上 下
15 / 18
第3章 テコーダール国

2

しおりを挟む
「記憶を消された?」

師匠が何故そんなことをしたのか…

「俺らの意識?をリルが感じちゃうと居場所とかバレるから?とか何とか言ってたよ」

「リルがちゃんと魔法使いとして育つまで存在を消す方が良かったんだよ。エヴァさんを責めるなよ」

うんと頷く。責めるも…師匠はもういないから。

「それが6年前だったかしら?いきなり記憶が戻ったの」

その時また声だけだったが、色々説明してくれたらしい。誓約の話もその時に聞いたみたいだ。

「あの馬鹿王子の記憶消したからリルは大丈夫だよな?」

「え?あっ…うん」


「今日は着いたばかりで疲れたろ。ゆっくりお休み」

「そうね、一緒に行きたい所もあるし会わせたい人もいるから」

「はい…」





ベッドに入って寝ようとしてもなかなか寝付けなかった。エヴァがかなり動いてくれてたのもはじめて知った。
エヴァが亡くなった時自分で感情に蓋をしたからか、誓約を解けるのを待ってしまったからか…もっと早く自分で探せたのかも?6年前なら今みたいに複雑に感じなかったかなと思いながら目を閉じ無理やり寝ることにした。



「リルおはよう。まだ顔色悪いかしら?」

「お母さんおはよう。私は大丈夫」

「ご飯食べる?」

「うん」

部屋から出て母親と一緒にご飯を並べてるテーブルまで行く。

「おはよう」

「お父さんおはよう」

こんな日常的な挨拶も何年ぶりなんだろ。懐かしくもあり少し恥ずかしくなる。4人分の準備があるがルークがおらずルークは?と聞くと

「ルークは別に住んでる」

「後で来るわ」

そうなんだと思いながら、朝ご飯を食べる。こんなちゃんとした朝ご飯も久しぶりだった。

──美味しい

ほっと胸のあたりが暖かくなるのを感じる。家族がいて一緒にに暮らす、こんな普通の事が幸せに感じるなんて…






「…おはよう」

ふにゃふにゃとした声がしてびっくりすると

「あら起きたの?リリーナ・・・・

「こっちにおいで」

トコトコと歩きお父さんの膝に乗る8歳くらいの女の子。戸惑っているとその子がリルを見て

「誰?知らない人?お客さんなの?」

「リリーナ、ちゃんと話しただろ?お前のお姉ちゃんだよ」

「えー知らない」

「リルごめんなさいね、いきなりでびっくりしたわよね。この子あなたの妹のリリーナよ」

とハンナはリリーナをジャンの膝から抱っこして言う

今、目の前でおこってる事に動揺しているが長年の蓋のおかげで表には出てない。

「知らない!お姉ちゃんなんていらない!!」

リリーナはぷいと顔を背け拗ねる。子供らしい可愛いい仕草で父母も宥めながら笑ってる。


──ズキッ

3人のやり取りはまるでお芝居で、リルはものすごく遠くからそれを見ている観客だった。
食事も途端に喉を通らなくなりごちそうさまと言うのがやっとだった。

しばらくするとルークが来てその中に混ざっていく。

「リル!紹介したいやつがいるんだここに呼んでいい?」

「…うん」

「ルークもそんな知らない人と喋らないで!!」

「リリーナお前のお姉ちゃんだろ?」

「だから知らないってば!!」



──ズキッ




「はじめまして。フレッドって言います」

手を出して握手を求めてきたのはルークと同じ歳頃の背の高い男だった。

「はじめまして…リル…です」

「魔法使いなんてはじめて見たけど見た目は変わらないな」

「フレッド!それは言わないって」

「あっごめん!お城行くまで内緒だったな」



──お城…?


「困りますよ。王子!びっくりさせるつもりだったのに…」
「全くだ。この国は大丈夫か?」
「フレッドさまも遊んで~」




──ドクンッ



鼓動は早くなって目の前が真っ暗になり世界が回る…






…リルは倒れた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【R18】絶倫にイかされ逝きました

桜 ちひろ
恋愛
性欲と金銭的に満たされるからという理由で風俗店で働いていた。 いつもと変わらず仕事をこなすだけ。と思っていたが 巨根、絶倫、執着攻め気味なお客さんとのプレイに夢中になり、ぐずぐずにされてしまう。 隣の部屋にいるキャストにも聞こえるくらい喘ぎ、仕事を忘れてイきまくる。 1日貸切でプレイしたのにも関わらず、勤務外にも続きを求めてアフターまでセックスしまくるお話です。 巨根、絶倫、連続絶頂、潮吹き、カーセックス、中出しあり。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと

恋愛
陽も沈み始めた森の中。 獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。 それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。 何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。 ※ ・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。 ・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。

私の恋が消えた春

豆狸
恋愛
「愛しているのは、今も昔も君だけだ……」 ──え? 風が運んできた夫の声が耳朶を打ち、私は凍りつきました。 彼の前にいるのは私ではありません。 なろう様でも公開中です。

【完結】悪女のなみだ

じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」 双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。 カレン、私の妹。 私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。 一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。 「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」 私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。 「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」 罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。 本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。

処理中です...