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容疑者多過ぎ問題が発生しました。(1)

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 リヒト王子との最後の晩餐から数日後。私は自宅で催されたサロンへ招待されていた。
 学園に入学したということで、社会勉強の一環としてお母様が開いて下さった。内輪だけの半ばホームパーティーのようなそれであるが、そうだとしても初のサロン。私は緊張しながら、談話室に足を踏み入れた。
 途端、その足が固まった。

(うーん……美男美女だらけのサロン!)

 そういえばヴィオレッタな今の私が美少女なのだ。それを考えれば然るべきというか何というか……親戚一同、顔面偏差値が総じて高い!
 私は虚無の表情で、我が家のサロンに集まった面々を眺めた。
 将来私が恋するらしい相手と今日にでも出会うかも。そんな淡い期待を胸にやって来たものの、これでは誰も彼もが疑わしい。誰と恋に落ちても素敵な恋物語になりそう。困った。
 ゲームでヴィオレッタは、「好きな相手がいる」としか言わなかった。つまり恋人に成り得ない男性だった可能性もある。――いやそれどころか、格好いい女性も多いのでそちらの可能性も出て来た。
 まさに老若男女が容疑者として乱立状態。唯一わかったのは、リヒト王子の「整った容姿」は私の育った環境において、ポイントにはならないということだけだ。

(モテモテタイプとクール仕事人間タイプの組み合わせな辺境伯家のご兄弟に、事業が成功して今勢いのある子爵家の跡取り息子……。うーん、見れば見るほどわからない!)

 『みんなちがって、みんないい』。そんな前世で有名だった詩の一節が、頭を過るばかりである。

「ヴィオ。久しぶりだな」

 目的の人物を探し出す取っ掛かりさえ見つけられないでいた、そんな中。二つ年上の従兄弟、ランセルが私に声を掛けてきた。

「ランセル、あなたもいらしてたのね」

 振り向いて、彼を見上げる。

(確かランセルは百八十六センチあるんだっけ。なるほど、これは長身だわ)

 顔の良し悪しよりも先に、つい身長に注目してしまった。勿論、顔は当然良い。
 ランセルは、サッパリとした短い黒髪に優しい印象の緑の瞳。騎士なので体付きはたくましい。彼に守られたい、その腕に包まれたいプレイヤーも少なくない、『あな届』の攻略対象の一人である。
 私の方も、リヒト王子の次に推しだった。グッズはリヒト王子の分しか集めていなかったものの、漁った薄い本の二割はランセルだ。

「面子を見ればわかるだろ。サロンと称したお前の入学祝いパーティーだ、俺も来るさ」
「やっぱりパーティーなのね……お母様ったら」

 半ばホームパーティーどころか、まるっとそうだったとは。まあそんな気はしていたけれどね。だって、どう見ても意見交換というより立食パーティーの会場だもの、ここ。
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