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そんなこんなで初デート(4)

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 宿を出てからは、主導権をレフィーにバトンタッチした。何せレフィーから今日のプランを聞いていないので、委ねる他ない。
 今は控え目にレフィーの腕につかまり、並んで幅の広い通りを行く。シクル村の凸凹した道と違い、王都の石畳は平坦で歩きやすい。機械仕掛けの跳ね橋に、街の中心ですと言わんばかりの店舗の並びよう。現在地は多分、中央区の中央通りだろう。
 ここは前世の感覚で言えば、『中世ヨーロッパ風の都市』なんだろうなと思う。街行く人の格好もそれ風で、当然スーツ姿の人なんて一人もいない。高層ビルもないから、エレベーターで「ドキッ 憧れのあの人と二人きり」なんてシチュエーションも発生しない。本当、なんて残念な世界に生まれ変わってしまったのか。

(ううん、諦めては駄目よ。オフィスラブを私が広めればいいのよ)

 そう、前世で『ファンタジーの定番』なるものが存在したように。ここではオフィスラブを異世界の物語として流行らせればいい。
 ぐっ
 私は心の中で拳を握った。

「そういえば、ミア。あの場面では、私が差し出した腕にミアが掴まるはずでは?」

 心の中でだけ握ったはずが、どうやら本物の手もレフィーをぎゅっとやってしまったらしい。
 刺激に反応したレフィーが、私を振り返る。

「あれは、レフィーがいきなり魔法なんて使うからでしょ。って、ああもう地から戻らない。これまでどうやって猫被ってたんだっけ……」
「まあ、もう戻らないでしょうね」
「言い切られた!」
「ミアは今、私とデートがしたいと思っていますし、私と結婚も悪くないなと思い始めているはずですから」
「うん、そうね?」

 唐突に飛んだ話に、意図がわからないままにも、事実だから頷く。

「死ぬことに仕方がないかと思ってしまえるミアは、もういません。もうミアは「これまでのミア」をやりたくないんです。元からやりたくなかったことを、やる必要もなくなった。それはやる気も出ないでしょう」
「それは……でもレフィーが望むように、街にいる間はちゃんとやろうとは思ってて……」

 本題に帰ってきたレフィーの推測に言い訳しながらも、実際はできていないので声が尻すぼみになる。
 最後は最早モゴモゴ言っていただけの私を、先程からレフィーにじっと見られていて、つらい。
 うぅ。無言の責めは止めて欲しい……と思ってチラ見すれば、予想とは違い彼は「おや?」という顔(微妙な変化)をしていた。
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