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第二章 フラグ判定確認中
ナツメの提案(1)
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宿で隣部屋の美生が再び出掛けたのを見送り、私はここへ来る際に持ち込んだ大きめの鞄の側にしゃがみ込んだ。今朝邸を出る間際に思い出し、頼んでおいたロイくんから先程受け取ったものだ。
鞄の中身を取り出して検める。男性物の上着、下穿き、そして帽子。うん、私の要望通りの内容だ。
(これを着れば、美生たちにバレずに尾行できるわね)
センシルカは騎士団が駐在しているので、私たちは明日にはここを発つことになる。今日はこの後、ミウとカサハが買い出しに出掛けることになっていた。
クジ引きで決まった二人だが、そこは乙女ゲーム。一人はヒロイン、もう一人が現時点で最も好感度が高い攻略対象が当たる仕様となっている。よって私は前もって、こうして準備ができたわけだ。
私は早速着替えるべく、立ち上がって今の服を椅子の背にでも掛けようと室内を見回した。
コンコンコン
と、そこへ外から扉をノックする音が鳴る。
「アヤコさん、いますか?」
次いで聞こえてきたナツメの声。まだ出入口付近にいた私は、そのまますぐ扉を開けた。
返事をしないままにそうしたせいだろう、驚いた様子のナツメがそこに立っていた。
「あ、驚かせてごめん。丁度、ここにいたものだから。それでどうしたの?」
扉を開け放ったまま、彼に尋ねる。
「それが、そこで会ったロイさんに、これをアヤコさんに渡すよう頼まれまして」
「うん? あっ、外套。なるほど、気が利くわね」
ナツメから外套を受け取り、私はそれを広げてみた。
これなら身体の線が隠れるので、より男装がそれっぽくなって見えることだろう。
「それを渡された意図がわかる辺り、今アヤコさんが持っている衣服も彼が用意したものですか?」
「そう、ちょっと変装する必要があって。ロイくんの服を借りたのよ」
「……は?」
「数時間使うだけの服を調達してもらうのもあれだなと考えてて、そこでそういえばロイくんと私はほとんど身長が同じなことを思い出したのよね」
「却下です」
「え?」
一瞬何と言われたのかわからず反射的に聞き返している間に、素早く衣類と鞄をナツメに取り上げられる。
空になった手を見ること数秒。ナツメの手に移った変装セットを見て、数秒。
それでもナツメの意図がわからず、私は呆けたままに彼を見た。その顔がどこかふてくされて見えるのは、何故なのか。
「えっと、何で?」
「何でって……」
ナツメの手でロイくんの服が適当に鞄に押し込められる。鞄は外套と一纏めに、入り口側の壁際に置かれた。
「その……ああ、ほら、自分の服が女性に丁度合っているのを実際目にしたら複雑ではないですか? 彼は多感な年頃ですし」
「あー……」
ナツメの返答に、忘れていた記憶が蘇る。
あれは中学生のときのこと。成長期を迎えグングン身長が伸びていた、とあるクラスメイトの男子がいた。彼は新調した学ランをどうだと自慢気に見せてきて、ついでに貸してもくれたものだから、私はそれを何となく着てしまった。で、ピッタリ着こなしてしまった。彼は……泣いた。
ロイくんが自身の身長を気にしているという設定は無かったが、単に美生の方が背が低いので話に出なかっただけかもしれない。新たな地雷を発掘してしまう恐れもあるので、ナツメの言う通り止めておいた方が賢明そうだ。
鞄の中身を取り出して検める。男性物の上着、下穿き、そして帽子。うん、私の要望通りの内容だ。
(これを着れば、美生たちにバレずに尾行できるわね)
センシルカは騎士団が駐在しているので、私たちは明日にはここを発つことになる。今日はこの後、ミウとカサハが買い出しに出掛けることになっていた。
クジ引きで決まった二人だが、そこは乙女ゲーム。一人はヒロイン、もう一人が現時点で最も好感度が高い攻略対象が当たる仕様となっている。よって私は前もって、こうして準備ができたわけだ。
私は早速着替えるべく、立ち上がって今の服を椅子の背にでも掛けようと室内を見回した。
コンコンコン
と、そこへ外から扉をノックする音が鳴る。
「アヤコさん、いますか?」
次いで聞こえてきたナツメの声。まだ出入口付近にいた私は、そのまますぐ扉を開けた。
返事をしないままにそうしたせいだろう、驚いた様子のナツメがそこに立っていた。
「あ、驚かせてごめん。丁度、ここにいたものだから。それでどうしたの?」
扉を開け放ったまま、彼に尋ねる。
「それが、そこで会ったロイさんに、これをアヤコさんに渡すよう頼まれまして」
「うん? あっ、外套。なるほど、気が利くわね」
ナツメから外套を受け取り、私はそれを広げてみた。
これなら身体の線が隠れるので、より男装がそれっぽくなって見えることだろう。
「それを渡された意図がわかる辺り、今アヤコさんが持っている衣服も彼が用意したものですか?」
「そう、ちょっと変装する必要があって。ロイくんの服を借りたのよ」
「……は?」
「数時間使うだけの服を調達してもらうのもあれだなと考えてて、そこでそういえばロイくんと私はほとんど身長が同じなことを思い出したのよね」
「却下です」
「え?」
一瞬何と言われたのかわからず反射的に聞き返している間に、素早く衣類と鞄をナツメに取り上げられる。
空になった手を見ること数秒。ナツメの手に移った変装セットを見て、数秒。
それでもナツメの意図がわからず、私は呆けたままに彼を見た。その顔がどこかふてくされて見えるのは、何故なのか。
「えっと、何で?」
「何でって……」
ナツメの手でロイくんの服が適当に鞄に押し込められる。鞄は外套と一纏めに、入り口側の壁際に置かれた。
「その……ああ、ほら、自分の服が女性に丁度合っているのを実際目にしたら複雑ではないですか? 彼は多感な年頃ですし」
「あー……」
ナツメの返答に、忘れていた記憶が蘇る。
あれは中学生のときのこと。成長期を迎えグングン身長が伸びていた、とあるクラスメイトの男子がいた。彼は新調した学ランをどうだと自慢気に見せてきて、ついでに貸してもくれたものだから、私はそれを何となく着てしまった。で、ピッタリ着こなしてしまった。彼は……泣いた。
ロイくんが自身の身長を気にしているという設定は無かったが、単に美生の方が背が低いので話に出なかっただけかもしれない。新たな地雷を発掘してしまう恐れもあるので、ナツメの言う通り止めておいた方が賢明そうだ。
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