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91、詐欺師のパワー

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「ご飯が美味しい!」

 祠に戻って食事中。

「‥‥‥そう」

 テーブルを挟んで、俺の対面に座るアリスさん。
 
「あのデブは帰って来ないの?」

 アリスさんの横に座るイレイザ。
 トシゾウは、もうそんなに太ってないのだが‥‥‥。

「‥‥‥トシゾウさんは家に帰った」

「へえ~」

 自分で聞いてきたくせに、興味有るのか無いのか、よく分からない返事をするイレイザ。

「アリスさん、その‥‥‥トシゾウさんになんて言ったか、聞いてもいいですか?」

「‥‥‥あんたに前に言われたでしょ? 私は自分の気持ちを正直に、ちゃんと話しただけだからね」

 俺の顔をポケーっとした顔で見ていたアリスさん。
 食事中はノーマスクです。

「‥‥‥で、どういった内容の話を?」

「それは言えないね」

「そうですか」

 何故トシゾウが俺に決闘を申し込んできたかは、謎のままになりそうだな‥‥‥。

「ごめん、今日はちょっと疲れたから、私は先に休ませてもらってもいいかな?」

 アリスさんはそう言うと、席を立った。

「どうぞ。色々聞いてすいません」

「イレイザ、食事の片付け頼んでもいい?」

「了解よ~」

 イレイザが手を振って返事をすると、アリスさんは奥の部屋に戻っていった。



「‥‥‥告白は、する方もされる方も疲れるんだな」

「ダーリンってお子ちゃまよね~」

 ニヤニヤしてるイレイザ。

「失敬だな」

「何も分かってないから、アリスさんも大変よねぇ」

「じゃあイレイザはトシゾウさんの告白が、成功か失敗かわかるの?」

「ダーリン、あいつの告白が成功するわけないでしょ。それすらも分かんないなら、ダーリンはお子ちゃま以下確定ね」

「‥‥‥うるさいな。でも、わかんないぞ、トシゾウさん物凄く頑張ってたんだから」

「いや、わかるでしょ」

「‥‥‥そうなの?」

「実は私、アリスさんに内容を軽く聞いてるのよね」

 ニヤニヤピンピンのイレイザ。

「え? 俺には内緒なのに?!」

「アリスさんのオーラが弱ってたから、つけこんじゃった」

 なんという詐欺師。

「で、アリスさんはトシゾウさんになんて言ったの?」

「『ごめんなさい』って言ったんだって」

「‥‥‥ほう」

 そうか、トシゾウはフラれてたのか‥‥‥。
 しかしだ、それだけで俺に決闘を申し込んでくるだろうか?

「あとね、好きな人がいるって言ったらしいよ」

「‥‥‥ほう」

「ダーリン、誰か聞きたい?」

「‥‥‥いや、やめとく」

「聞きたいくせに」

 イレイザの尻尾はフリフリピンピンだ。

「‥‥‥じゃあ、少しだけヒントを」

「ヒントなんている?! 誰がどう見ても、ダーリンのことでしょ」

 ──なるほど、それで俺と決闘するのか!

「今日のダーリンは面白い! オーラがコロコロと変わる!」

 いつのまにか隣に座り、俺の胸の辺りをスリスリ触っているイレイザ。

「‥‥‥イレイザ、あんまりオーラ見ないでくれる?」

「勝手に見えるんだもん」

 なんか話しづらいな‥‥‥オーラの話なんて聞かなきゃ良かった。

「因みに今は、いつもの自信に満ち溢れたオーラに戻ってる」

 ニヤニヤとイレイザ。

「‥‥‥もう、言わなくて結構です」

「どのタイミングで戻ったか、教えてあげようか?」

「言わなくていい! 聞きたくない!」

「ダーリン可愛い」

 ニヤニヤとしながら触ってくるイレイザの手を払いのけ、俺は席を立った。

「明日は朝早くに、ここから帰るんだ、イレイザも早く寝なさい!」
 
「あ、ダーリンが逃げた!」

 うるさいな。


 ──多少の自覚はあるんだよ。
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