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やり直しのプロポーズが成功した次の日からレオンは騎士団員としての通常業務に戻っており、ずっと公爵家にいる訳にも行かず屋敷に戻った。
クレアも一緒に戻りたかったが、ベアトリスから色々叩き込まれておりまだ戻れる状態ではなかった。

昼食後今日は特に何も予定がないと聞いていたので1度屋敷に戻ろうかと思っていたら、メイドが呼びにきた。

「お客様です」

「私にですか?」

誰だろ?と階段を降りていくと、そこには久しぶりの愛しい弟と父親がいた。

「お姉様!!」

クレアの顔を見てルイスが走り込んでくる。受け止めたクレアがびっくりして

「ルイス走ってはダメよ。」

「早くお姉様に会いたくて」
「クレアごめんね。もう少しゆっくり来るつもりだったんだけど…」
「お父様はこの前お姉様に会ってるからいいですけど、僕は…寂しかったんです」

うるうると目に涙をためて上目使いの弟が可愛くてクレアはギッュと抱きしめる。

「ルイスちょっと会わない間に背が伸びた?」

「そんなにすぐには伸びないですけどすぐにお姉様を越しますよ」

腕の中にちょうどいい大きさで収まっていたのが、少し背が伸び目線が変わっている。このままでもいいのにとも思うが立派な男性になったルイスも見てみたい…完全に母親目線のクレアだった。

「あら仲か本当にいいのね」

ベアトリスが後ろにいたのでクレアは弟ですと紹介した。

「ルイス・ブランドンと申します。いつも姉がお世話になっております」

「クレアは私の娘になるから貴方も息子同然よ。これからもよろしくね」

その瞬間ルイスの顔が少し曇る。口元は笑っているが目は鋭くなっていた。
リーフェンが応接間に案内してくれて4人でお茶を飲むことにした。
それぞれ席に座った頃、ウォルターが顔を見せる。

「ウォルター貴方も一緒にどう?」

「はじめまして。君がクレアの弟君かな?」

「…はじめまして」

目を細めじっとりと見ながら小さい声でウォルターに向き合う。

「安心して。クレアの相手は私じゃないよ」

あまりにも態度があからさまでウォルターは笑いながら握手する。

「ルイス失礼でしょ!ウォルター様申し訳ございません」

「いいよ。大好きなお姉様取られるんだからそうなるよ」

「クレアの相手は別な方だよルイス。だから私はあの時一緒に帰ればって言ったのに…」

マシューまで拗ねた言い方するのでクレアは恥ずかしかった。

「もう2人ともいい加減にしてよ?」

クレアが父親と弟に向かって怒りだしそうだったのでベアトリスが笑いだし

「皆さん揃ったので今日の夕食はうちで食べましょう。もちろんレオンも呼んでね」

「ベアトリス様…」

「楽しみだね。レオンがどう対応するか見ものだな」

ウォルターは既に想像して面白がっていた。



お茶を飲み終わったあと、クレアの部屋に父親と弟を案内する。

「いい部屋だね」
「お姉様この屋敷が働いてるところ?」
「違うよ。クレアが働いてるのは別のところだね」
「へー」

「…2人ともさっきのは何?もうお世話になっているベアトリス様やウォルター様に失礼でしょ」



「ルイス貴方ももう少し大人になって…」
「だって僕に黙ってたよね?今までは全部僕が潰してきたのに」
「潰してきたとか何?」

大きく息を吐き手を腰にあて首を振る。

「お願いだからレオン様にへんな事言わないでよ」
「レオン様…ね…」

ふーんと拗ねてソファーに座り考え込むルイスの隣に座りギュッと抱きしめてから顔を覗き込む。

「ルイス貴方が大事な弟ってことはずっと変わらないわよ」

「お姉様…でもまだ早いよ。まだ僕だけのお姉様でいて欲しい」

──もうなんて可愛いの私の弟は…

「結婚なんて早いよ、ね?」

「ルイス…でもね」

うるうるの瞳で見つめられ言葉につまるクレアだが、はいやめますとは言えないのでどうしようと頭を抱える。

トントンとノック音がして扉が開くとレオンが立っていた。

「レオン様もう戻られたのですね」

「ああ、母上から知らせを受け取って…」

クレアが扉まで迎えにいき、レオンが中に入る。中にいる2人に近づき、まずマシューに挨拶をする。

「ブランドン子爵わざわざありがとうございます。ご挨拶遅れてすみません」

「いや、この前はお世話になったね」

そしてソファーに座ってるルイスの前まで足をすすめるとルイスが立ち上がる。

「ルイス…かな?はじめまして」

「…いつも姉がお世話になっております」

緊張してるのか、感情のない小さな声でボソボソと喋るルイスに、コラっとレオンの後ろからルイスにしか見えない位置でクレアが怒っている。
ルイスはレオンの横をすり抜けクレアのそばまで小走りで移動してクレアに抱きつく。

「ルイス?」

「レオン様…怖い」

「え?ちょっと何言い出すのルイス」

焦るクレアにレオンは申し訳ないと言う顔をしながら

「私は子供には怖がられることが多いから…すまない」

「そんなレオン様は何も…」

クレアがルイスを離してレオンの方に向こうとすると、ルイスはくるっと周りレオンとクレアの間に入り込みクレアの胸に顔を埋めて肩を震わせる。

「ルイス…?」

そのままクレアを押してレオンとの距離を遠ざける。

──まさか…ルイスってば!

顔を覗き込むとルイスは舌を出してから
『認めないよ』ってクレアにだけ呟いた。
後ろでレオンがどうすればいいのか戸惑っていると、いつから見てたのかウォルターが口元を押さえ肩を震わせる笑っていた。

「完全に嫌われたな、レオン」

「は?嫌われた?」

「そんなことないですよ!ルイス貴方いい加減に…」
「お姉様!僕レオン様怖い!!」

あははとウォルターが笑い、レオンは困惑し、クレアは信じられないと弟を見て、ルイスは上目遣いにざまぁと言う顔をし、あーあと頭を抱えるマシューはその場から逃げようとしていた。


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