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第二章「契約更新は慎重に」
16.新しい生活と困ったひと
しおりを挟む九遠堂でのアルバイトをはじめて、およそ二週間が経過した。
これまでの出勤回数は全三回。朝から出かけて夕方までを椎堂さんの小間使いとして生活している。
九遠堂という特殊な店の店主と、週末のたびに顔を合わせるようになって、わかってきたことがある。
僕の十六年分の平凡な人生のなかで、出会ってきた「大人」といえば、学校の先生や両親、親戚くらいでバリエーションに乏しいのは認めるが、「椎堂さん」を定義できるカテゴリは未だに発見できていない。
少なくとも既存の鋳型にはまらない存在であることは、この短期間でよくよく理解できた。
雇用主と労働者の上下関係はこれまで経験がなく、生まれてはじめて選択的に結ぶ。だからこそ僕の認識が未熟なのは認めよう。世の中は果てのない大海のごとく広く、街では多種多様な人々がひしめき合うものだ。
しかし、それを抜きにしても。
――椎堂さんは、珍奇で偏屈で、たいへん困った人である。
九遠堂の店主の生態に、彼の営む風変わりな日常に、驚き呆れるたびに僕はこらえきれず、苦言を呈することもある。
「椎堂さん、それはないんじゃないですか?」
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