上 下
24 / 50

24

しおりを挟む
ふと目が覚めると、自分のベッドで寝ていた。
外は既に暗くなっており、部屋の中はかすかなあかりがあるだけだった

──私どうしたんだった?

リットン伯爵家から戻ってきてそれで…

「!!!」

昨日の事を思い出してまた倒れそうになる。アタフタしてるとベッドの脇で椅子に座って寝てる父親が見えた。
そっとベッドから降りて父親にブランケットをかける。

完全に起きてしまうには中途半端だったので、再度ベッドに入り寝ることにした。
と言っても思い出してはアタフタし落ち着かせてもまた思い出すを繰り返しあまり寝れなかった。



クシュンと父親のくしゃみで起きた。

「お父様大丈夫ですか?」

「起きたかい。おはよう~大丈夫だよ」

朝の仕事に行こうとして父親に止められる。

「クレア…ここで働いてて大丈夫かい?父としては、反対する!!」

「じゃあお父様が我が家の窮地を救えますか」

うっと胸を押さえマシューは黙る。

「でも…でも…」

さあ着替えますから出てくださいと父親を追い出して、でも普段通りにできるかちょっと不安になる。

──大丈夫、大丈夫よ…多分





「おはようございます。遅れてすみません」

「おっクレアおはよう」

ニヤニヤしてるドナルドを無視して野菜を刻む。ある程度食事の準備が終わった頃、エドガーがやってくる。 

「起きれたんですね。食堂に用意お願いしますね。あっレオン様とマシュー様、クレアさんも今日は食堂で」

「え!私もですか?」

「何か問題でも?」

エドガーもニヤニヤして去って行く。

「お前さんよりレオン様の方がやばいと思うぞ」

「もう…」


食堂に食事を運び待っているとレオンが入ってきた。クレアを見ると固まる。

「おはようございます。昨日は…」
「あっいや…」

2人とも黙ってしまうのでエドガーがゴホンと咳払いして席に座るようにすすめる。少し遅れてマシューが入ってきて微妙な空気の中、食事をはじめる。

黙って、しかしそれぞれが意識しながらの空気にクレアが耐えきれず

「ご主人様昨日はすみませんでした。多分、問題は解決したと思います」

「ああ、それはブランドン子爵から少し聞いてる」

「そんな話より君が昨日クレアに抱きついた方が問題だけど」
「お父様!!」

「き…昨日はご主人様もものすごく心配してくれて、ちゃんと帰ってこれたから、だから、安心しただけよ!!それ以外何もないから!!ですよねご主人様!!」

「え?あっああ、そう安心して…」

「もういいですけど…とりあえず今日公爵家に行って説明しようかと思ってます」

「では私も同行します」

とレオンが話を終わらせた。

食べた気もしなかったが、なんとか全て食べきりお茶まで飲み干す。
クレアは自分は行くつもりなかったので片付けなど通常の仕事に戻ろうとしたが、当事者が行かないのもおかしいと言われ、渋々同行することになる。

──この頃、私働いてないわ…この騒動終わったら倍働かないと!!





◇◆◇


リットン伯爵家からの手紙を見てレスターは怒りを抑えることができない。手紙を握りつぶし投げ捨てた。ニコルはその手紙を拾い中を見る。
アドルフからの手紙で、ヘンリーには爵位を継がせず時が来れば返上する旨が書かれていた。

「ヘンリーが継がないなら私に渡せばいいだろ!!」

「父上落ち着いてください」

「落ち着いてる場合ではないわ!あの老いぼれ何をかんがえている!!そんなに私が憎いか!!そちらがその気なら考えがある」

乱暴に扉を開け叫びながら父が出て行くのを眺めていた。もしクレアに危害が及んではまずいとニコルも動き出す。



◇◆◇


3人で公爵家にやってきてベアトリスに報告をする。

「そう、ではクレアが巻き込まれる事はないのね」

「そうですね。アドルフ様側にはもう必要ないですから」

「マシューあなたも人が悪いわ。元からその気なら言ってくれてもよかったのに」

「向こうの出方次第だったので…すみません」

ペコペコと頭を下げる父親を横目で見ながらクレアがベアトリスに謝る。

「本当にご心配かけてすみませんでした」

「いいのよあなたが無事なら。ねえレオン?」

「はい」

お茶を飲みながら4人でゆっくりして話ははずんでいたが、ベアトリスがパチンと合図を送るとメイドたちが並び、

「じゃあ着替えましょうかクレア」

え?と思ったがいつもの如く逆らえず、メイド達に引きずられ部屋から連れ出される。残った男2人に

「マシューはもう帰るのね。レオンは護衛がてら買い物に付き合いなさい」

「…分かりました」

にっこりと笑うベアトリスに誰も逆らうことができない。




「ふふっやはり似合うわ。そのドレス」

前に買ってもらった薄い黄色のドレスで飾り付けは少ないがレースなど細かいところに手間のかかってるドレスでクレアによく似合っていた。
髪型も綺麗に編み込みがはいりサイドはスッキリと顔が明るく見え、後ろに長く伸びた髪は少しウェーブが入り揺れていた。

照れながら入ってきたクレアを見て

「クレア~似合ってるよ。本来なら毎日こんなドレス着せてあげたいのに…ごめんね~」

と父親が情けない声で泣きそうなのでなだめてふと目線を感じてそちらを見るとレオンと目が合う。

「ご主人様?」

「…とても綺麗だ」

ドキッと心臓がなるのが分かり、せっかく抑えてた感情がまた沸騰しそうになる。真っ赤になりながら顔を下に向けそのまま下がる。

レオンもまた昨日のことを思い出し、顔を見られないように後ろを向いてしまう。
そんな様子を見てたマシューが

「やっぱり連れて帰ろうかな」
「あら、ダメよ。クレアは我が家に来てもらうから」
「え?」


「さあさあ、出かけるわよ」

ベアトリスの一声で皆外に出る。マシューには公爵家から馬車を出してもらい、その場でお別れだった。

「お父様お気をつけて。ルイスたちにもよろしくお伝えくださいね」

「クレア~残って本当に大丈夫?まだ間に合うよ一緒に帰る?」

「大丈夫ですから」

苦笑いしながら父親を馬車に乗せ見送った。
振り向くともう1台馬車が用意されててベアトリスは先に乗っている。レオンがガチガチになりながら手を出してくれ馬車までエスコートしてくれた。

「では行きましょう」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迅英の後悔ルート

いちみやりょう
BL
こちらの小説は「僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた」の迅英の後悔ルートです。 この話だけでは多分よく分からないと思います。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈ 学園イチの嫌われ者が総愛される話。 嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。

single tear drop

ななもりあや
BL
兄だと信じていたひとに裏切られた未知。 それから3年後。 たった一人で息子の一太を育てている未知は、ある日、ヤクザの卯月遥琉と出会う。 素敵な表紙絵は絵師の佐藤さとさ様に描いていただきました。 一度はチャレンジしたかったBL大賞に思いきって挑戦してみようと思います。 よろしくお願いします

丸ニカタバミですが、人間観察で日常をまわす

丸ニカタバミ
大衆娯楽
丸ニカタバミが日常で体験したことを書いていくエッセイです。 あと、知識は等身大でしか書かないので裏付けをとったりはあまりしないつもりです。 なので、そういう考え方もあるんだなぐらいのスタンスでお願いします

だいたいチーバくんのおかげでややこしくなった話

どっぐす
BL
非エロのBLです。 カップリングは進学校の秀才イケメン眼鏡と非進学校の野球部ピッチャー。 連作短編で、1話ずつ区切りのよい所で切れています。それぞれ読了時間は5〜10分ほどだと思います。 なお作者は男(おそらくヘテロ?)なので、男性が読んでも問題はない仕上がりだと思います。保証はしませんけど。 【登場人物】 ・総一郎 進学校に通う秀才イケメン。生徒会役員。 ソリッドショートの髪にスリム体型。眼鏡。 ・隼人 非進学校通う野球部ピッチャー。定期テストはほぼ毎回赤点。 短髪で、鍛えているので細マッチョ。(ゴリマッチョではない設定です) ※本ページの扉絵は、この作品を読んで下さったイラストレーターのキルリアル様(@super_killreal )よりご厚意で頂いたものです。 ※2019/11/12追記 エブリスタ様の公式コンテスト『真夜中のラジオ文芸部×執筆応援キャンペーン 「スパダリ/溺愛/ハートフルなBL」』にて、本作が佳作に入賞しました。

笑い方を忘れたわたしが笑えるようになるまで

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃に強制的に王城に連れてこられたわたしには指定の場所で水を汲めば、その水を飲んだ者の見た目を若返らせたり、傷を癒やすことができるという不思議な力を持っていた。 大事な人を失い、悲しみに暮れながらも、その人たちの分も生きるのだと日々を過ごしていた、そんなある日のこと。性悪な騎士団長の妹であり、公爵令嬢のベルベッタ様に不思議な力が使えるようになり、逆にわたしは力が使えなくなってしまった。 それを知った王子はわたしとの婚約を解消し、ベルベッタ様と婚約。そして、相手も了承しているといって、わたしにベルベッタ様の婚約者である、隣国の王子の元に行くように命令する。 隣国の王子と過ごしていく内に、また不思議な力が使えるようになったわたしとは逆にベルベッタ様の力が失われたと報告が入る。 そこから、わたしが笑い方を思い出すための日々が始まる―― ※独特の世界観であり設定はゆるめです。 最初は胸糞展開ですが形勢逆転していきます。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

処理中です...