」
「どうやらコイツ等も一連の事件を追っているみたいですね警部」

 関目警部のクソガキ発言にうちの社長はムスッと膨れている。
 けど俺はそれに構わず関目警部から話を聞いてみる事に。

「くっ、本当はお前達なんか話す事はないのだが例のお前等のとこの会長が圧力かけてきたせいで上からお前達に協力しろとお達しだ」
「これはどうも!では現状そちらが解ってる事を聞かせてくださいな。何しろこの件ではうちの仲間が被害に会ってますから」

 さて、関目警部から話を聞いてみると……なんとまぁ今朝さもなちゃんが酷い目に会ったような事が現在東京中の家電店で起こっているそうだ。
 手口も全て予めパイプ椅子を設置してからバリアーを展開して他のお客様を入れないようにして開店時間直前に構成員がやって来て強制的に買い占めるという手口だ。
 しかも逆らう奴が出たら即刻暴力で排除する所まで同じだという。

「もう犠牲者は五十人を超えているんだ。酷いのだと今でも入院している奴もいる」
「うわぁ」

 今の魔法技術が発達して治癒魔法で大抵のゲガなどすぐに治療されるご時世で暴行が原因で数日以上も入院してるなんて相当な目に会ったみたいだな。
 余程重い病気にかかってる訳じゃあるまいし。

「今まで死亡者が出なかったのが俺が考えても奇跡に近いな。だがこれが今後エスカレートすれば……」
「死亡者が出る可能性もある訳ね。たかが遊び道具でここまでやるものね宗吾」
「呆れた……それしか言いようがないですよ社長」

 本当に俺としても呆れた連中だと思う。
 正直、転売だなんて他人の弱みに付け込んで金をせしめるだなんて最低の金儲けだよ。
 しかも今回のように強盗紛いのやり方で商品買い占めるとかなぁ。

「本当、何が悲しくて川の水せき止めて高く水を売りさばくなんて悪徳商人そのものじゃないの。私でもそんな金儲けは外道よ外道!」

 うわぁ、典型的な守銭奴社長ですら外道と言わせるとは……転売ヤーって人間やめてるんじゃないか?
 そこへ、俺達の元へ頭に包帯を巻いた男が姿を現した。

「すみません……あなた方は何方でしょうか?」
「私はこうゆう者です」

 俺は自分の名刺を男に手渡した。

「なになに?三条スイーパーカンパニー実務一課主任・光前寺宗吾って、まさか今巷て有名な影のポリス・三条スイーパーカンパニーの!」
「そうですが……貴方は一体?」

 すると今度は男が俺と社長に名刺を手渡した。

「あれ?貴方この店の店長さんで」
「はい、あぁ!遂に影のポリスが動いてくださるのですね!」

 この店長さん、俺と社長の手を握り感激しているみたいだ。

「ううっ、実はうちのチェーン店ほぼ全てでアイツ等の被害を受けているのです!このままではSP5がお客様の手に渡りません」
「実はアニー社の一派から依頼を受けております。小物転売ヤーは面倒見切れないけど今朝ここを襲ったような悪質なのは必ず叩き潰してあげるから大船に乗ったつもりでいなさい」
「お願いします!正直無能な警察では話になりませんので!」

 おいおい!
 今、俺達の傍にその無能な警部と刑事がいるんだぞ。

「あの店長……」
「我々警察を何だと思ってるのでしょうか」

 あ~あ!
 やっぱり怒ってる。
 ここは俺が宥めるのを兼ねてちょっと聞いてみたい事が。

「そういえば関目さん、連中が使っていたトレーラーですが何処へ行ったか解かりますか?」
「残念ながらこちらが駆けつける前に逃げられてたからな……だが三日前に一回だけ覆面パトカーがそのトレーラーで買い占めてる現場を見かけたから尾行したんだ」

 あら?一応追跡しようとしてたんだ。
 警察の中にもそれなりに有能なのもいるんだな。

「それで結果はどうなったのかしら?」
「実は追跡途中で何者かに襲われてな……結局そいつにパトカーぶっ壊されて尾行断念となったよ」
「どんな奴に襲われたのかしら」
「追っていた刑事からの証言だと襲ったのは一人でかなりの大男だったそうだ。しかも頭に角があったような」

 得体の知れない角の生えた大男。
 恐らく、そいつは魔族だな。

「社長、どうやら連中は魔族と契約しているみたいですね」
「これはかなり厄介ね。またカヤちゃんの助けが必要になるかも」

 今度の標的の中には魔族がいるのか。
 まぁ、その魔族に出くわした刑事さん達はお気の毒としか言いようがないな。
 何しろ原則として人間が魔族に勝てる訳がないからな。
 とりあえず俺はその襲撃者が魔族の疑いがあると関目警部と野江刑事に伝える。

「うげ~っ、魔族か」
「そうなると面倒ですね警部。やはり魔族と契約しているメイジかリトルメイジを」
「だが現在警察と契約している魔族契約者は皆無だからな……どうしよう」

 あらら、これはお気の毒。
 現状警察は明らかに魔法使える人材が不足してる訳か。
 増してや魔族に対抗できる魔族契約者は皆無という現実。

「社長、それなりに収穫がありましたがこれ以上は情報は望めそうにありませんね」
「確かにもう長居は無用ね。では、私達はこれで失礼するわ」

 俺と社長は店の店長に挨拶をした後でここを後にしようとした。
 店長は「どうかお願いします!」と頭を下げてたなぁ。
 もっとも関目警部と野江刑事は「こら!私達は無視か」と吠えていたが……お前達にそんな事言う義理はねぇ。



 そうだ、俺も社長も……あの時の事は絶対に忘れねぇからな。




 それから俺は社長を載せて白いフェラーリを疾走させる。
 とりあえず今回の仕置き対象で判明している事は転売商材としてSP5を悪質な手段で買い占めて暴利を貪っている事。
 そして奴等は厄介な強さを秘めた魔族を従わせている事。 
 しかも相当数の一味みたいだな。
 とにかく一旦本社に戻ろう。
 
 とりあえず現状を整理しよう。
 まぁ……そこでとんでもない事が起こるとは、この時俺は考えもしていなかった。


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