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犬と人間

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「お兄ちゃん、耳でた。」

「んー?あ、本当だ可愛いね。」

ポチは俺が前回驚かないことが嬉しかったのか、今回は普通に報告してくれた。ふわふわの髪の毛を撫でると嬉しそうに微笑む。

「お兄ちゃん、また…ぼくがおかしくなっちゃったら……怒らせたら、叩いてもいいよ。」

「叩かないよ。大丈夫。」

「犬には躾が必要だから。ね?お兄ちゃん。」

ポチはにっこりと笑った。が、目は笑っていない。怖い。
ポチに恐怖を感じるなんて、おかしいじゃないか。俺はポチの家族なのに。

「ぼくは全部お兄ちゃんにあげる。だからね、お兄ちゃん、ぼくをお兄ちゃん好みの犬にして。」

「え…?」

俺好みの犬?ポチは何がしたいんだ。もしかして、前のポチの住んでいたところから環境が急に変わったせいで、心がついていけてないのではないか。

「ぼくはどうあがいたって犬だから…この耳見たらわかるでしょ。大好きなお兄ちゃんに飼われるなら、ぼくは幸せ。」

飼う?そんな環境、この子に与えていいはずがない。

「ポチ。」

「んぅ?」

ポチの肩を掴む。ポチは俺の怒った顔に戸惑っているようだ。

「俺はポチを飼おうとなんか思ってない。俺はポチと家族になりたいんだよ。これは…分かってくれる?」

「…うん。」

「それとね、ポチは犬じゃない。見た目はそうかもしれないけど、俺の家族だ。ペットじゃないんだよ。ポチが望むなら、その耳を無くす方法だって考える。俺はポチが将来、ちゃんと人並みに幸せを掴めるようにサポートしたいんだ。」

「ぼくの、将来…?」

最初は犬みたいで可愛いと思ったが、犬になって欲しいとは思っていない。

「ぼくは…お兄ちゃんと暮らせたらそれでいいかなぁ…」

「俺?…まぁ…そっか。うん。」

ポチはまだここに来て少ししか経っていない。だから将来の話をしても視野が狭い状態でしか見られないだろう。ポチにはもっと広い世界を見せてあげたい。

「お兄ちゃん、さっきは…ごめんなさい。お兄ちゃんにとって、ぼくは犬じゃないんだね。」

「うん。…分かってくれたなら良かった。」

「…でね、一個だけ教えてほしいことあるの…」

「…?どんなこと?難しい事じゃなければ多分教えられると思う…けど。」

ポチが下を向く。もじもじして、言葉を選んでいるようだ。

「ぼく、お姫様が王子様と結婚する絵本、読んだの。」

「うん。」

「それでね、ぼく…お姫様を守れる王子様、かっこいいって思った。」

絵本の話?それでもポチは緊張しているようで、時々口ごもる。

「だから…ね、ぼく、おっきくなったらお兄ちゃんを守れる子になりたい…それでね、お兄ちゃんと結婚したい…それが将来の夢。
どうしたら叶う?」

「う……」

子供が親によく言う事だ。いつかは忘れる。
だけど、ポチはすごく真面目な顔だ。適当に返したらだめな気がする。俺はどう答えれば…

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