花火

天野 帝釈

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味付け

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先程、作ったばかりの朝食だが、温かいうちに食べてもらいたかったと少しばかり溜息が出そうになる。

聞かれてしまえば無礼になるので黙ってはいたが残念な気持ちが大きい。

まだまだ食事の準備等不慣れで時間がかかるに違いないから、
家に戻ったら昼食の下拵えをしてしまった方が良いだろう。

今度から朝食を作る時はある程度下拵えをしてから、
完成する前に相楽を呼びに行こうと一人心に決めた。

朝餉を出すと相楽は、腹が減っていたらしく、
昨日よりも箸の進みが速い気がする。

もしかして、婆様の教えてくれた味付けが、
相楽の舌に合ったのかもしれないとおミツは嬉しくなった。

おミツは心の中で婆様に感謝をすると、昼餉の支度にとりかかり始めた。

相楽は食事を済ますと、暫くの間瞑想をするらしい。

襖の奥へと入った後、座禅を組んでいる影が見えた。

自分に厳しい方なのだろう。

少しくらい休めばよいのに武者というのも大変な稼業だ。

ここまで己を鍛えぬと戦場では使い者にならぬのかもしれない。

相楽の体を心配しながらもおミツは次の家事を黙々とこなしていった。
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