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ベアトリスにやり直しを命じられて、レオンは頭を抱えていた。確かに花束もなくプレゼントも用意せず勢いに任せての告白には違いないが、やり直すとなるとさらに勇気が必要となる。甘い雰囲気などどう演出すればいいか皆目見当もつかないのだ。
「やれやれ情けないな。私がアドバイスしてあげようか?」
ウォルターがクスクス笑いながらレオンに話しかける。
「結構だ!自分でなんとかする」
「見ものだね。楽しみにしてるよ」
笑いながら去ろうとするウォルターに静か聞く。
「…クレアの事本気だったのか?」
振り返ったウォルターと目が合う。ほんの少し間を置いて
「誰かさんがモタモタしてるくらいならと思っただけだよ」
ふふっと笑いその場を去って行った。
クレアは部屋でベアトリスとお茶を飲んでいた。
「これで完全に私の娘になるわね。長かったわ」
扇で口元隠して笑っている。
「ベアトリス様…あのご主人様にはやり直しとか無理だと思うのですが」
「無理とか関係ないの。さすがにダメ」
お茶を飲みながら息子のダメっぷりを思いだし眉間に皺を寄せる。
「クレアは楽しみに待てばいいのよ。欲しい物あれば今のうちに頼みなさい」
お茶を飲み干しカップを戻した時、リーフェンが呼びに来た。夜会に向けて準備や確認することなどベアトリスが関わる仕事は多い。
「また来るわ」
そう言ってベアトリスはリーフェンと出ていった。
1人残されたクレアはノラが持ってきてくれた荷物の中から小さな箱を取り出す。以前ニコルからもらった箱だった。蓋を開けるとまだあの時のまま中の花は綺麗である。
話を聞いてからずっと悩んでいた。会わない方がいいのか会うべきか。
──ニコル様…。
「入ってもいいか?」
考え込んでいたのでノックの音に気が付かなかった。迷ったレオンが扉のところから声をかける。
慌てて箱の蓋を閉めそっと隠すようにしまいレオンのところまで行く。
「気が付かず申し訳ありません。ご主人様どうぞ…」
「また戻ってる…」
「え?あっレオン様どうぞお入りください」
レオンが少し拗ねてるように入ってきた。クレアは照れている。
「母上に言われて反省した。本当にすまない」
「私は気にしておりません。ご主…レオン様」
「すぐのやり直しは無理なので少し待ってくれるか?」
「やり直し…するんですか本当に」
してもらったとクレアが言えばそれでいいと思うが、レオンが気にしてるのでもうお任せにすることにした。
「先程…見てた箱は?」
たいした物ではないと誤魔化そうかと思ったが、箱を取りに行きレオンの前で蓋を開ける。
「以前ニコル様からいただいた物です」
「…そうか」
そのまま沈黙の時間が少し流れたが、クレアが箱の蓋を閉めレオンにお願いする。
「ニコル様に会わせていただけますか?」
「クレアは…大丈夫か?」
「はい。レオン様が後ろにいてくださるのなら大丈夫です」
ニコルの名前が出て険しくなっていた表情が一気にほどける。
「任せてくれ…」
クレアの体調などを考慮して少し後にニコルと面会をする事にした。レオンはその手続きに王宮に戻る。部屋を出る前
「今欲しい物はないか?」
と聞かれたが特に思いつかずクレアが考え込んでいると、笑顔のレオンに抱きつかれ
『考えておいてくれ』
と耳元で囁かれ、クレアが膝から砕けた。
◇◆◇
届いた1通の手紙を開いた。中には公爵家への招待状と短い手紙が入っていた。
「はあ?何これ?」
その声に手紙を持ってきたリサがびっくりして振り返りルイスを見る。マシューは何かを察し部屋から出ていこうとしている。
「聞いてないし、納得出来ないんだけど…お父様コソコソしてないで説明してもらえます?」
「ルイス…手紙にはなんと書かれていたのかな?」
「分かってますよね?お父様」
あまりの迫力に座り込んだマシューを上から氷のように冷たい目で見下ろして口元だけは笑ってるルイス。
「リサ。返事を書くので用意を!少し早めに行かせてもらおうかな。ねえお父様」
ルイスは一気に手紙を書き、旅支度をはじめた。
「やれやれ情けないな。私がアドバイスしてあげようか?」
ウォルターがクスクス笑いながらレオンに話しかける。
「結構だ!自分でなんとかする」
「見ものだね。楽しみにしてるよ」
笑いながら去ろうとするウォルターに静か聞く。
「…クレアの事本気だったのか?」
振り返ったウォルターと目が合う。ほんの少し間を置いて
「誰かさんがモタモタしてるくらいならと思っただけだよ」
ふふっと笑いその場を去って行った。
クレアは部屋でベアトリスとお茶を飲んでいた。
「これで完全に私の娘になるわね。長かったわ」
扇で口元隠して笑っている。
「ベアトリス様…あのご主人様にはやり直しとか無理だと思うのですが」
「無理とか関係ないの。さすがにダメ」
お茶を飲みながら息子のダメっぷりを思いだし眉間に皺を寄せる。
「クレアは楽しみに待てばいいのよ。欲しい物あれば今のうちに頼みなさい」
お茶を飲み干しカップを戻した時、リーフェンが呼びに来た。夜会に向けて準備や確認することなどベアトリスが関わる仕事は多い。
「また来るわ」
そう言ってベアトリスはリーフェンと出ていった。
1人残されたクレアはノラが持ってきてくれた荷物の中から小さな箱を取り出す。以前ニコルからもらった箱だった。蓋を開けるとまだあの時のまま中の花は綺麗である。
話を聞いてからずっと悩んでいた。会わない方がいいのか会うべきか。
──ニコル様…。
「入ってもいいか?」
考え込んでいたのでノックの音に気が付かなかった。迷ったレオンが扉のところから声をかける。
慌てて箱の蓋を閉めそっと隠すようにしまいレオンのところまで行く。
「気が付かず申し訳ありません。ご主人様どうぞ…」
「また戻ってる…」
「え?あっレオン様どうぞお入りください」
レオンが少し拗ねてるように入ってきた。クレアは照れている。
「母上に言われて反省した。本当にすまない」
「私は気にしておりません。ご主…レオン様」
「すぐのやり直しは無理なので少し待ってくれるか?」
「やり直し…するんですか本当に」
してもらったとクレアが言えばそれでいいと思うが、レオンが気にしてるのでもうお任せにすることにした。
「先程…見てた箱は?」
たいした物ではないと誤魔化そうかと思ったが、箱を取りに行きレオンの前で蓋を開ける。
「以前ニコル様からいただいた物です」
「…そうか」
そのまま沈黙の時間が少し流れたが、クレアが箱の蓋を閉めレオンにお願いする。
「ニコル様に会わせていただけますか?」
「クレアは…大丈夫か?」
「はい。レオン様が後ろにいてくださるのなら大丈夫です」
ニコルの名前が出て険しくなっていた表情が一気にほどける。
「任せてくれ…」
クレアの体調などを考慮して少し後にニコルと面会をする事にした。レオンはその手続きに王宮に戻る。部屋を出る前
「今欲しい物はないか?」
と聞かれたが特に思いつかずクレアが考え込んでいると、笑顔のレオンに抱きつかれ
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◇◆◇
届いた1通の手紙を開いた。中には公爵家への招待状と短い手紙が入っていた。
「はあ?何これ?」
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「聞いてないし、納得出来ないんだけど…お父様コソコソしてないで説明してもらえます?」
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「分かってますよね?お父様」
あまりの迫力に座り込んだマシューを上から氷のように冷たい目で見下ろして口元だけは笑ってるルイス。
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ルイスは一気に手紙を書き、旅支度をはじめた。
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