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29 対面

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一瞬一人複雑になっていたが、引きずらずすぐに元のシルヴィに戻っていた。

少し元気にはなっていたが、落ち込んでいたローズをそのまま打ち合わせに行かせるのは心配だったが、行かないでとはさすがに言えず、二人を送り出しクラスの飾り付けなどの準備をして食堂で待っていた。


──ローズがリオネルの事で落ち込むなんて、好感度上がっているってことよね

──でもリオネルに誰かが迫るなんて考えてもなかった…しまったわ。

ウロウロしたり椅子に座ったり立ち上がってまた座り…

落ち着かない様子で待っていると後ろに人の気配を感じ振り返る。

「アラン遅かっ…」




「殿下…」

そこにはアランではなくフレデリックが立っていた。
思わず左手を後ろに隠してしまい目を向けられた。

「私を誰かと間違えたのか?」
「申し訳ございません。人を待っていたので…」
「ふーん」

シルヴィの横をゆっくりと通り向かい側の椅子に座ったフレデリックに、いつまでも背を向けている訳にもいかず、くるっと振り返り頭を下げその場から離れようとする。

「シルヴィ」

低くゆっくりと名前を呼ばれ、立ち止まるしかなかった。
フレデリックの方に目を向け下を向いたまま様子を伺う。

「ブレスレット…やっぱり違う物だよね?ネックレスは今は外しているか…」

学園で無くしては困るのでネックレスはつけていなかった。



「まあいいか。そうそう君のクラスの実行委員二人はとても優秀だね。二人はとても息があっていた」

「あれがアランだよね?君と仲がいい」


──ズキッ

胸が痛み胸に手を当てる。


「この学園の実行委員って結ばれる二人が多いのは知っているか?」


キュッと下唇を噛みしめた。

──殿下は何が言いたいの?




「あの二人はお似合いだね」

ばっと顔をあげフレデリックを見ると頬杖をつきイタズラな顔をして笑っている。

「何が仰りたいのか…」

かろうじて声を絞り出すシルヴィを見てさらに笑いながら、ゆっくりと立ち上がり大きく一歩進みシルヴィの左手を掴む。

「このブレスレットは捨てろ。ついでにアランとも…」





フレデリックがシルヴィに近づき話かけた瞬間、シルヴィの身体は後ろに引っ張られた。
その瞬間にフレデリックの手が離れた。


後ろにいるのが誰か分かっていたが顔をあげて確認する。



──ああやっぱり…


顔を見た瞬間の安堵感はそのまま声に乗る。

「アラン!」

アランはシルヴィを見てニコッと微笑んですぐフレデリックを睨む。



「何をしている私の邪魔をするつもりか」

「…シルヴィに構うのはやめてください…その他は邪魔はしません」




しばらく睨み合っていた二人だが、先にフレデリックが力を抜いた。

フッと口端だけあげて笑い両手を広げおどけたようにアランに尋ねた。

「その他…ね…」


「お前にそのつもりはなくても周りがそうは言わないだろ?」

笑ってはいるが目は冷静な眼差しだった。

「…周りとはなんでしょうか?約束を守っていただけるのでしたら、私は殿下の邪魔はしません」




頭上で行われている会話を聞いてシルヴィは二人の顔を見る。

──微妙に話がズレているけど…内容もなにかおかしくない?



「お願いします。シルヴィには関わらないでください」

シルヴィを自分の後ろ側に動かしフレデリックから見えないようにする。

「…それはお前に指図されることではない」
「殿下!!」

食堂での言い争いは目立つ。その中心にいるのが第2王子ならなおのこと目立つのだ。ザワザワと周りが騒ぎ始め目線も集めていた。
シルヴィがアランの腕を引っ張る。

「アラン!殿下と喧嘩なんてダメよ」
「…」

「殿下申し訳ございません。これ以上の騒ぎは殿下にとってもいい事ではありませんよね?私たちは失礼します」

「ああそうだね。でも騒ぎになって困るのはアランだね…」

アランはフレデリックを睨むが、シルヴィが腕を引っ張り急いで食堂から出ていく。






焦って飛び出したので中庭に出てしまったシルヴィは奥にあるベンチまで進みアランを座らせた。

「アラン…どうしたの?殿下にあんなに…」
「シルヴィ…殿下に近づかないでって言ったよね?」
「今日はアラン待ってたんだから自分から行った訳じゃないわよ」
「それでもすぐ逃げて」
「逃げるって…」

座ったまま下を向きいつもより小さく見えるアランを心配して、肩に手を置こうとした瞬間、腰にアランの手が周りグッと引き寄せられた。
ちょうどお腹にアランが顔をつけている状態になりシルヴィが慌てる。

「ちょっとアラン!」

真っ赤になりアランの腕を外そうとするが力強く回された腕は動かない。

「僕はシルヴィがいればそれでいいんだ。それ以外はいらない…」
「アラン!お願い離して!」

「アラン!!」

シルヴィが叫ぶ声で我に返り、抱きしめていた力が弱くなった。瞬間シルヴィがアランの肩を強く押して後ずさる。

顔は真っ赤になり目に涙を溜めたシルヴィを見てアランは慌てて立ち上がり一歩近づく。

「シルヴィ…ごめん…僕」
「もう…もうアランなんて知らない!!」

シルヴィはくるっと向きをかえ、アランから逃げた。アランが手を伸ばしたが間に合わずものすごい速さで行ってしまった。




──もう…なんなの!

──アランなんてアランなんて!!


ゆっくりと足を止めたシルヴィは何故か溢れる涙を止めることができず顔を手で覆った。






「シルヴィ?何をしているの?」

声をかけられそちらを見るとマルクが驚いた顔をして近づいて来た。
シルヴィは涙をふいて言い訳を考える。

「なんでもないです。目にゴミが入って…」
「嘘ついてもしょうがないでしょ」

ため息を吐きながらまた紙の束を頭に落とされるがそのまま顔を隠すようにしてくれていた。

「案外優しいのですね。マルク様」
「案外って何?僕は完璧なんだよ」

「ねじ曲げて考えて一人空回りしてるんでしょ?」
「違います」
「まあ深く考えないでシルヴィらしくいればいいんじゃない」

「マルク様…」
「何?」

「ありがとうございます」
「別に…慰めたわけじゃないから!」

手をヒラヒラさせて去っていくマルクを見て、テンプレのようなツンデレぶりに思わず笑ってしまった。

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