上 下
13 / 14

おまけ2

しおりを挟む
「貴方…地味ですわ!!」

 高等部にすすんだソフィアが、学園の食堂で友人のシャルル・キャンベル侯爵令嬢とお茶を飲んでいると、いきなりそう言われる。

「…私ですか?」

「そうよ!!なぜ貴方のような人が殿下の横に並びますの!!恥ずかしくないのかしら」

 数日前に合同で行われた卒業式典に、2人並んで正式に婚約者として人前に出てから何かと言われる事は増えていた。しかしここまではっきりと本人目の前にして言われたのは初めてである。

 彼女はブランカ・パーシー伯爵令嬢。後ろに3人ほど従えてソフィアたちの前に立つ。

「この世の人とは思えないほど美しい殿下なのよ!!本来でしたらもっと相応しい方もいらっしゃるし自分から辞退するのが正しいのではなくて?いくらなんでも貴方では…地味すぎるわ!!」

良くて!!と勢いよく1人で喋りさっさと食堂から出ていった。

「なに?今の…確かブランカさんよね?」

シャルルがブランカが出ていった方を見ながら呆れる。


──地味…


◇◆◇


 学園から帰ってきて自室に籠る。鏡を見ながら

──地味…地味って

ずっと自分はエドワードに認めてもらえてない、自分はダメだと思ってきたソフィアは、相応しくないと言われてもさほどショックも受けないが…

──それなりに肌も綺麗にしてきたし、髪の毛もいつも手入れしてもらってるし…でも顔とかはどうしようもないものね…?

「ソフィア様学園で何かありましたか?」

「ダリア。私って地味なのかしら?」

ボソッと言った一言だったが、はあ?何を言ってるんですか!!誰に言われたんです!!とメイドたちが騒ぎ出したので、慌てて大丈夫よと誤魔化したけど…失敗したわ…






「ソフィア!!学園で何があった!!」

「お父様大丈夫ですわ。何もございません」

「ダリアから聞いたよ!私の愛しのソフィアに誰が何を言ったのか!学園に抗議の手紙を…」

「ですから大丈夫ですわ」

こうなるとは思っていたが、何度も言っても聞いてもらえなかった。




 次の日、スタンリー伯爵筆頭に朝からメイド総出で準備をされる。

「私のソフィアが1番輝くようにしてくれ!!」

「お嬢様の可愛らしさを全面に出して誰もが振り返るように!!」


ものすごく気合いの入った出で立ちに恥ずかしくなる。

──どうしましょ…



◇◆◇



「ソフィア。今日はすごいわね」

「シャルル言わないでくださいな」

確かに皆様振り返りますわ…舞踏会に行くようなドレスですものね…と。





「ドレスを派手にしても何も変わりませんことよ。貴方本当に…それで殿下の横に立てますか?」

「ちょっとブランカさんそれは…」
 
「シャルル待って」

ソフィアはブランカと向き合って

「私の努力が足りないのは分かってます。エドワード様に迷惑がかからないように気をつけますわ」

「大丈夫かしら?貴方にそれができて?」

「今まで以上に努力します!」






「それならよろしいですけど…では貴方、明日の休みはお暇かしら」

「え?」

その場にいた全員がびっくりする。





「お暇ですわね。では明日我が家にいらして!」

ブランカはまた1人で喋って出て行った。



──私今招待していただいたのかしら…?


 なんとも言えない顔をしてシャルルの方に振り返ると肩を少しあげて頑張ってと突き放された。



◇◆◇


 「ソフィア様…私も一緒に行って大丈夫なんでしょうか」

「ブランカさんから一緒にってお誘いいただいてるから…それに近くにいてくれると私が安心するわ」

「かしこまりました」


 馬車がパーシー伯爵家前につく。緊張して降りるとパーシー家の執事が待っていてすぐに案内してくれた。

「ようこそ」

「招待ありがとうございます。ブランカさん」

上から下まで見られ、ふーとため息をつかれる。

「あなたがソフィアさん付のメイドかしら?」

「はっ…はい!」

ダリアがガチガチに緊張しながら答えると


「これがダメなのよ!!」

「「  !!  」」

「スタンリー家のメイドは可愛いを際だたせるのは得意みたいですけど、それではあの美しい殿下と並んだ時に合わないでしょ!!」

ブランカが持っていた扇をパチンと閉じるとズラっとメイドが並ぶ。

「やってあげて」

ニヤリと笑うブランカが見えた。





ものすごい速さでドレスを脱がされ、別のドレスを着せられ、髪型、メイクも全てやり直しお茶を飲んで待っていたブランカの前に立った時にはソフィアはかなり疲れていた。


「少しは見れるようになりましたわね」

「ブランカ…さん?あの…」

ドレスも今まで着てた色より少し濃いめで、デザインも身体のラインを少し強調した物。メイクもポイントを濃くして、いつものソフィアよりかなり大人っぽく仕上がっている。無理してる感じはなくソフィアによく似合っていた。ダリアはずっと何かを書いてブツブツ言っている。

「それでもやはり貴方が殿下の横に立つには物足りませんが…」

「私美しい人を見るのが好きですの。アイザック様とリザベル様なんて本当に理想ですの。貴方ももう少し…」

「あの…ブランカさんは私がお嫌いなのかと…」

キョトンとした顔でブランカが見てくる。

「そんな事一言でも言いましたかしら?何もせず殿下の横にいるのが我慢できないと言っただけですわ」

「でも、私が助言した次の日には少しは変える努力はされてましたし、殿下に相応しくなるように今後も努力されるんでしょ」

「でしたら私最大限手伝ってさしあげてよ。ソフィア」

ブランカのようにはっきり物言う人が近くにいなかった為、ソフィアは驚かされてばっかりだが

「よろしくお願いいたしますわ。ブランカ」

その後もブランカは喋り続け、ソフィアも楽しく過ごした。




 その後学園では、可愛いをおすシャルルと大人っぽく綺麗にを勧めるブランカの間でソフィアが困ったように笑う事が多くなった。











月1のお茶会にて、ブランカプロデュースで出かけたソフィアを見て、エドワードが卒倒しかけたのはまた別の話である。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

愛する婚約者の君へ。

水垣するめ
恋愛
 私エレナ・スコット男爵令嬢には婚約者がいる。  名前はレイ・ライランス。この国の騎士団長の息子で、次期騎士団長だ。  金髪を後ろで一束にまとめていて、表情と物腰は柔らかく、とても武人には見えないような端正な顔立ちをしている。  彼は今、戦場にいる。  国の最北端で、恐ろしい魔物と戦っているのだ。  魔物との戦いは長い年月に及び、この国の兵士は二年、最北端で魔物と戦う義務がある。  レイは今、その義務を果たしているところだ。  婚約者としては心配なことこの上ないが、次期騎士団長ということもあり、比較的安全な後方に置かれているらしい。  そんな私の愛する婚約者からは、毎日手紙が届く。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

処理中です...