上 下
5 / 50

5

しおりを挟む
エドガーが味より量だと言ったのは正しかった。身体の大きな騎士たちは食べる食べる飲む、そして食べる…

──想像よりもすごいわ

あいたお皿を片付けていると

「手伝います」

ジンが一緒に持とうとするので

「お客様にそんな事!大丈夫ですので」

「いいよ僕1番下だから」

とさっさと皿を片付けて先に調理場に行ってしまった。あーやっちゃったと思いながら急いであとを追いかける。

「ドナルドさん、今日の料理美味しかった。あれじゃがいもだったのかな?カリカリでって腕どうしたの?」

顔見知りなのか調理場にいるドナルドに話しかけていた。

「いやーちょっとな。俺がこんなだからほとんどクレアが作ってくれたんだよ」

「え?本当に?」

「はい、簡単なものですが…」

「すごいな~あれだけの量作るのは大変だったでしょ。可愛いのにすごいな~」

はい?今全く関係ない言葉が聞こえました?

「私また戻ります」

にっこり笑って足早にその場から逃げた。



食堂ではかなり出来上がった人達が帰るだの泊まるだのと話をしていてエドガーが慌てていた。

「クレアさん客室使える状態ですか?」

「今日10部屋最低限の掃除はしましたが…」

「それで結構です」

何人かは自宅が近く帰って行ったが、酔いつぶれた人など6人が泊まることになった。エドガーとジョン、何も問題ないジンが手分けして2階まで運ぶ。
クレアは客室に水さしとコップを一部屋ずつ持っていく。最後の人を部屋に押し込んで一息つくと

「僕こちらに泊まりますね。また明日クレアさん」

とジンが手を振りながら部屋に入っていった。
からかうのもやめて欲しいなと階段を降りると
使用人の前にご主人様がいる。

「今日はすまない。よくやってくれた」

やって当然ではなくよくやったと言ってくれる!大変だったけどこの一言で報われる。
ふと目が合ったクレアが頭を下げると

「来たすぐですまなかった」

「いえ、大丈夫です」

そうかと頷きご主人様は自室に戻って行った。

エドガーが後ひと踏ん張りです。片付けましょうと声をかけ、手分けして片付ける。
ドナルドと朝をどうするか相談してそれぞれが自室に戻り休んだ。




◇◆◇

朝もいつも以上の量ではあったが、パンがあるので昨日に比べたら楽な作業だ。スープをより分けて食堂に運ぼうとすると

「おはようございます~クレアさんおはよう。これ運べばいいかな?」

「おはようございます。本当にお客様に申し訳ないので食堂でお待ちください」

「えーこれくらい…」

「お願いいたします。食堂で!!」

何度も運んでもらう訳にはいかないと今回は強めにお願いした。


朝はテーブルに用意して席に着いて食べてもらう。お酒が残ってるのか昨日ほどびっくりする量ではなかったが用意した料理はほぼ無くなった。

それぞれが用意をし、仕事場に戻っていく。エドガーとクレアとでお見送りをしていると
最後のジンが

「ありがとう。次は僕と出かけませんか?」

とクレアの手を取ろうとした。

「ジン、早く出ろ」

上からレオンが声をかける。出してた手を引っ込めて

「はいはい。クレアさん本気で誘いに来ますね」
 
どう返事しようかと思っていると、階段を降りきったレオンが目の前にいる。

「いってくる」

「「 行ってらっしゃいませ」」


バタンと扉がしまった後

「あー疲れた。今日はちょっとゆっくりしてもいいですよ」

肩に手をおき、首をコキコキと曲げてエドガーは執務室に戻っていく。
ゆっくりと言っても朝の片付けは残ってたし、朝から動いてるノラと一緒に洗濯する。

「昨日は手伝ってくれてありがとうございました」

「いいよ~クレアも大変だったでしょ。そうそうあの昨日来てた人たち、貴族の息子さんとかばっかりよ。目をかけてもらえたらいい思いできるかもよ」

「ジンさんって…」

「ああ、クーパー男爵のご子息ね。若いけど剣の使い手だそうよ。何?気になるの?」

「いえ、手伝っていただいたので…」

笑ってごまかす。まだ追求されそうなので別の話に切り返す

「あっ弟に手紙を書きたいんですけど、手紙出すのは…」

「ああ、まとめて取りに来てくれるからエドガーに渡せば大丈夫よ」

洗濯は終わらせて、昨日使った客室を掃除してたらお昼準備する時間で…

──ゆっくりできないわね

昼食は昨日疲れたねの話で盛り上がった。

「クレア、ジンには気をつけろよ!あいつ気に入った娘いたらすぐ誘うから」

「二股とかはしてないみたいですが、誰彼構わず声かけますね。次の休み来ますよ絶対」

なんて2人が言うもんだからノラの喋りが止まらなかった。誰でもいいとか言うのはダメよ!やっぱり1人を大事にしなきゃねと言う意見には大賛成だ。

全て片付けると少し時間が空いたので、弟のルイスに手紙を書く。




──ルイス元気ですか?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

なりゆきで、君の体を調教中

星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

処理中です...