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22 訪問

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湖での一件以来領地での黒い塊の目撃談は無くなった。トリスタンは執務室で説明を聞きながら胸を撫で下ろすが、なぜ自分の娘が狙われていたのか分からない為最低限の警戒は続けるように指示を出していた。

シルヴィからはもう大丈夫だと聞いているが、二度も巻き込まれている。心配するなと言われても無理な話だ。
母親のフィナはシルヴィはどう転んでも結果一番いい状態になるからと楽観視している。

──心配事は増えるばかりだ。アランと早く婚約でもしてもらって落ち着かせないと…



◇◆◇

ローズたちが領地に来て1週間が経っていた。その間、都会では味わえない自然の中でキャンプをしたり、自分たちで料理をしたりと充実した日々を送っていた。
元々マルクは3日程の滞在予定だったが、思いのほか楽しくギリギリまで残っていたので今日一人先に帰る予定だ。

「お世話になりました。本当にありがとうございます」

子爵夫妻に挨拶をしてからシルヴィたちを見て

「また学園で」

と言って馬車に乗り込み去って行った。

「あっさりしてるよね」
「まあまた会うしね」

「ローズ達もあと少しだけなんだよね」
「一応家にも戻らないと」

少し困ったように微笑むローズを見逃さなかった。

「帰りたくないのならいても大丈夫よ」
「大丈夫よ。ありがとうシルヴィ」

「僕も今日は別宅行ってくるね」
「アラン?」
「ちょっとね。夕方には戻るから」

そう言ってアランは馬で出かけて行った。

──ここ何年か行ってなかったのにな。

そう思いながらアランの去った方を見ていたらローズとリオネルが同時に声をあげた。

「「フレデリック様!!」」

びっくりして振り返るとフレデリックが馬上からにっこり微笑んでいた。

「やあ、まだいたんだね」





屋敷は途端に忙しくなった。
前ぶれなく王子が現れた為全ての仕事を止めて対応に回る。

「視察で隣町まで来たからいるかなと思ってね。急に来て悪かったね」

笑ってはいるが本当に急すぎて笑って出迎えたシルヴィの口元は引きつっていたかもしれない。
スミスが急いで応接間に案内をして、フィナが挨拶をしている。トリスタンは仕事に出てしまった後だった為呼び戻しの使者は出したがいつになるかは分からない。フィナが挨拶を終え応接間を出てからシルヴィたちは中に入った。

「いや本当に不意に思い出してね。ローズたちに会いたくて」
「フレデリック様」

ローズがフレデリックの前に座り微笑む。

「ああ、そんなに長居しないから気を使わなくて大丈夫だよ」

シルヴィを見ながら微笑む王子に

「かしこまりました」

と作った笑顔を向けた。

──こんな所までローズを追って来るなんてね。絶対ローズに近づけないわよ!



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