22 / 23
22
しおりを挟む
皇宮からの帰りの馬車はロベール家ではなくパルマ公爵邸に向かっていた。
皇宮からさほど離れていないところにあるパルマ公爵邸にはすぐ着いた。
馬車の扉を門番が開けロベール侯爵が降り話をすると屋敷から執事が出てきてまた何か話をしていた。
「降りていいよ」
父親に手を引かれ馬車を降りると入口からまっすぐ走ってくるカールが見えた。
「カール様!どうして学園は?」
「ディアンヌが休みと聞いて、なんだか嫌な予感がして…とりあえず飛び出して…」
ディアンヌの手を取って説明するもしどろもどろになってしまった。
執事がとりあえず中へと案内して全員屋敷の中に入る為歩き出した。
「カール、この前はミアが申し訳なかった」
「いえ、侯爵様に頭を下げてもらうことではないですから」
「いやさすがに…普通にびっくりする提案だっただろ?」
「まあ…はいそうですが…」
笑い話になってしまうほど、ミアの暴言はありえなかったとロベール侯爵は再度謝罪をした。
屋敷の中に入り応接間に通され待っているとパルマ公爵が入ってきた。
「上手くいきましたか?」
「とりあえず陛下は1度考えると即決は避けられた」
そうかと頷きながらパルマ公爵はカールの横に座った。執事がお茶を運んで来て全員の前に置いていく。
パルマ公爵が1番先に1口飲んでから
「ディアンヌは安心して我が家に来てくれればいいから」
「はい。ありがとうございます。でも…」
ディアンヌが不安そうに両親を見たので
「ディアンヌ、私たちの事は気にしないで。今まであなたを優先できなかったから今は親らしいことをさせて欲しいの」
「お母様」
「さて、今後のことをもう少し詰めて話しておこうか。カールとディアンヌは庭でも行っておいで」
「分かりました。ディアンヌ行こうか」
「はい」
カールが手を引いて応接間を出た。
パルマ公爵邸の庭はかなり広かったが手入れの行き届いた花壇は素晴らしかった。花を見ながら歩いてベンチに座り今日あったことをカールに伝える。
「私が皇宮仕えとしてアルベルト様のお側に行けば良かったのだと思うのですが…あまりにも出来が悪いので…」
「それは違うぞディアンヌ」
「お父様とお母様に全てを任せて私だけ今までと同じように過ごしていいのでしょうか?」
カールをまっすぐ見つめディアンヌは続けて話す。
「私だけ何もせず…このまま…」
下を向いてしまったディアンヌを横から肩を抱いて自分の方に引き寄せる。
「…カール様!」
「ディアンヌがアルベルトの側に行って幸せになるのは…アルベルトだけだ。でも侯爵の案だとしあわせになれる人が多いよね」
ディアンヌはそのまま考えているがカールは一気に話を進める。
「侯爵はゆっくりしたいと仰っていて、ミア様も周りから詮索されることもない。私の両親もディアンヌがきてくれることを望んでいる。何より私がディアンヌと一緒になれて嬉しい」
1度ディアンヌを離し両肩を持って自分の方に上半身を向かせる。
「もちろんディアンヌもだよね?」
にっこり微笑んで聞かれたので、首を縦に振った。
「ではより幸せな人が多い案を選ぶ方がいいよね」
──いいのかしら…私がその道を選んでも…
「いいよ。ディアンヌが幸せになる為にみんなが動いているのだから甘えてしまおう」
今日何度目だろうか、人の優しさに触れ涙があるれてくるのは…
ポロポロ流れる涙を止めることもできずただ、はいと答えるしかできなかった。
カールはハンカチをだしディアンヌの涙をふく。
「親たちも話まとまったみたいだよ」
ベンチに向かって歩いて来ている執事を見つけカールは親たちの意見もまとまっただろうと思った。
「戻ろう」
すっと手を出しディアンヌをエスコートして屋敷の中に戻って行った。
応接間に戻ると親たちはにこやかに歓談しており2人に気がつくと
「カールもディアンヌは学園に戻りなさい。後はこちらに任せなさい」
「お任せします」
「お父様お母様、よろしいのですか?」
「大丈夫だよ。こちらの段取りも確認できたし、後は皇帝陛下の出方次第だ」
「悪いようにはならないよ」
パルマ公爵は紅茶を飲みながら笑う。
皇宮からさほど離れていないところにあるパルマ公爵邸にはすぐ着いた。
馬車の扉を門番が開けロベール侯爵が降り話をすると屋敷から執事が出てきてまた何か話をしていた。
「降りていいよ」
父親に手を引かれ馬車を降りると入口からまっすぐ走ってくるカールが見えた。
「カール様!どうして学園は?」
「ディアンヌが休みと聞いて、なんだか嫌な予感がして…とりあえず飛び出して…」
ディアンヌの手を取って説明するもしどろもどろになってしまった。
執事がとりあえず中へと案内して全員屋敷の中に入る為歩き出した。
「カール、この前はミアが申し訳なかった」
「いえ、侯爵様に頭を下げてもらうことではないですから」
「いやさすがに…普通にびっくりする提案だっただろ?」
「まあ…はいそうですが…」
笑い話になってしまうほど、ミアの暴言はありえなかったとロベール侯爵は再度謝罪をした。
屋敷の中に入り応接間に通され待っているとパルマ公爵が入ってきた。
「上手くいきましたか?」
「とりあえず陛下は1度考えると即決は避けられた」
そうかと頷きながらパルマ公爵はカールの横に座った。執事がお茶を運んで来て全員の前に置いていく。
パルマ公爵が1番先に1口飲んでから
「ディアンヌは安心して我が家に来てくれればいいから」
「はい。ありがとうございます。でも…」
ディアンヌが不安そうに両親を見たので
「ディアンヌ、私たちの事は気にしないで。今まであなたを優先できなかったから今は親らしいことをさせて欲しいの」
「お母様」
「さて、今後のことをもう少し詰めて話しておこうか。カールとディアンヌは庭でも行っておいで」
「分かりました。ディアンヌ行こうか」
「はい」
カールが手を引いて応接間を出た。
パルマ公爵邸の庭はかなり広かったが手入れの行き届いた花壇は素晴らしかった。花を見ながら歩いてベンチに座り今日あったことをカールに伝える。
「私が皇宮仕えとしてアルベルト様のお側に行けば良かったのだと思うのですが…あまりにも出来が悪いので…」
「それは違うぞディアンヌ」
「お父様とお母様に全てを任せて私だけ今までと同じように過ごしていいのでしょうか?」
カールをまっすぐ見つめディアンヌは続けて話す。
「私だけ何もせず…このまま…」
下を向いてしまったディアンヌを横から肩を抱いて自分の方に引き寄せる。
「…カール様!」
「ディアンヌがアルベルトの側に行って幸せになるのは…アルベルトだけだ。でも侯爵の案だとしあわせになれる人が多いよね」
ディアンヌはそのまま考えているがカールは一気に話を進める。
「侯爵はゆっくりしたいと仰っていて、ミア様も周りから詮索されることもない。私の両親もディアンヌがきてくれることを望んでいる。何より私がディアンヌと一緒になれて嬉しい」
1度ディアンヌを離し両肩を持って自分の方に上半身を向かせる。
「もちろんディアンヌもだよね?」
にっこり微笑んで聞かれたので、首を縦に振った。
「ではより幸せな人が多い案を選ぶ方がいいよね」
──いいのかしら…私がその道を選んでも…
「いいよ。ディアンヌが幸せになる為にみんなが動いているのだから甘えてしまおう」
今日何度目だろうか、人の優しさに触れ涙があるれてくるのは…
ポロポロ流れる涙を止めることもできずただ、はいと答えるしかできなかった。
カールはハンカチをだしディアンヌの涙をふく。
「親たちも話まとまったみたいだよ」
ベンチに向かって歩いて来ている執事を見つけカールは親たちの意見もまとまっただろうと思った。
「戻ろう」
すっと手を出しディアンヌをエスコートして屋敷の中に戻って行った。
応接間に戻ると親たちはにこやかに歓談しており2人に気がつくと
「カールもディアンヌは学園に戻りなさい。後はこちらに任せなさい」
「お任せします」
「お父様お母様、よろしいのですか?」
「大丈夫だよ。こちらの段取りも確認できたし、後は皇帝陛下の出方次第だ」
「悪いようにはならないよ」
パルマ公爵は紅茶を飲みながら笑う。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
結婚相手の幼馴染に散々馬鹿にされたので離婚してもいいですか?
ヘロディア
恋愛
とある王国の王子様と結婚した主人公。
そこには、王子様の幼馴染を名乗る女性がいた。
彼女に追い詰められていく主人公。
果たしてその生活に耐えられるのだろうか。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
夫と親友が、私に隠れて抱き合っていました ~2人の幸せのため、黙って身を引こうと思います~
小倉みち
恋愛
元侯爵令嬢のティアナは、幼馴染のジェフリーの元へ嫁ぎ、穏やかな日々を過ごしていた。
激しい恋愛関係の末に結婚したというわけではなかったが、それでもお互いに思いやりを持っていた。
貴族にありがちで平凡な、だけど幸せな生活。
しかし、その幸せは約1年で終わりを告げることとなる。
ティアナとジェフリーがパーティに参加したある日のこと。
ジェフリーとはぐれてしまったティアナは、彼を探しに中庭へと向かう。
――そこで見たものは。
ジェフリーと自分の親友が、暗闇の中で抱き合っていた姿だった。
「……もう、この気持ちを抑えきれないわ」
「ティアナに悪いから」
「だけど、あなただってそうでしょう? 私、ずっと忘れられなかった」
そんな会話を聞いてしまったティアナは、頭が真っ白になった。
ショックだった。
ずっと信じてきた夫と親友の不貞。
しかし怒りより先に湧いてきたのは、彼らに幸せになってほしいという気持ち。
私さえいなければ。
私さえ身を引けば、私の大好きな2人はきっと幸せになれるはず。
ティアナは2人のため、黙って実家に帰ることにしたのだ。
だがお腹の中には既に、小さな命がいて――。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
離婚したらどうなるのか理解していない夫に、笑顔で離婚を告げました。
Mayoi
恋愛
実家の財政事情が悪化したことでマティルダは夫のクレイグに相談を持ち掛けた。
ところがクレイグは過剰に反応し、利用価値がなくなったからと離婚すると言い出した。
なぜ財政事情が悪化していたのか、マティルダの実家を失うことが何を意味するのか、クレイグは何も知らなかった。
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる