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最初に異変に気づいたのはジョンだった。
ゴミを捨て戻ってきたらクレアの姿がなかった。先に屋敷内に入ったかなとは思った。箒がそのままなのは少し違和感を感じたが、たまたまかもと中に入ると、交代する騎士2人が帰って行くのを見送り、調理場へ行く。クレアが行くとするならそこだと思ったからだ。
「ドナルドさんクレアさんは?」
「まだ来てないぞ。掃除終わったら手伝ってくれるか聞いてくれ」
ここにいると思っていたがいなかった。部屋に戻っているかもと屋根裏部屋まで行ってみたが居ない。おかしいと階段を急いで降りて執務室へ飛び込む。
「クレアさん、来てませんか?」
「来てないけど」
エドガーが答えるとジョンの顔が見る見る青くなる。
「どうした?」
レオンも様子のおかしいジョンを見てたずねる。
「クレアさんが…クレアさんが居ない!!」
「「 !! 」」
バタンと扉を開けレオンが飛び出し叫ぶ。
「クレアは何処だ!!」
ホールに待機してた騎士2人がその声に反応して屋敷中探すがやはりクレアは居なかった。レオンも自らの目で確認するがクレアの姿を確認できない。
「何故だ!!」
「さっきまで…」
拳を壁に打ち付ける。
「誰も何も見ていないのか!」
焦りから口調もキツくなる。
「レオン様落ち着いてください!傷口また開きます」
「俺の事はどうでもいい!!」
予想はついている。昼間こちらを見ていたニコル・リットン。本家が爵位返上すれば何も残らない。逆上して仕掛けて来るかもとは思っていたが、まさかこんなに早く…この油断が今をまねいたと分かっているから自分に苛立つ。
すぐにでも屋敷に乗り込みたいが、何も証拠がない状態では門前払いされるのが目に見えている。何か手掛かりを探さないと!
「とりあえず王宮に行き団長と話してくる。エドガー父に連絡だけしてくれ」
「かしこまりました」
レオンは護衛でいた2人を引き連れ急ぎ王宮に騎士団詰所に馬を走らせる。
「確定は出せないって事か?」
「残念ながら…」
腕を組み天井を見つめ唸る団長だったが顔を下げレオンを見て
「クレアさんがなんらか自分で出ていったとか」
「有り得ません!クレアが意味無く離れて行くなど!!」
「おお…そうか。いや一応確認な」
ちょっと肩をあげレオンの剣幕に驚くが、護衛として自分の団員がついていたのに起きた事件だ。顔を引き締め考えを巡らせる。
「爵位返上…その辺から突くか」
少し時間をくれと言われ1度屋敷に戻ることになった。
屋敷に戻ると父親からの早馬も来ていて、団長と連携を取り急ぎ対策を考えると、明日朝には連絡を入れるから動けるようにと書かれていた。
エドガーが声をかけようとするが、あまりにも悲痛な顔のレオンに何も言えなかった。
レオンは1人自室にこもり、押し寄せる不安と戦っていた。
目を閉じれば笑顔が浮かぶ。
手を見れば抱きしめた時の感覚が蘇る。
耳をすませば自分を呼ぶ声が…
それら全てが黒く塗りつぶされ消えてしまいそうなのを必死に守る。消えてしまった時、自分がその闇に耐えれる自信がない。想像するだけで全身が震える。
目の前からいなくなってはじめて気づく。
こんなにも愛しいと思う存在になっていたのかと。
遅すぎたがまだ間に合う。
なんとしてもクレアを取り戻す。
◇◆◇
「んっ…」
頭がボーとしながらも目を開けた。
──ここは?…
「目が覚めたかい?」
声を聞いて意識がはっきりとしてくる。身体を起こし声の主を見る
「ニコル様…ここはどこですか?」
ニコルはテーブルに置いてあった水差しからコップに水を入れクレアに差し出しながら
「私の家だよ」
「なぜ?ニコル様は私を巻き込まないと…」
「それは…すまない」
ニコルが辛そうに顔をしかめる。
ガチャと扉があきレスターが入ってくる。
「状況が変わったのだよ。お嬢さん」
ズカズカとクレアがいるベッドまで近づいて来て、笑い出す。
「本当にグレースそっくりだな。ああ俺の夢も叶う…」
「俺はグレースを娶るつもりだったのに、あの老いぼれが辺境地になど出すから…」
手を伸ばしクレアに触れようとするのでニコルが止める。
「父上おやめください!クレアさんはグレース様ではありません!!」
「さすがに今の俺ではな…もう少し若ければ」
ニタリと笑う顔が気持ち悪すぎてクレアは下がれるまで下がり距離をとる。あまりの嫌悪感に吐き気までおこる。
「父上!!」
「ではさっさとお前のものにせんか…簡単な事だろ」
コトンと小さな瓶を置く。何かは分からないが絶対に触ってはいけないものだと分かる。
「こんな物に頼らずとも力づくで、なんなら俺も手伝うが」
「父上!!それ以上は私が我慢出来ません!今すぐ出て行ってください!!」
レスターはまとわりつく様な目線でクレアを見た後出ていった。
「クレアさん…」
向きを変えベッドに近づこうとするがニコルに
「それ以上近づかないでください!!」
サイドテーブルに置いてあったペンをニコルの方に向けている。持ってる手はガタガタ震えている。
「お願いします。私は乱暴なことはしません。もちろん父にもさせません」
信じられないとニコルを睨むクレアに、扉についてる鍵をかけ、ベッドから少し離れたところに椅子をおき
「この距離なら大丈夫ですか?少し話を聞いてくれませんか?」
と少し寂しそうに聞く。
「そこから動きませんか?」
「はい」
「話だけなら…」
ふっと表情が緩みニコルは静かに話始める。
ゴミを捨て戻ってきたらクレアの姿がなかった。先に屋敷内に入ったかなとは思った。箒がそのままなのは少し違和感を感じたが、たまたまかもと中に入ると、交代する騎士2人が帰って行くのを見送り、調理場へ行く。クレアが行くとするならそこだと思ったからだ。
「ドナルドさんクレアさんは?」
「まだ来てないぞ。掃除終わったら手伝ってくれるか聞いてくれ」
ここにいると思っていたがいなかった。部屋に戻っているかもと屋根裏部屋まで行ってみたが居ない。おかしいと階段を急いで降りて執務室へ飛び込む。
「クレアさん、来てませんか?」
「来てないけど」
エドガーが答えるとジョンの顔が見る見る青くなる。
「どうした?」
レオンも様子のおかしいジョンを見てたずねる。
「クレアさんが…クレアさんが居ない!!」
「「 !! 」」
バタンと扉を開けレオンが飛び出し叫ぶ。
「クレアは何処だ!!」
ホールに待機してた騎士2人がその声に反応して屋敷中探すがやはりクレアは居なかった。レオンも自らの目で確認するがクレアの姿を確認できない。
「何故だ!!」
「さっきまで…」
拳を壁に打ち付ける。
「誰も何も見ていないのか!」
焦りから口調もキツくなる。
「レオン様落ち着いてください!傷口また開きます」
「俺の事はどうでもいい!!」
予想はついている。昼間こちらを見ていたニコル・リットン。本家が爵位返上すれば何も残らない。逆上して仕掛けて来るかもとは思っていたが、まさかこんなに早く…この油断が今をまねいたと分かっているから自分に苛立つ。
すぐにでも屋敷に乗り込みたいが、何も証拠がない状態では門前払いされるのが目に見えている。何か手掛かりを探さないと!
「とりあえず王宮に行き団長と話してくる。エドガー父に連絡だけしてくれ」
「かしこまりました」
レオンは護衛でいた2人を引き連れ急ぎ王宮に騎士団詰所に馬を走らせる。
「確定は出せないって事か?」
「残念ながら…」
腕を組み天井を見つめ唸る団長だったが顔を下げレオンを見て
「クレアさんがなんらか自分で出ていったとか」
「有り得ません!クレアが意味無く離れて行くなど!!」
「おお…そうか。いや一応確認な」
ちょっと肩をあげレオンの剣幕に驚くが、護衛として自分の団員がついていたのに起きた事件だ。顔を引き締め考えを巡らせる。
「爵位返上…その辺から突くか」
少し時間をくれと言われ1度屋敷に戻ることになった。
屋敷に戻ると父親からの早馬も来ていて、団長と連携を取り急ぎ対策を考えると、明日朝には連絡を入れるから動けるようにと書かれていた。
エドガーが声をかけようとするが、あまりにも悲痛な顔のレオンに何も言えなかった。
レオンは1人自室にこもり、押し寄せる不安と戦っていた。
目を閉じれば笑顔が浮かぶ。
手を見れば抱きしめた時の感覚が蘇る。
耳をすませば自分を呼ぶ声が…
それら全てが黒く塗りつぶされ消えてしまいそうなのを必死に守る。消えてしまった時、自分がその闇に耐えれる自信がない。想像するだけで全身が震える。
目の前からいなくなってはじめて気づく。
こんなにも愛しいと思う存在になっていたのかと。
遅すぎたがまだ間に合う。
なんとしてもクレアを取り戻す。
◇◆◇
「んっ…」
頭がボーとしながらも目を開けた。
──ここは?…
「目が覚めたかい?」
声を聞いて意識がはっきりとしてくる。身体を起こし声の主を見る
「ニコル様…ここはどこですか?」
ニコルはテーブルに置いてあった水差しからコップに水を入れクレアに差し出しながら
「私の家だよ」
「なぜ?ニコル様は私を巻き込まないと…」
「それは…すまない」
ニコルが辛そうに顔をしかめる。
ガチャと扉があきレスターが入ってくる。
「状況が変わったのだよ。お嬢さん」
ズカズカとクレアがいるベッドまで近づいて来て、笑い出す。
「本当にグレースそっくりだな。ああ俺の夢も叶う…」
「俺はグレースを娶るつもりだったのに、あの老いぼれが辺境地になど出すから…」
手を伸ばしクレアに触れようとするのでニコルが止める。
「父上おやめください!クレアさんはグレース様ではありません!!」
「さすがに今の俺ではな…もう少し若ければ」
ニタリと笑う顔が気持ち悪すぎてクレアは下がれるまで下がり距離をとる。あまりの嫌悪感に吐き気までおこる。
「父上!!」
「ではさっさとお前のものにせんか…簡単な事だろ」
コトンと小さな瓶を置く。何かは分からないが絶対に触ってはいけないものだと分かる。
「こんな物に頼らずとも力づくで、なんなら俺も手伝うが」
「父上!!それ以上は私が我慢出来ません!今すぐ出て行ってください!!」
レスターはまとわりつく様な目線でクレアを見た後出ていった。
「クレアさん…」
向きを変えベッドに近づこうとするがニコルに
「それ以上近づかないでください!!」
サイドテーブルに置いてあったペンをニコルの方に向けている。持ってる手はガタガタ震えている。
「お願いします。私は乱暴なことはしません。もちろん父にもさせません」
信じられないとニコルを睨むクレアに、扉についてる鍵をかけ、ベッドから少し離れたところに椅子をおき
「この距離なら大丈夫ですか?少し話を聞いてくれませんか?」
と少し寂しそうに聞く。
「そこから動きませんか?」
「はい」
「話だけなら…」
ふっと表情が緩みニコルは静かに話始める。
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